2017年08月29日 10:33 弁護士ドットコム
誰がどれくらいの給料をもらっているのかーー。働く人間として、誰もが気になるところだろう。多くの会社で極秘とされている給与の情報だが、自分の知らないうちに他の従業員に公開されてしまうことがあるようだ。
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実際にインターネット上のQ&Aサイトでは、「自分は営業担当で、給料は社長と経理だけが分かっているものだと思っていましたが、事務や他の営業マンにまで漏れていました」という投稿があった。他にも、派遣社員の給料が正社員に共有されていたという投稿者が、「給料は個人情報として保護されないのか」と質問している。
給与の情報は個人情報として保護されるのだろうか。個人情報に当たらないとしても、上司などが暴露していた場合、従業員は会社に対して何らか措置をとれるのだろうか。 靱純也弁護士に聞いた。
「給与の情報は個人情報保護法の『個人情報』には該当しません。」
靱弁護士はそう指摘する。なぜなのだろうか。
「個人情報保護法で保護される『個人情報』は、
(1)生存する個人に関する情報で、かつ
(2)当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの
をいいます。普通、給与の金額だけで個人を特定することはできませんので、給与の情報は個人情報保護法で保護される個人情報にはあたりません」
では給与の暴露には特に、法的問題がないのか。
「個人情報保護法で保護されないとしても、給与の金額を公開することはプライバシーの侵害となり不法行為となる可能性があります。
プライバシー権を定義した法律はありませんが、下級審判決では私生活をみだりに公開されない権利を認め、その侵害に対して慰謝料の支払いを認めたものがあります。(作家の三島由紀夫が実在する男性をモデルに私生活を描いた小説で、プライバシーを侵害されたとして男性への損害賠償など認めた『宴のあと事件」等)」
給与の暴露について、プライバシー権を認めた裁判例はあるのか。
「給与の情報が法律上保護されるプライバシーにあたるか、について判断した判例は見当たりませんので全くの私見となりますが、給与の金額は、通常は他人に公開して欲しくない情報といえるように思います。このため、本人に無断で給与の情報を公開した場合、正当化する理由がない限りプライバシー権の侵害として不法行為が成立し、公開した人や状況によっては会社に対する慰謝料請求が認められるように思います」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
靱 純也(うつぼ・じゅんや)弁護士
大手銀行、製薬会社勤務を経て2004年弁護士登録。交通事故、労働事件、債務整理、企業法務などに幅広く対応。気軽に相談できる弁護士を目指し無料法律相談に力をいれている。
事務所名:あゆみ法律事務所
事務所URL:http://www.ayumi-legal.jp/