ベルギーGPの予選Q2のラストアタックで、フェルナンド・アロンソが「ノーパワー!!」と叫んで、ピットに帰ってきた。
「バッテリーが機能しなくなり、ターン11とターン12の間で0.6秒失った。(最後の)ラップの終盤に(デプロイメントの)問題が起きたことで、Q3に進めなかった」とアロンソは語っている。
この言葉は、半分は事実だが、半分は真実ではない。
ERSパワーがターン11とターン12の間で機能せず、コンマ数秒失ったことは確かだ。だが、後半部分の「(デプロイメントの)問題が起きた」という部分は正しい表現ではない。
あのとき、いったい何が起きたのか? 長谷川祐介ホンダF1総責任者に聞いてみた。
「(ERSのアシストは)アクセルが全開になる部分の前半区間で機能するように設定しています。全開期間の後半でアシストしても、ドラッグ(空気抵抗)との兼ね合いで有効ではないからです。フリー走行のデータを元に、われわれはターン9を立ち上がったところでアシストした後、ターン11を立ち上がったところでもアシストするようにデプロイを設定していました。ところが、フェルナンドはあのラップだけ、ターン9を立ち上がって全開でターン10に向かった後、ターン10と11も全開で通過したため、ターン9からターン12までを1つの直線と判断し、本来アシストするはずのターン11を立ち上がった部分でデプロイされなかったわけです」
つまり、デプロイメントに問題が起きたのではなく、予定とは異なるアロンソのドライビングによって、デプロイメントが機能しなくなったわけである。もちろん、デプロイが切れたわけではなく、再びアクセルを全開にすれば、アシストは行える状態にあった。
デプロイの設定は現在のF1において非常に重要であるため、設定するにあたっては車体側のエンジニア、そしてドライバーとも入念に話し合いを行う。異なるアクセルワークを行えば、こうなることはわかっていたはず。
アロンソがそれを認識していなかったとしたら、それはトップドライバーらしからぬ行為だった。逆に、もしそれを認識した上で、そのようなドライビングをしていたとしたら、それはひとりの人間として道理に反する大きな問題だったことになる。