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日俳連チャリティーイベント 島田敏×高山みなみインタビュー 参加者全員で“感”じて“伝”える復興支援

2017年08月31日 18:23  アニメ!アニメ!

アニメ!アニメ!

日俳連チャリティーイベント 島田敏×高山みなみインタビュー 参加者全員で“感”じて“伝”える復興支援
毎年恒例になりつつある日本俳優連合主催のチャリティーイベントが、今年は10月15日に開催される。イベントには多数の声優・俳優が参加し、来場者はアーティストたちと会話や触れ合いを楽しめる。バザーや物産品の売場でアーティスト自ら品物を売り、会場には常に聞き覚えのある声が飛び交うという不思議な空間だ。
開催に向けて、今年は既に田中真弓、山口勝平を始めとした声優の参加が決定しており、公式サイトではチャリティーオークションなどの展開も始まっている。

2011年の東日本大震災をきっかけに始まった日俳連チャリティーイベントは、今年で6回目。イベント会社などを介さず、日俳連に所属するアーティストたちで作り上げてきた。その活動内容は想像を優に超え、運営だけでなく、物産品の仕入れや現地への訪問・打ち合わせ、ご当地ヒーローのオファー業務にまで至る。これをレギュラー番組を多々抱えている人気声優たちが行っているというから驚きだ。
手間をいとわず、アーティストたちが手作りのイベントにこだわるのにはどんな理由あるのだろう。実行委員長団のメンバーである、島田敏と高山みなみにお話を伺った。そこには復興支援にかける強い思いと、アーティストならではの「楽しんでほしい」という発想があるのだと知った。
[取材・構成=奥村ひとみ]

「日本俳優連合チャリティーイベント2017 東日本大震災・熊本地震 復興支援」
http://nippairen-charity.com

■手探りで始まったイベント作り

――最初に、日俳連チャリティーイベントが始まった経緯を教えてください。

島田
2011年3月11日に、東日本大震災が発生しました。当時、僕は日俳連の事業委員長をやっていまして、日俳連で何かできることはないだろうかという話になったんですね。そこでその年は役者の皆さんに寄付金を募って、日本赤十字社へお送りすることにしたんです。

――最初はイベントの形ではなかったんですね。募金はどうやって集められたのですか?

島田
担当者が仕事先のスタジオに募金箱を持っていって、皆さんから寄付金をお預かりしました。とはいえ、レギュラーの番組はメンバーはだいたい決まっています。なので、毎回同じ方からもらうのではなく、別のレギュラー番組を持っている人に募金箱を託すんです。こうしてスタジオからスタジオへ、募金のリレーを繋いでいきました。

高山
同じスタジオに募金箱が4つくらい集まっちゃう、なんてこともありましたね(笑)。ベテランの先輩方は、「こっちの募金箱だけに入れるのは申し訳ないから……」とおっしゃって全部に寄付してくださったり。

島田
1年目はその形でつつがなくやらせていただいたのですが、やってみて分かることが様々にありました。たとえば日赤という組織は、被害額がきちんと確定してから、それまでに集まった寄付金を分配するやり方を取っているんです。もちろん、いろいろな効率を図った上での手順なのでしょうが、額が確定するまでには何年も時間がかかってしまう。1年目を終えて僕たちが思ったのは、自分たちの身の丈に合う、目に見える形で復興を手伝いたいということでした。そんな思いから、翌年の2012年に第1回チャリティーイベントがスタートしたんです。

――そうだったんですね。2012年開催の1回目はどんな様子でしたか? 一番に思い出すことは何でしょう?

島田
本当に手探りで始めましたからね。当日のスタッフ(俳優・声優)のお弁当に対する考え方もバラバラでした。「チャリティーイベントをやりましょう」という総論は皆が賛成一致なんですが、細々とした各論になるとベクトルが違ってくる。いろんな人に頭を下げながら、「これはこの先、大変だぞ……」と思ったものです(笑)。

高山
最初の頃は、参加してくださる方にスタンスを共有してもらうのも難しかったんですよね。私たちはキャラクターの影にいるのが仕事ですが、それでもやっぱり役者という日の当たる存在でもあります。初めはスタッフに徹するという姿勢そのものに、戸惑いを覚える方もいらっしゃったんです。でも回数を重ねていくうちに、皆さん「こういうことなんだな」と分かってくださるようになってきて。参加者も毎年、増え続けていて嬉しいですね。それにこのイベントをやっていると、アニメなどの作品に付随したイベントに出演する時、裏方さんがどれだけ大変な思いをしてくれているか分かるようになるんですよ。そういう意味でも、私たちのいい意識改革になっているんじゃないかなと感じています。

島田
企画会社やイベンターの方にお任せしたら段取りよくやってくださるんでしょうが、このイベントは「自分たちで作ろう」と始めました。初めてのことばかりで、後になってみれば無駄だったねということの連続ですけど、なんとか継続してきて今回の6回目を迎えられます。

――自主的なイベントだからこそ、続けていくモチベーションをキープするのは大変なことだと思います。島田さんを奮い立たせているものは何ですか?

