小池百合子・東京都知事が率いる「都民ファーストの会」は、受動喫煙対策を「基本条例」と「罰則付き条例」の2段階で実施する。8月29日、日経新聞が報じた。
子どもがいる家庭での禁煙を努力義務とする「基本条例」を9月の都議会に提出し、来年2月には、罰則付きの条例案を提出する予定だという。この条例では、小規模なバーやスナックを除いて、飲食店や事務所を含む屋内を原則禁煙とする。2020年の東京五輪・パラリンピックに間に合わせるため、19年度中の施行を目指す。
「家に監視カメラを設置しないと条例に実効性をもたせられない」
報道を受け、ネットでは「早く進めてほしい」と都民ファの喫煙規制を歓迎するツイートが多数投稿されている。また「飲食店も重要ですが、自宅に居て近隣からの受動喫煙を何とかしてほしい」という人もいた。
一方、同会の受動喫煙対策に懸念を示す人もいる。キャリコネニュースの取材に対し、ジャーナリストで愛煙家の藤倉善郎さんは、「政治が家庭に踏み込んだり、個人の嗜好に対してルールを設けたりするのは異常なこと。安易にやるべきではありません」と憤る。そもそも、条例を制定したところで、「誰も守らないのではないか」と指摘する。
「子供への影響を考えれば、一定の基準を作り啓発を行う必要はあるでしょう。しかし家庭と一言で言っても、子供のいる部屋で吸うのか別の部屋で吸うのかや家の間取りはどうなのかなど喫煙の状況は多種多様で、喫煙を一律に禁じるのは無茶だと思いますそんな無茶な喫煙規制を実効性のあるものにしようとしたら、家の中に監視カメラを設けたり、子どもに密告させたりするなど、さらに無茶な手段をとるしかないと思います。こんなことをするとは思えませんが、こうした方法でも用いなければ、無茶な条例が守られることはないでしょう」
また、都民ファが罰則付きの条例で定めようとする屋内禁煙は「商売の自由を妨げる」ものだとする。
「店舗には喫煙可にして営業する自由があります。例えば、常連さんに喫煙者が多いという昔ながらの居酒屋や喫茶店でも禁煙にしなければならないのでしょうか」
「屋内を禁煙にするなら、路上での喫煙を解禁してほしい」
千代田区が2002年に路上喫煙を規制する条例を設けたことを皮切りに、首都圏では同様の条例が相次いで制定されてきた。そのため、「屋内も禁煙になったら、ルールを守りながら喫煙することが難しくなってしまう」と藤倉さんは語る。
「屋内を禁煙にするのならば、路上での喫煙を解禁にしてはどうでしょうか。喫煙所や灰皿の数を大々的に拡充するか、あるいは特定の喫煙所を設けることをやめ周囲の人に配慮すればどこでも吸えるようにすればいいと思います」
愛煙家や分煙論者からの批判は根強いが、都民ファの強硬な喫煙規制は着実に歩みを進めそうだ。同会は、共同で条例案を提出する公明党と合わせて都議会の過半数を占めており、成立は確実だと見られている。