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スーパーGT壮絶1000km。Epson NSXがサバイバル戦を制し、10年ぶりの歓喜の美酒

2017年08月27日 19:32  AUTOSPORT web

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2007年以来となる優勝を飾ったナカジマレーシングのEpson Modulo NSX-GT
照りつける太陽の日差しがまぶしい快晴のもと、最後の1000kmとなるスーパーGT第6戦鈴鹿1000kmが8月27日に決勝日を迎え、GT500クラスはアクシデントやトラブル、オーバーテイクやペナルティで順位が目まぐるしく入れ替わる中、Epson Modulo NSX-GTが10年ぶりとなる優勝を飾り、NSXが鈴鹿1000kmの有終の美を飾った。

 すでにピットウォーク券、パドック券、グランドスタンドの指定席が前売り段階で完売するなど、多くのファンが集まった鈴鹿サーキット。日曜朝のサーキットへの入場風景は、まさにF1日本GPを彷彿とさせる光景だった。

 海側、メインストレートでは1コーナー側から向かい風になる形で涼しい風は吹いているものの、気温は30度、路面温度は47度とタイヤとマシンには厳しいコンディション。三重県警察の白バイ4台、パトカー3台の先導によるパレードラップ、そしてフォーメーションラップを経ていよいよ最後の鈴鹿1000kmが始まった

 スタート直後の1コーナーで4番手Epson NSXがKEIHIN NSX-GTをかわして3番手に浮上。オープニングラップを終えて、予選7番手のカルソニック IMPUL GT-R、9番手のMOTUL MUGEN NSX-GT、12番手のMOTUL AUTECH GT-Rがそれぞれひとつ順位を上げている。

 その後はトップのフォーラムエンジニアリング ADVAN GT-Rが2番手のWedsSport ADVAN LC500を2秒程度離すが、それ以上には
差は広がらず、上位陣は接近状態のまま周回を重ねる。

 9周目に周回遅れのGT300の大群が絡んでくると、2番手WedsSportの背後にEpsonが付き、テール・トゥ・ノーズに。しかし、GT300が絡み2台が離れる。すると、すかさずKEIHINがEpsonを1~2コーナーの流れでオーバーテイクして3番手が交代。

 11周目には2秒以上あったフォーラムエンジニアリングのラップタイムが落ち、2番手WedsSportとのギャップがコンマ6秒に。フォーラムエンジニアリング、WedsSport、KEIHINの3台が団子状態になり、12周目のスプーンでWedsSportのブレーキングが乱れたところをKEIHINが付いて、2番手が交代。さらにそのバトルの間に後方マシンも追いつき、上位6台が1パック状態で連なって走行する。

 13周目にはバックストレートから130RでKEIHINがフォーラムエンジニアリングに並びかかり、130Rのイン側からオーバーテイク。KEIHIN がトップに躍り出る。2番手となったフォーラムエンジニアリングはペースが上がらず、2番手以下が接近戦に。

 すると、15周目にはペースが速い4番手のS Road CRAFTSPORTS GT-RがWedsSportの背後に付き、WedsSportがヘアピン立ち上がりで2番手のフォーラムエンジニアリングに並び掛かったところで、S Roadもヘアピンの最内に入り、3台が並走するような状態に。その立ち上がりでS Roadがランオフエリアに車体を落とし、コントロールを失ったマシンが左サイドのクラッシュバリアにマシンを接触させて、リヤウイングが破損。S Roadはすぐにコースに戻るも、リヤウイングがコース上に脱落して、そのままピットロードに向かった。

 タイヤのタレが厳しかったか、3番手まで順位を下げたフォーラムエンジニアリングは17周目にピットイン。ドライバーを佐々木大樹に変わり、GT500で最初のルーティンのピットストップを消化する。 その後、トップのKEIHINは2番手WedsSportよりもラップタイムで1秒近く速いペースで周回し、ギャップを広げていく。25周を終えたところでKEIHINは15.9秒差の独走状態に。

 26周目には6番手まで順位を上げたMOTUL MUGEN NSX-GTがピットイン。中嶋大祐からジェンソン・バトンにステアリングを交換する。そのバトン、ピット作業を終えてファストレーンに向かうリリースの際にGT300と交錯し、ギリギリ接触を避けられたが、その後、ドライブスルーペナルティを受けることに。

 29周目~31周目にかけて、残りのチームが続々とピットイン。最初のピットインを終えて、トップからKEIHIN、WedsSport、そして3番手には一時MOTUL NSXのバトンが付けたが、ドライブスルーペナルティにより12番手まで後退。替わって3番手にEpson、そしてカルソニック、MOTUL GT-R、RAYBRIGのトップ6に。RAYBRIGはフォーラムエンジニアリングを最終コーナーから1コーナーの流れで交わして6番手に順位を上げた。