島田
実は1回目のイベントが終わった時、僕は2回目は無理だと思ったんですよ。打ち上げの二次会で心を固くして「来年はナシ! やらない!」と言ったら、高山さんに「何が一番大変ですか?」と聞かれたんです。僕が「応募ハガキの整理だ!」と答えると、「じゃあ私がハガキやります!」と。「えーっ!?」と思いましけど、そう言われてしまうと僕のほうがやめられなくなっちゃって(笑)。それがターニングポイントと言いますか、高山さんのあの一言がなかったら2回目以降はなかったでしょうね。

高山
ハガキの整理は一番大変ですよね。できるだけたくさんの人に参加してもらえるように、皆さんからのハガキは私が手作業で仕分けています。最初は仕分ける項目が3つくらいだったんですが、それが5つになり8つなり、年々細分化されて、項目番号が20を超えた時はさすがに私も混乱せざるを得ませんでした(笑)。お名前や住所を確認しながら一枚一枚、「近所のお友達の住所を借りてるんじゃないか?」と筆跡まで見ていますよ。もうすっかり仕分けスペシャリストです!

――イベントの応募ハガキが高山さんの手によって仕分けられていると知ると、俄然、送ってみたくなります(笑)。

島田
会場に行けないけど寄付はしたいという方向けに作った「ハガキで応援隊!」というのもあって、これは高山さんのご提案でしたよね。チャリティーイベントへの参加はすべて往復ハガキで受け付けているのですが、落選した方にはお返事を出さずに、その返信用ハガキを寄付金に換えさせていただいています。また当選狙いでなくても「ハガキで応援隊!」でご応募いただければ、寄付に参加ができる体制も用意しています。イベントに落選した人も、会場に来られない人も、気持ちは必ず繋がっていますので、是非たくさんの方に、まずはハガキでご参加いただけると嬉しいですね。

高山
必ず全部に目を通すので、すべてのハガキに私の指紋がついてますよ(笑)。ハガキの端っこに「整理、頑張ってください!」と応援コメントを書いてくれる方もいらっしゃって、すごく励みになります。毎年、頑張っています!

■今年のタイトルは「感伝しよう」

――今年のチャリティーイベントの内容について教えてください。物産品の販売や、参加者の皆さんから品物を集めたバザー、ステージイベントなど盛りだくさんですが、高山さんは今年も≪ギャラリーカフェ お・も・て・にゃ・し≫の担当ですよね。

高山
そうです。1回目の反省点で「お客さんの休める場所があればいいな」と思ったので、2回目からカフェを始めました。いろいろと改善を重ねる中で今はテイクアウトの形になっていますが、毎年とても繁盛してありがたいですね。豆は鳥取の澤井珈琲から取り寄せています。澤井珈琲さんは『名探偵コナン』のパッケージでドリップパックを販売していて、見つけた時に「これいいなぁ」と思って。仕入れてイベントで販売できないものかと、小学館集英社プロダクション(以下、小集プロ)に相談をしてみたんですよ。

――仕入れから高山さんがやっていらっしゃるんですか! 小集プロ側も、声優さんから仕入れの相談をされるとは驚かれたでしょうね。

高山
お願いしてばかりですよ(笑)。小集プロさんには他にもご協力いただいており、廃棄処分になるアニメグッズをご提供いただきました。倉庫整理の際にグッズのサンプルが廃棄されると聞いて、私が「ちょっと待った!」をかけたんです。これを売っちゃうと大問題なんですけど、販売品におまけとして添付する分には、「もともとは捨てるものですからいいですよ。有効活用してください」と言っていただけたんですね。何が入っているのかは明かさずに、プレゼントが付いているという“引き”を作ってみたんです。それで商品を買ってもらえたらありがたいですし、お客さんにも楽んでもらえる要素が増えます。去年は相当いろんなものが入っていたので、「買った品物よりスゴイおまけが入ってる!」なんてお声もありました(笑)。

