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テイラー・スウィフト、カニエ&キム夫妻とのバトルの行方は? 衝撃の新曲リリースから読む

2017年08月29日 08:03  リアルサウンド

リアルサウンド

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 現地時間8月25日、テイラー・スウィフトが新曲「Look What You Made Me Do」を発表した。同楽曲は11月10日にリリース予定のアルバム『Reputation』の先行曲で、Spotify、YouTubeで過去最高の再生回数を記録。(参考:テイラー・スウィフト新曲が再生回数が過去最高記録(日刊スポーツ))これまでのポップなイメージとは異なるサウンドや過激な歌詞に加え、過去のテイラーが登場するMVも含めて話題となっている。


(関連:テイラー・スウィフト、Spotify配信再開の意義 ポイントは有料会員限定配信とデータ活用?


 新曲の発表前にSNSの投稿を全て削除し、現地時間8月21日には蛇が映った意味深なムービーを公開したテイラー。彼女の一連の行動の理由や新曲の意図について、HIPHOPやR&Bを中心にアメリカのポップミュージック・シーンに詳しい、音楽ライターの渡辺志保氏に訊いた。渡辺氏は当初アップされた蛇の動画を見てハッキングを疑ったと明かしつつ、“蛇”とテイラーが密接な関係にあることを語った。


「去年カニエ・ウェストが出したアルバム『The Life of Pablo』収録曲「Famous」に<I feel like me and Taylor might still have sex(俺はテイラーとセックスしてる)><I made that bitch famous(俺とヤったからあの女は有名になったんだぜ)>という歌詞があって話題になりました。そのあとに発表されたMVもテイラーやドナルド・トランプ、クリス・ブラウンの裸の蝋人形が一つのベッドで寝ている、という過激な内容で。当初テイラーのファンは擁護していたんですが、カニエの妻、キム・カーダシアンが2人の電話の模様を録画したビデオをスナップチャットにあげたことで事態は一変。実はカニエは事前に電話でこういう内容のリリックを書くことを、テイラーに知らせていて、テイラーも「面白いからいいんじゃない」と返していたのに、曲が出たら激昂してしまったことが判明したんです。その時キムがツイートで使った絵文字が“蛇”でした。蛇はコソコソして誠実じゃない、ずるいところがあるようなイメージですよね。だからここでテイラーが蛇を使った動画をアップするというのは、すごい自虐というか、その時の屈辱を逆手にとっているという印象です」


 続けて渡辺氏は、今回のテイラーの新曲のサウンドと歌詞の変化についてもこう語った。


「前作『1989』のリードトラック「Shake It Off」は失恋の歌でネガティブな要素はありますが、そんなの忘れちゃおう! というような歌詞で、サウンドも正統派ポップスでした。一方今回の「Look What You Made Me Do」はミニマルでダークな雰囲気のトラックです。フック、つまりサビの部分も<Look What You Made Me Do>というタイトルを繰り返していて、昔からのファンは戸惑ったのではないでしょうか。中でもファンにとって衝撃的だったのは、最後の<”I’m sorry, the old Taylor can’t come to the phone right now.”(“昔のテイラーは今電話に出ることができません”)><”Why?”(“なんで?”)>と聞いたら<”Oh, ‘cause she’s dead!”(“もう彼女は死んだからだよ”)>という箇所。彼女が昔のツイートやInstagramのポストを全部消したことと合致するところですが、昔の自分は捨てて“新生テイラー・スウィフト”になった、というのをここまでドラスティックに言わなきゃいけないのか、とパワーと凄みを感じました。テイラーはもともとカントリーシンガーということもあり、“アメリカの良心”というか、全国民の期待を背負った優等生のような印象です。今回の歌詞は昔の自分に対して言っているのかもしれませんが、長らく確執のあるカニエ・キム夫妻やケイティ・ペリーに向けた歌詞とも言われています」


 ケイティとテイラーはバックダンサーを巡る争いから長期にわたるビーフを展開しており、ケイティもテイラーへのディスとも取れる「Swish Swish」という楽曲を発表している。今回のテイラーの変化にはどんな理由があるのか。


「ジャケット写真も可愛らしいイメージとは一転して、着ているカットソーもパンクな要素があったり、背景にあしらった文字のフォントもゴシック調でクールなイメージをとことん表現しています。カニエやケイティとのこともそうですが、恋人だったカルヴィン・ハリスと別れるなど、2016年はネガティブな報道も多くて、女王様気取りだと批判されたことが彼女の変化に影響しているのかもしれません」


 さらに渡辺氏は、現地時間8月27日に公開された「Look What You Made Me Do」のMVに言及した。


「宿敵であるケイティが司会を務める『VMA(2017 MTV Video Music Awards)』の場で、MVが解禁されたことにも驚きました。しかもその内容も、これまでのテイラーをテイラー自身が徹底的に打ちのめし、かつバカにしているようなもの。古くからのファンはとにかく驚いたのでは。すでにビヨンセの「Formation」に似ていると騒がれてMV監督のジョセフ・カーンが弁明したり、バスタブのシーンはキム・カーダシアンがパリで強盗事件に逢ったことを想起させるのではなどの意見も飛び交ったりしていますが(参考:’Revenge doesn’t suit you’: Taylor Swift sparks backlash from fans as she appears to ‘mock’ the moment Kim Kardashian was robbed at gunpoint in Paris in new music video(mail Online))、この強烈な作品をテイラー自身がどう受け止めているかも気になります」


 最後に渡辺氏はテイラーの変化には今のアメリカの風潮も影響しているのではないか、と指摘した。


「アメリカ大統領選挙の際、ビヨンセ、リアーナ、ケイティ・ペリーなど多くの女性ポップアーティストたちが自分の政治的なスタンスをしっかり表明していました。一方テイラーは政治的な発言は一切しないことで知られていて、過去に「宗教や政治に関してはまだ発言は控えます」と言っていたほど。トランプが大統領になって大規模なデモが行なわれるなど、アメリカは今揺らいでいて、ポップスターも政治的メッセージを発信すべきという風潮があります。そんな中で発言を謹んでいるテイラーは少しメッセージ性が弱い気がしますよね。だからこそ、彼女は純然たるポップスターだとも言えるのかもしれませんが、今のアメリカで求められているポップスはそういうものではない気がします。そこに対して彼女がどんなアルバムを作ってきたのか、楽しみですね。最近、特にヒップホップの世界ではアルバムをサプライズリリースするというのがトレンドの一つですが、テイラーはすでに11月発売のアルバムの告知をしているので、今からカウントダウンができていろんな意味でドキドキしています」


 多くのリスナーに衝撃を与えた新曲「Look What You Made Me Do」。11月に発売されるアルバムには他にどんな楽曲が収録されるのか。SNSでの発言も含め、テイラーの行動から目が離せない。(村上夏菜)