 41周目にはペースが落ちた3番手Epsonの後方にカルソニック、MOTUL GT-Rが追いつき、3台が3番手を争う展開に。そのゆくえに注目が集まるなか、42周目にGT300のB-MAX GT-RとARTA BMW M6 GT3が最終コーナーで接触し、ARTA BMWがスピンしながらピット入り口のガードレースにクラッシュし、最終コーナーの2/3を塞ぐような形でストップ。ドライバーは自力でマシンを降りたが、ここでセーフティカー導入。トップのKEIHINが築いた6.6秒のギャップは帳消しになってしまう。

 48周目にリスタートするも、リスタート時の最終コーナーで4番手のカルソニックと5番手のMOTUL GT-Rが接触し、カルソニックの左リヤバンパーが外れ、パーツが宙を高く舞う。カルソニックの走行は変わらず、大きな影響は見られない。

 その後、トップのKEIHINは順調にトップを走行し、2番手とのギャップを広げはじめ、56周目には8.5秒のアドバンテージを築く。

 57周目からは、各チーム2度目のピットイン。ピット作業時間で順位が変わり、目立ったところでは5番手まで順位を上げたRAYBRIGがピットで何かアクシデントがあったか、14番手まで順位を下げることに。また、62周目にはKeePer TOM'S LC500、ZENT CERUMO LC500、au TOM'S LC500のレクサス3台がS字ふたつめで絡むアクシデントがあり、auとZENTが接触し、ZENTがハーフスピンしながらコースオフ。クラッシュバリアまで行くが、そこからコースに復帰している。

 62周を終えて、トップはKEIHIN、続いてEpson、WedsSport、MOTUL GT-R、そしてDENSO、カルソニックのトップ6に。しかし、トップから8番手までが約30秒のギャップの中にあり、まだまだ、多くのチームにチャンスがある状態。

 64周目には小林可夢偉がステアリングを握るWedsSportがMOTUL GT-Rにシケインでインを突かれ、3番手交代。その後も可夢偉はペースが上がらず、70周目にはDENSOにも順位を奪われる。可夢偉はスプーンではリヤを滑らせて挙動を乱すなど、マシンコントロールに苦労している様子。5番手となったWedsSportの可夢偉を先頭にして6台が並ぶ接近戦となり、各所でバトル。

 78周目にはそのWedsSportの可夢偉が他よりも早めのピットイン。可夢偉から関口雄飛に乗り替わる。84周目にはMOTUL NSXの左リヤタイヤがバーストして、MOTUL NSXはスプーンでオーバーラン。

 173周レースの約半分となる86周を終えた時点で、トップはKEIHIN、続いてEpson、MOTUL AUTECH GT-Rのトップ3。

 88周目にRAYBRIGがピットインして、ここから3回目のルーティンのピットタイミングに。auも90周目にピットインしたが、このタイミングで序盤のZENTとの接触がペナルティとなり、ドライブスルーペナルティが課されることに。さらにはMOTUL NSXがセーフティカー中の追い越しで、このレース2度目のドライブスルーペナルティが課される。

 そして90周目にピットインしたMOTUL GT-Rがピットを終えてファストレーンに向かう際に、GT300のエヴァRT初号機 Rn-s AMG GTと交錯。アンセーフリリースが心配される。

92周目にはトップのKEIHINがピットイン。するとKEIHINがピットアウトした直後の95周目に130RでGT300の31号車TOYOTA PRIUS apr GTが130Rでスピンしながらクラッシュバリアに大クラッシュ。すぐにセーフティカーが導入。KEIHINが築いた10秒のギャップがふたたび、ゼロになってしまう。

 103周目にレースがリスタートすると、9番手のRAYBRIGがWAKO'S 4CR LC500をシケインでパス、その翌周にはフォーラムエンジニアリング、さらにDENSOをオーバーテイクして6番手まで順位を上げる。

 すると、2番手走行のMOTUL GT-Rにドライブスルーペナルティの裁定。90周目のピットアウト時のリリースが違反となった。
 
 セーフティカー明けの第4スティントで主役となったのが、RAYBRIGの山本尚貴。9番手から次々と順位を上げ、109周目にはダンロップコーナー~デグナーひとつめまでカルソニックと並走して前を奪い、その後はヘアピン立ち上がりでEpsonに並びかかると、スプーンでオーバーテイク。2番手のWedsSportが112周目にピットインしたこともあり、山本は9番手から2番手まで順位を上げる。トップのKEIHINとは116周目の時点で12.5秒差

