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村上虹郎が語る、制服へのロマンと音楽愛 『二度めの夏、二度と会えない君』インタビュー

2017年09月01日 16:02  リアルサウンド

リアルサウンド

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 赤城大空による同名人気ライトノベルを、『青い鳥』『花のあと』の中西健二監督が村上虹郎主演で実写化した映画『二度めの夏、二度と会えない君』が現在公開中だ。本作は、高校生の篠原智が、二度と会えないと思っていた想いを寄せる相手・森山燐と二度めの夏を過ごす模様を描く青春ラブストーリー。


参考:村上虹郎がギターを弾く姿も 『二度めの夏、二度と会えない君』特報映像


 リアルサウンド映画部では、半年前にタイムリープする高校生・篠原智役の村上虹郎にインタビュー。共演者とのエピソードや、制服を着て高校生役を演じることについて、自身にとって音楽とは一体どういうものなのかなど、じっくりと語ってもらった。


■「僕たちは音楽でしか繋がることができなかった」


――劇中でギター演奏を披露していましたが、実際に村上さんが弾いているんですか?


村上虹郎(以下、村上):弾いています。


――いつ頃から練習を?


村上:あまり覚えてないのですが、その時『武曲 MUKOKU』という剣道の映画を撮影していて、その撮影と同時進行でギターの練習をしていたんです。でも、やまちゃん(山田裕貴)は、主演舞台の稽古かつボクシングをやりながらベースを練習していたんだそうで。それを聞いて、僕より何倍もすごいなと(笑)。なおかつ、やまちゃんと金城(茉奈)さんは、ベースとドラムに触ること自体が初めてだったそうで、3か月くらい前から練習してたらしいんです。僕は、一応アコギ(アコースティックギター)は中学生ぐらいからやっていたので。でも、エレキ(ギター)自体はあまり弾いたことがなかったので、バンドとして弾くのは新鮮でした。


――同世代の方が多い現場ですが、だからこそ刺激を受けたことはありますか?


村上:刺激と言いますか……、僕以外のみんなは、俳優活動だけでなく、ほかのお仕事もされている方たちだったので。やまちゃんは俳優集団D-BOYS、金城さんはファッションモデル、吉田(円佳)さんはガールズバンドたんこぶちん、加藤(玲奈)さんはアイドルグループAKB48に所属していて、肩書きがないの僕だけだっていう(笑)。そんなメンバーの共通言語は劇中で演奏する音楽でした。


ーー共演者との会話のほとんどが音楽だったのでしょうか。


村上:音楽について語り合うというよりかは、僕が勝手にギターを弾いて、それにみんなが合わせ始めるという感じでした。僕たちは音楽でしか繋がることができなかったので、やまちゃんが必死にそれを繋ぎ合わせようとしてくれていました。


――現場では山田さんがムードメーカーだった、と?


村上:現場だけでなく、やまちゃんは普段からムードメーカーです。僕もうるさい方ですが、僕よりも遥かにおしゃべり。本人が言ってましたが、「俺は10回中、9回スベって1発当たるぐらい」って。僕はスベってるやまちゃんの方が好きなので、そのくらいの割合がちょうどいい(笑)。スベってるなーって、よく笑っていました。


――TVアニメ化もされている人気ライトノベルを実写化した青春映画ですが、原作ものに対するプレッシャーはありましたか?


村上:あまりなかったです。アニメ原作といえば、『あの花(あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。)』でもやらせていただいて。原作ものの実写化に対しては、気持ちが吹っ切れています。


■「高校に行ってない分、本当に学校に通っているような感覚」


――では、原作は読みましたか?


村上:今回は読んでいないです。脚本に目を通した時に、原作のイメージとあまり差がないと感じたので。原作を読み込んでしまうと、逆に小説の中から生まれるイメージと脚本で描かれている世界観が混ざってしまうかなと思って、今回はアニメも見ていません。


ーー原作を読んでいないとのことですが、どうやって役作りを? 村上さんが演じた智は、とても心の動きが繊細な少年という印象ですが。


村上:僕自身が繊細だから、お芝居も繊細になったんだと思います(笑)。役作りと言いますか、今回の役で最も意識した部分は、ナレーションです。今までにもモノローグのお芝居をすることはあったのですが、ここまでガッツリな作品は初めてだったので、どうすればいいんだろう? と戸惑いました。先にモノローグをガイドで撮っておいて、その尺分の映像を現場で撮っていました。試行錯誤しながらお芝居するのは面白かったです。


――では、村上さんが印象に残っているシーンは?


