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新垣結衣、山下智久と成田凌を救えるか? 『コード・ブルー』第7話で描かれた“失敗の代償”

2017年08月29日 18:22  リアルサウンド

リアルサウンド

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 「救いたいと思う気持ちが強いほど、患者が払った代償の重みに、医者は苦しむ」(白石恵/新垣結衣)。8月28日に放送された『コード・ブルー~ドクターヘリ緊急救命~THE THIRD SEASON』(フジテレビ系)の第7話。「外科医を続けるなら、賭けに勝ち続けろ。かつて恩師から言われた言葉だ。たった一度の負けが人生を変えてしまうから、そう教わった。だが、本当は違う」という藍沢耕作(山下智久)のナレーションから始まる。そして、「医者が負けて、その代償を払うのは、たいていの場合、患者だ。失われるのは、患者の人生だ。医者の人生ではない」と続く。


参考:浅利陽介が語る、チームの中でのポジション 「『コード・ブルー』の箸休めになれば」


 第7話のタイトルは“失敗の代償”。「なんで医者になったの?」という横峯あかり(新木優子)の質問から始まる。ドラマを観て医者になったという横峯に対して、同じフェロードクターの灰谷俊平(成田凌)は、「僕は小さい頃にドクターヘリに助けてもらったことがあって。僕も人助けできる医者になりたいなって」と志した理由を答えた。


 そんな中、「上双電鉄ヒガシ津田沼駅付近の踏切で人身事故が発生。負傷者3名」というドクターヘリの要請が入り、現場に向かう白石、灰谷、雪村双葉(フライトナース/馬場ふみか)の3人。ドクターヘリ内で、心停止寸前である患者の情報を聞いた灰谷は、「早川(伊藤祐輝)さん、急いでください」と操縦士を急かしてしまう。その言葉が原因で、これまで16年間無事故で、1万回以上の出動、5,000時間以上のフライトをこなしてきたドクターヘリが、着陸に失敗してしまうのだった。


 着陸に失敗したものの、ドクターヘリに乗っていた白石らは全員軽傷で済み、そのまま走って患者の元に駆けつける。だが、その時すでに3人のうちの1人、30代男性は大動脈損傷があり、救助できない状態に。そこで白石は、助かる見込みが極めて低い彼を諦めて、ほか2人の女性を助けることを決断。灰谷もその意向に従い、動き出そうとしたところで、骨盤骨折を負った20代の女性に「先生、助けて! 将くんを助けて!」と呼び止められる。


 事故にあった3人のうち2人は、今日これから結婚式を挙げるはずの夫婦だった。2人は式場に行く途中で線路内に立ち往生している老婦人を見かけ、彼女を助けようとして電車と接触してしまったのだ。新婦の口からその事実を聞かされた灰谷は“救いたい”という気持ちがより膨らみ、必死に新郎の治療にあたる。だが、大動脈破裂を起こしてしまい、ついに助かる可能性はゼロに。それでも手を止めない灰谷に、電話で藍沢が「諦めろ、灰谷」と説得する。泣きそうになりながら、助からない患者を見つめる灰谷。そして、“賭けに負けた”ことを悟る。支払った代償は、“患者の人生”というあまりに大きいものだ。


 「僕も人助けできる医者になりたい」と誰かを“救いたい”という気持ちが人一倍強い灰谷。それだけに、今回のドクターヘリの事故、そして患者の死は自分を責めずにはいられない。助けたい、救いたい、なのにどうして。僕は患者の人生を奪ってしまった。と決して戻ってこない命に苦しむ。その“重荷”がどれだけのものなのか、推し量ることもできない。だけど、「灰谷先生だけなんだよ。人のために医者になったのは」「私が患者だったら灰谷先生みたいな先生に診てもらいたいって思う」という横峯や、「灰谷先生を責めることなんてできない」「(助けたいという)その気持ちはみんな同じだから」という白石のように、“その重荷を一緒に背負いたいと願う、仲間”がいるのだ。


 一方で、天才ピアニストの天野奏(田鍋梨々花)に、オペを行ったのは自分じゃないという事実を打ち明ける藍沢。奏は、藍沢が執刀してくれるならと、手術を承諾したのだ。加えて藍沢は、手に後遺症は残らない。残ったとしても、君ならリハビリをすれば、また元通りにピアノが弾けると伝えていた。だが、彼女の手に残った麻痺は、治る見込みが極めて薄い。嘘をついてでも彼女の命を救いたいと言っていた藍沢だが、不可抗力の嘘と意識的な嘘、その二つの代償もまた、あまりにも大きかった。藍沢もまた医者としての“賭けに負け”たのだ。結果、“奏の人生”、命よりも大切なピアノを奪ってしまう。


 そんな灰谷と藍沢は、ともに“失敗の代償”を自らも払おうとする。患者が失ったものと同じ、灰谷は“生命”、藍沢は“可能性”だ。睡眠薬を大量に摂取したであろう灰谷は、故意か事故かホームから転落し、藍沢は強く願っていたトロント大へのレジデントを辞退。果たしてこの先、二人の人生はどうなっていくのだろうか。


 「患者は、あなたのような医者を必要としてる」と藍沢の背中に呼びかけていた白石のように、灰谷と藍沢の周りにはたくさんの仲間たちがいる。そのことに気づき、少しでも“苦しみ”が分かち合えたなら、彼らは“負け”の痛みを乗り越えて、また多くの“賭け”をしていくのだろう。そして、“救いたい”と思うその強い気持ちこそが、“勝ち”続けることに繋がっていくに違いない。


(文=戸塚安友奈)