 ここから4回目のピットストップタイミングとなり、各車タイヤ交換&ドライバー交代。ピットタイミングが各車微妙に異なる中、120周目にはタイヤ交換を終えてアウトラップに入っていたauと、カルソニックがシケインで交錯し、カルソニックがauを追突する形になり、auがサンドトラップで亀の子状態に。FROが発動してauは救出されるも、カルソニックも右フロントバンパーを大きく破損し、オレンジディスクのフラッグが提示。

 カルソニックはピットに戻りテープで右フロントのヘッドライト周辺を修復してコースに復帰するも、auとの接触がペナルティとなり、ドライブスルーが課されてしまう。

 その間、アウトラップでトップが入れ替わり、Epsonがトップを奪い、約2秒差でKEIHINが続く。3番手にはWedsSport、4番手にDENSOが続き、2番手まで順位を上げたRAYBRIGはタイヤ交換後はペースが伸びずに5番手で後続の猛追を受ける展開に。

 137周目には14番手を走行していたMOTUL NSXのバトンの右フロントタイヤにアクシデント発生。スローパンクチャーのような状態になり、緊急ピットイン。今回の鈴鹿1000kmで注目を集めたバトンのGTデビュー戦、最後はアクシデントという形で終わってしまった。

 140周になると、最後の5回目となるピットインが始まる。まずは3番手走行のWedsSportがピットイン。最後のスティントは事前の予定では可夢偉の順になるはずだったが、関口がステアリングを握っている。

 続いて142周目からはRAYBRIG、KeePerの3番手争いのチームが続々ピットイン。147周目にはトップのEpsonがピットインし、タイヤ交換を終えた瞬間、スプーンで衝撃的な映像が。Epsonのピットインでトップに立ったKEIHINの左リヤタイヤがバーストし、KEIHINはスプーンで大きくコースオフ。左リヤはカウルも破損してホイールが見えている状態に。KEIHINのステアリングを握っていた塚越広大はバックストレートの途中でマシンを止め、クルマを降りる。終始トップを争っていたKEIHINがここで戦列を去った。

 2番手に18秒差を付けて独走状態になったEpsonは松浦孝亮がステアリングを握る。アウトラップのデグナーふたつめではオーバーランして会場を驚かせるも、その後は2番手のMOTUL GT-Rに一時詰め寄られながら、序々に2番手を引き離し始める。

 後方では3番手のDENSOと4番手RAYBRIGが表彰台をかけて接近戦。157周目のシケインではRAYBRIGの山本がDENSO平手晃平のインに入って並び掛かるも、止まりきれずに平手がクロスラインで抜き返し、順位は変わらず。山本もすぐにマシンを立て直し、平手の後方にぴったりと付く。

 161周目に再び山本が平手に並び掛かるも、ブレーキングは平手が勝る。しかし、166周目のシケインのブレーキングで平手はリヤのグリップが厳しくなったかマシンの挙動が乱れ、その隙を山本が突く形で最終コーナーで並び掛かり、1コーナーでアウト側から3番手を奪った。

 そして、その直後の167周目に再び衝撃的な映像が。逆バンクでGT300の2番手を走行していたVivaC 86MCがクラッシュバリアに突っ込み、フロアを上にひっくり返っている状態に。経緯は不明ながらFROが発動。ドライバーはマシンから脱出して大事には至っていないようだ。

 GT500では4番手順位を下げたDENSO平手のマシンの挙動がおかしく、タイヤのグリップがなくなってしまったか、ブレーキのトラブルか、後続に先行を許し、最後はデグナーふたつ目を曲がりきれない形で真っ直ぐクラッシュバリヤに突っ込んだ。平手はマシンを降りて無事な様子だが、1000kmの終盤はアクシデントが多発し、壮絶なサバイバル戦になっていく。

 セーフティカーが2度入ったこともあり、最後の1000kmながら日没の影響で18時28分終了の時限レースに。最後は2番手に20秒差のアドバンテージを12秒差まで縮められながら、Epsonがトップチェッカー。ナカジマレーシングとしては2007年以来となる10年ぶりの勝利を挙げることなった。

 2位にはMOTUL GT-Rが入り、レクサスLC500の圧倒的な強さがこれまで見られたなか、MOTUL GT-Rがランキングトップに。3番手には中盤と終盤に圧巻の追い上げを見せたRAYBRIGが入り、日が沈みかけた夕暮れの中、大きな拍手に包まれながらウイニングランが行われた。