村上:燐と二人で初めてライブをするシーンで、サングラスをかけた智がコケるところです。あとは、最後の文化祭でのライブシーン。ほかは何があったかな? 智が苦悶の表情を浮かべているシーンとか。彼は、後悔をどうなくすかで常に悩んでいるので、基本表情が曇っているんです。スッキリしているという意味で、いい顔をしている時って、演奏しているシーンと、最後の「バンド、やろうぜ」ってみんなを改めて誘うシーンだけなので。


――特に智の表情が輝いている最後のライブシーンは、物語の要となっている部分です。演じていて何を感じましたか?


村上:すごく興奮しました。学生として弾いているので、ミュージシャンになった気分というわけではないのですが。制服なので、どうしてもミュージシャンの様にはきまらない。ミュージシャン役でやる場合と学生役でやるのは、一緒のことをやっていても何となく感覚が違うと思うんです。


――そんな文化祭でのライブの時を迎えるまでにも、二度めの夏で、燐の智に対する心境が変化したのは、どうしてだと思いますか?


村上:変わったというよりかは、一回目も燐は智のことが好きだったんだと思うんです。それなのにすれ違う。二人とも不器用すぎて(笑)。でも、燐の態度が変わったのは、やっぱり智が必死に変えようと思って行動したから。一度めの夏も智は必死に生きていたんだろうけど、二度めはこれから何が起こるかすべて知っているという智だけの特権がある。たとえ未来がわかっていても、人の心を動かしたり保ったりするのは、難しいことに変わりないのですが。なおかつ智は、燐が結局死んでしまうことも、それをどうやっても変えられないこともわかっている。じゃあ、どうすればいいの? という厳しい状況の中でも、決してあきらめなかったんです。だからこそ、結果的に智も燐も最後は報われたのかな、と僕は思います。


――なるほど。では、村上さん自身が何か後悔していることはありますか?


村上:ないです。失敗はたくさんありますが、日々後悔はしないように過ごしています。だから、もし智みたいにタイムリープができるんだったら、恐竜がいた頃の世界まで戻りたいです。そこで、僕はセグウェイに乗って、恐竜を観察したり、写真を撮ったりしたいです。もし時が戻せるのであれば、そのくらい昔に戻った方が面白くないですか(笑)?


――確かにそうですね(笑)。では、村上さんは高校時代に、なにか印象に残っているエピソードはありますか?


村上:僕、日本の高校に通って制服を着たことがなかったんです。というより、日本の高校には通ったことがないんです。高校は、1年間だけカナダに留学していたのですが、途中で辞めてしまって。だから、現実で制服を着たことがないのに、よくこんなに制服の役を演じているなと、たまに思うんです(笑)。日本の高校に行くような人生も歩んでみたかったなと、思うこともありますが、決して後悔はしてないです。そう考えると、タイムリープして、一回高校に行くのもありかな、と。でも、受験が面倒くさいな(笑)。


――日本の高校に通ってなかったからこそ、演じていて何か思うことはありましたか?


村上:こういう役を演じている時は、高校に行ってない分、本当に学校に通っているような感覚になるんです。制服を着るのって楽しいなとワクワクします。小中高一貫の学校に中学生の途中まで通っていたのですが、私服の学校だったので、やはり制服は着る機会がなくて。だから余計に、制服にロマンを感じます(笑)。普段、みんながここまで全く同じ正装をすることはないじゃないですか。だからこそ、制服は特別感があります。


■「音楽は、今の僕にはなくてはならない存在」


――本作は、音楽を通して人の心が変化していくというお話ですが、最後に村上さんにとって音楽とは何かを教えてください。


村上:難しい質問ですね……。音楽は、今の僕にはなくてはならない存在です。もし、なくなってしまったら、すごく困ります。すでに生活の一部になっていますし、映画にも欠かせないもの。音楽はすごいですよね、人を動かす。それに、何でも音楽になると思うんです。もちろん、コードや和音、スケール(音階)などの決まりはありますが、たとえば、ノイズ系の音楽をやっている人たちだったら、換気扇や空気清浄の音を音楽の一部として使用することもある。会話だって音だからある意味では音楽なんです。もっと言うと、映画だって音楽です。監督のセンスもそうですが、俳優の声だって映画の中では重要です。そういう意味では極端に言うと、すべて音楽に直結している。僕は日常に音楽がありふれた環境で育ったので、幼い頃から家にはたくさん楽器もあるし、おもちゃと同じような感覚で、音楽と一緒に育ってきました。だから、音楽とは何かってすべて言葉にして答えられないほど、僕にとっては大切な存在です。


(取材・文=戸塚安友奈)