――お話を聞いていると、役者の皆さんの自由な発想でイベントが作られているんだなぁと感じます。

島田
世代を超えたメンバーが集まって、様々なアイデアを出してくれます。皆いろんな経験や技能を持っているので面白いです。

高山
皆がアンテナを張り巡らせていますよね。石巻市のヒーロー「シージェッター海斗」は、石ノ森萬画館さんに行った際、特別上映を見て「かっこいい!」と思いまして、イベントでヒーローショーをお願いできないかと相談しました。それから石ノ森萬画館さんとも仲良くさせていただいて、チャリティーイベントでは萬画館さんのショップも展開してもらっています。ぬいぐるみの「おのくん」は、実行委員メンバーの日比愛子さんが見つけてきてくれました。ご縁が続き、今年の5月には「おのくん」の誕生日「めんどくしぇ祭」で、絵本の朗読をさせていただきました。

――去年から始まった、参加者のアーティストにサインをおねだりできる「サインハント」も、とても斬新な企画ですよね。

高山
応募ハガキの反応で「そんなに食いつきはないだろう」とタカをくくっていたんですけど、蓋を開けてみれば大盛況でした(笑)。去年よりも皆さんが動きやすく運営できるように準備を進めています。前回はハントに必要なホルダーを手に入れるだけで大混乱になってしまったので、アンケートの結果も受け、今年はあらかじめ入場者特典にホルダーを入れることにしました。なので、安心してハントを始めていただけます。しかもサインハントには参加されない方にも、ホルダーの中に4名のサイン入りカードが入っているので、記念になると思います。私も欲しくなっちゃうスゴイ人にサインしていただいていますよ!
今回、入場料が2千円にアップした分は、そういうところで還元していきます。

島田
もちろんこれはチャリティーイベントですから、サインハントはあくまでお客さんに楽しんでいただく一端です。サインハントをしながらバザーや物産品売場に立ち寄ってもらえるよう、会場が混乱しないように頑張りますので、イベント全体を楽しんでもらえたらと思っています。

――アイデアに始まり、運営や雑務に至るまで皆さん自らの手で行っていることがよく分かります。“手作り”のイベントにこだわる理由を伺えますか?

高山
手作りのものって、すごく伝わるんですよね。皆の思いをこの場所で分かち合い、それがまた次回に繋がっていく。こういう空気は、手作りじゃないとできないものだと思います。それに、イベント会社さんがチャリティーイベントを企画したとしても、200人超の役者に出演してもらうのはなかなか難しいことでしょう。役者が手作りでやるからこそできるイベントですし、オファーを受けて出演するのではなく自発的に集まった仲間ならではの熱が生まれるんです。

島田
オファーを受けて出演するイベントでは、どうしても扱いとしてはゲストになってしまいます。自分たちでアイデアを出して汗をかいて動くのは、このイベント以外ではできない経験です。自分で見て感じているから、参加者の輪が連鎖し広がり、お客さんにも伝わるものがあるんだと思っています。

――“手作り”はイベントを作っている皆さんのスローガンでもあるんですね。

高山
その通りです。そしてこの気持ちは、来場される方にも是非共有していただきたいです。私たちと会話をしながらお買い物をすると、それがすべて寄付金になるんだということを楽しんでほしいんです。ただ募金箱にお金を入れるだけではない、自分で感じて、いろんなものを見て楽しみながらチャリティーに貢献できるということを体感していただきたいんですね。それから、お家に帰ったらこのことを誰かに伝えてほしい。それで今年のタイトルは「感伝しよう」にしました。参加してくださる皆さんに「楽しくて復興支援ができるイベントがあるんだ!」と感じていただきたいですね。

島田
震災から月日が経ち、事実としてチャリティーに対する関心はだんだん薄まってきています。イベントにご協力くださる岩手県の方々にお話を聞くと、“とにかく来てほしい”ということと、“忘れないでほしい”の二つなんだそうです。今年もパネル展示などで現地の状況をお伝えしたいと考えています。過去と今を、たくさんの人に知ってもらう手助けをしていきたいです。

■どうか震災を忘れないで

――6回目を迎える日俳連チャリティーイベント。年数を経て思うことや、困難に感じることはありますか?

