「エンジン、プロブレム!! エンジン、プロブレム!!」と言って、フェルナンド・アロンソがピットインしてきたのは、25周目。このラップでアロンソはカルロス・サインツJr.にオーバーテイクされ、ポイントが絶望的になった直後のことだった。
だが、ホンダの関係者によれば、「データ上では問題は見当たりませんでしたが、ドライバーが異常を感じたため、マシンをガレージに戻し、リタイアを決めました」と言う。
長谷川祐介ホンダF1総責任者も次のように語る。
「フェルナンドがマシンの問題と思われることについて無線で報告してきて、自らピットインしてきました。データ上では何も確認できなかったのですが、用心のためにマシンを止めることにしました」
ただし、アロンソが故意にリタイアしたことは否定した。
「異変があれば、ドライバーが最初に感じます。データには問題は出ていませんが、まだきちんと調べないと詳細はわかりません」
それでも、今回のアロンソのリタイアに疑惑が持たれているのは、アロンソのモチベーションが1周ごとに低下していることが、無線を通じで伝わっていたからだ。
5周目(ニコ・ヒュルケンベルグ、エステバン・オコン、セルジオ・ペレスと3周で3台に抜かれ)
アロンソ「恥ずかしい。本当に恥ずかしいよ」
レースエンジニア「フェルナンド、こっちも見ているよ。でも、ターン4(のはみ出し)で2つの警告が出ているから、気をつけるように」
6周目(ロマン・グロージャンに抜かれ11番手に)
レースエンジニア「(ケビン・)マグヌッセンはグロージャンの1.4秒後方にいる」
アロンソ「後ろとの差はあまり気にしていないよ。だって、これは単なるテストだからね」
17周目
レースエンジニア「フェルナンド、リヤタイヤを労わるため設定を変更するから、フロントタイヤのロッキングに気をつけてほしい」
アロンソ「もうこれ以上、無線は必要ないよ」
18周目
レースエンジニア「いまストフェルがピットインした。それから、パーマーとストロールも」
アロンソ「だから、なんだよ。どうせ、そんなマシンとしか、戦えないからか。まあ、俺が負けるわけはないけど。だからといって、俺の人生も変わらないけどね」
25周目
アロンソ「雨は降る?」
レースエンジニア「いや、レーダーに雨雲はない」
26周目
アロンソ「エンジントラブル!! エンジントラブル!!」
レースエンジニア「わかった。リタイアしよう」
アロンソが厳しい状況の中でレースしていたことは認める。そして、その主たる原因がホンダの非力なパワーユニットにあることも認めよう。だが、ベルギーGPがマクラーレン・ホンダにとって厳しい戦いになることは、スパに来る前からわかっていたはず。
F1はチームスポーツ。一個人の感情だけでレースをリタイアすることは、いかなる理由があっても許されない。それでも、もしリタイアしたかったのであれば、アロンソはそもそもスターティンググリッドに着くべきではなかった。