2017年のFIA-F4選手権も残り2戦。チャンピオン争いは3名に絞られた FIA-F4シリーズの第6大会が鈴鹿サーキットを舞台に、8月26~27日に開催され、第11戦を角田裕毅(SRS/コチラレーシング)が、そして第12戦を宮田莉朋(FTRSスカラシップF4)が、それぞれ制して今季3勝目をマーク。笹原右京(HFDP/SRS/コチラレーシング)は4位、2位となったがポイントランキングのトップは引き続き死守、この3人にだけ王座獲得の権利が残されることとなった。
夏休み最後の週末であり、併催の鈴鹿1000kmが今年限りということもあって、この週末は大観衆が詰めかけていた鈴鹿サーキット。また、もうひとつの目玉が、F1世界チャンピオン、ジェンソン・バトンのスーパーGT初参戦。
そういう意味では、ふだんのレース以上に目の肥えたファンが集まることもあり、FIA-F4を戦うドライバーたちにとっても、自分をアピールするまたとない機会となったはずだ。
専有走行では、ホームコースの利を活かし、HFDP勢が絶好調。木曜日から金曜日の計6セッションでは、3セッションを角田裕毅(SRS/コチラレーシング)がトップ、総合でも最速タイムを記した一方で、2セッションで宮田莉朋(FTRSスカラシップF4)がトップと逆襲の兆しも……。
土曜日になって予選が行われると、角田はベストタイム、セカンドベストともに早々とトップタイムを記して、まさに余裕の構え。その直後に大滝拓也(SRS/コチラレーシング)が立体交差先でスピンを喫し、コース上にマシンを止めたことから赤旗が出されるが、その影響をもっとも受けたのが大湯都史樹(HFDP/SRS/コチラレーシング)だった。
大湯にとって、その周はまさにアタックの真っ最中。セクター1、セクター2とベストタイムで来ていたのが水の泡に。再開後のタイヤはすでにピークを過ぎており、誰も角田のタイムを上回れず。第11戦、第12戦ともにポールポジションからスタートを切ることとなった。
しかし、当の角田はやや不満そう。「2戦ともポールが獲れて良かったけれど、タイム的にはコンディションの変化などあって、ちょっと納得はいかないですね。昨日の方がタイムは出ていたし、みんなを引き離せていたので。今回は特に大湯選手が強敵だと思っていて、赤旗で(タイムは)出せなかったけど、それがなかったらトップを獲られていたかもしれないし。ただ、セクター3とセクター4は僕の方が速いので、決勝には自信を持って挑みます」と語った。
土曜日のうちに行われる決勝レース第11戦で、角田に続くのは浦田裕喜(SACCESS RACING F4)だ。最後の最後に2番手に浮上してきたドライバーは、昨年のスーパーFJ鈴鹿シリーズチャンピオン。再開後のアタックでタイヤが残っていた上に、しっかりクリアラップを取れていたのは事実ながら、コースを隅々まで知り尽くしている強みは確実にあったはずだ。そして3番手は宮田で、4番手は笹原。そして、前出の大湯は5番手からのスタートとなった。
迎えた第11戦、レッドシグナルの消灯とともに、鋭く飛び出して行ったのは角田で、これに続いたのは宮田だった。浦田をすぐにかわし、そしてその3人の後ろでは笹原と大湯が順位を入れ替えていた。さらに河野駿佑を加え、さっそく6台によるトップグループを形成。緊張感のみなぎる状態がしばらく続くも、誰もミスを冒さず。
しかし、中盤に入ると、それぞれ一騎討ちの様相を呈するようになり、角田は宮田と、浦田は大湯と、そして笹原は河野との戦いに集中するように。
このなかでもっとも激しかったのが3番手争い。逆転王座に執念を燃やす大湯は、9周目の1コーナーで並ぶも浦田は一歩も引かず、そのままS字へと進んでいくが、あえて引いてみる度量も必要だったかも……。逆バンクでしっかりインを閉めた大湯と絡んでしまい、スピンした浦田はその場でリタイア。この間に笹原、河野が一気に差を詰めるが、幸い大湯のマシンにはダメージはなく、なんとか逃げ切りに成功して3位でフィニッシュを果たす。
もちろん、その最中にもトップ争いは激しく繰り広げられていたが、鉄壁のガードで角田は宮田の逆転を許さなかった。「序盤は後ろとの間隔を気にしながらも、余裕を持って走れていたんですが、終盤になって宮田選手が追いついてきたら、ちょっと焦ってしまった部分もあって。タイヤも厳しくなっていたから、シケインでミスしたりもしていたんですが、その先をしのげれば大丈夫と思って丁寧に行ったら、なんとか抑え切ることができました」と角田。
宮田、大湯、笹原、そして河野の順で続いてフィニッシュ。6位は川合孝汰(DENSOルボーセF4)が獲得した。
日曜日に行われた決勝レース第12戦で角田に続いたのは笹原で、3番手は大湯、そして4番手が宮田と、いずれもチャンピオン獲得の権利を残したドライバーたち。この結果次第では、笹原のチャンピオンが決まる可能性もある一方で、争いから脱落する可能性もある。戦いに邪魔立ては不要だと言わんばかりに、この4人は一団となって1コーナーに飛び込んでいく。先頭に立ったのは笹原で、やや出遅れた角田は2コーナーで大湯にも交わされ、さらにデグナーの進入で宮田にもかわされていた。
しばらくはこう着状態が続いたものの、4人のなかで最初に動いたのは宮田だった。6周目の1コーナーで大湯をかわして2番手に浮上。この間に初めてトップの笹原は1秒のリードをつかむが、勢いに乗る宮田はすぐに接近。じわりじわりと詰めていき、最終ラップ突入時点の差はわずかコンマ2秒。1コーナーに向け、しっかりガードを固めた笹原ながら、豪快にアウトから攻めていった宮田を凌ぐ術は残されていなかった。
そして、その後方でも順位の入れ替えが。9周目の1コーナーで角田が大湯をかわして3番手に躍り出ていたのである。その結果、宮田、笹原、角田の順でフィニッシュ。4位に甘んじた大湯はチャンピオン争いから脱落してしまう。依然として笹原がランキングトップながら、宮田には自力での逆転の可能性が残された。その一方、角田は首の皮一枚という状況でチャンピオン争いに踏みとどまった。
「鈴鹿ではホンダ(HFDP)のドライバーが強いから、この優勝はすごく嬉しいし、すごく自信につながります。序盤も前についていけたし、最後の最後にああやってアウトから抜けるなんて、自分でもびっくりしています。僕自身、キャリアのなかで富士しか今まで勝っていなかったので、そこだけ……と言われるのは、すごく悔しかった。もてぎでも勝って決めます!」と宮田。
そして笹原は「本当は序盤からすごく苦しくて、原因は分からないんですが……。コースアウトしないようにするのが精いっぱいで、最後は本当につらかったです。だからこそ、2位に留まれて良かったとも思えるし、最後のもてぎは本当に勝って決めたいです」と。
5位は2戦連続で河野が獲得し、これに最後まで僅差で続いていたのは、富士に続いてスポット参戦の名取鉄平(ATEAM Buzz Racing F110)。全日本カート選手権OKクラスにも参戦中の17歳、今後がより一層楽しみになってきた。