島田
このイベントで東北のいろいろなお話を聞くことがありますが、被災者同士に“ねじれ”のようなものが発生している状況を知ります。たとえば、東京にいらっしゃる被災者の方をイベントにご招待したいと考えた時、新宿区に避難をしてきて既に新宿区民になったという方は、もう被災者の扱いではなくなるんです。同じ土地に住んでいるのに、招待を受けられる人と受けられない人が出てしまう。その逆差別を未然に防ぐために招待自体を断られるということもあって、難しい問題だと感じています。
仮設住宅に住まざるを得ない方もまだたくさんいます。小さいお子さんがいらっしゃる方は避難先に定着してそのまま暮らすようになり、イベントに協力してくださっている岩手県大槌町は、当時と比較すると人口が半分になっているそうです。まだまだ復興には時間がかかりそうだと痛感します。

高山
私は小学館のさんのボランティア・キャラバンのお手伝いで、2011年夏から東北へ伺う機会があったんです。翌年も同じキャラバンで行って、現地に立つと、「去年からあまり変わっていないな……」と実感するんです。毎年、その復興の歩みを見ていると、「もう大丈夫です」と、被災された各県に言われるまで続けないと支援にはならないぞ、と思うんです。個人でも寄付や救援物資を送りましたが、一人でやれることにはどうしても限りがありました。でも皆が集まれば、きっと大きなことができるはずだし、広く現状を知ってもらえる。力のある人たちで集まって何かできないかという考えから、敏さんに「チャリティーイベントをやりましょう」、「続けないと意味がありませんよ!」とお会いする度に言い続けたんです。だから敏さんがハガキ整理で苦労されるなら私が、と手を挙げました。賛同してくださるお客様がいらっしゃるなら、ずっと続けていきたいと強く思っています。
今年も東北へ足を運びましたが、少しの変化はあっても完全復興にはまだ遠く……。けれど現地の方々は、本当に前を向いて頑張っていらっしゃるので、どんなことでもお手伝いしたいといつも思います。それと、被災地の皆さんのお話を聞くのはとても勉強になります。災害が自分たちの身に降りかかった時にきっと参考になるはずです。

島田
また、イベント運営の角度でお話しますと、共催の日本芸能実演家団体協議会や後援の新宿区などに向けて諸々の書類を作ったりするわけですが、こういった文章作りはとても大事な仕事だと改めて思いますね。保健所なんかは毎年のように指導項目が増えていきます。きちんと対応して、筋を通すべきところは正していますが、やはり神経を使います。

高山
ちょっとずつちょっとずつ、毎年やることは増えていってしまうものですよね。でも、敏さんはいつも先回りしてやってくれますよね。「私たちがやります」と言いつつ、とても頼りにさせていただいています。

島田
いえいえ。とは言え、僕は世代交代も必要だと思うので、去年のイベントが終わった年の暮れに、実は高山さんに次の実行委員長をお願いしたんですよ。内諾はしていただいたのですが、高山さんは「委員長をまるごとお引き受けするのは荷が重いです」ともおっしゃいまして。そこで今年は部門ごとに委員長を立てて、実行委員長団という体制で進めることになりました。僕は委員長団の補佐役としてお手伝いをしていますが、皆さん今までとは違う新しい発想で、スピーディーに運営してくれていて素晴らしいです。

高山
敏さんがやってくれていた仕事を一人でなんてとてもできなくて。今は4人で分担していますがそれでも大変ですし、「いつのまにか敏さんが動いてくれていた!」ということもあったり。敏さんは補佐という名のドンなんです(笑)。

――いろいろなお話を聞かせていただきありがとうございました! それでは最後に、イベントに興味を持っている方に向けてメッセージをお願いします。

高山
ここでしか感じることのできない体験がたくさんあると思います。一度来ていただければ「来年も」と思っていただけるようなイベントにできるよう私たちも頑張りますので、たくさんの人に「感伝」しに来ていただけたら嬉しいです! まずは是非、往復ハガキを送ってください。しっかり見ますので、書き間違えに気をつけてくださいね!

島田
今年も岩手県大槌町や気仙沼・南三陸町・雄勝の方々が一緒に物産品を販売してくれます。お聞きできる話はきっと勉強になりますし、皆さんがイベントに参加してくれることで東北の方に「忘れていませんよ」と伝えることができるはずです。僕たち自身も、皆さんが楽しんで「来年も参加したい」と言ってくださるから、続けていこうと思うことができます。たくさんご参加をお待ちしています。

「日本俳優連合チャリティーイベント2017 東日本大震災・熊本地震 復興支援」
日時:2017年10月15日(日)10:00~
会場:芸能花伝舎
http://nippairen-charity.com

※イベント参加は、往復はがきでの応募が必要。〆切は9月12日(火)の当日消印有効。当選はがきの発送は9月30日(土)を予定しています。応募の詳細はチャリティーイベントの公式サイトをご確認ください。