アメリカ中西部にあるゲートウェイ・モータースポーツパークは、イリノイ州とミズーリ州の州境に近い。ここでインディカー・シリーズが開催されるのは2003年以来なので、佐藤琢磨にとっては当然初めてのコースになる。
事前テストに琢磨は参加していたが、琢磨はマシンのトラブルなどで10周余りの走行で終わっており、ここでのレースに不安を抱えていた。
しかし今回のレースを迎えるに当たり1.2マイルの路面は再舗装され、より安定したグリップが期待されていた。実際にプラクティスが始まると琢磨は、好感触を得る。
金曜日のフリープラクティス1回目で8番手のタイムをマーク。
「やっぱり路面はこうでないとね(笑)。しっかりマシンがグリップすると、マシンの方向性を掴んで、セッティングもしやすくなるし、この1時間は順調にマシンのセットアップが進みました。予選は6番手以内にいければ良いんじゃないかな?」と余裕も生まれた。
ポコノでの予選はアテンプトがいちばん最後で好条件だったが、このゲートウェイではくじ運が悪く6番目。琢磨にとっては不利な状況だった。それでも琢磨はウォームアップ走行から飛ばし、シモン・パジェノー(チーム・ペンスキー)に続く2番手のタイムをマークして見せた。
それ以後、琢磨のタイムを上回れたのはペンスキー勢とエド・カーペンターのみで、琢磨は6番手のグリッドを手に入れた。今回もホンダ勢最上位のグリッドで、ミド・オハイオから3戦連続でホンダ勢最上位の予選ポジションである。
「良い予選だったと思います。ホンダ勢の最高位ですし、6番手で喜んでちゃいけないけど、1時間のプラクティスだけでここまで順調に仕上げられましたからね。次のプラクティス(FP2)で決勝に向けていいフィーリングに仕上げられれば、レースは期待できると思います」と琢磨は言う。
陽が落ちて暗くなった21時過ぎに行われたFP2で、琢磨は7番手のタイムをマーク。マシンを降りてからも意気軒昂だ。
「オーバルで決勝レースまでにこんなにうまくマシンを仕上げられたのは、初めてかもしれないですね。前の路面だったら、どうなるか心配だったんですけどね」と笑う。決勝に向けたの期待も高まるばかりだ。
土曜日のレースは21時近くにスタートと、琢磨にとってもこんなに遅く始まるレースも初めてだった。気温も下がり、当然路面温度も下がってくる。
レース前のパレードラップでは、ゲートウェイのファンに向けてトリプルファイル(3列縦隊)で走行。インディカーのカムバックをアピールすると場内からは大きな拍手が沸き起こる。
2列縦隊に戻ってレースがスタートするとポールポジションのウィル・パワー(チーム・ペンスキー)がターン2でスピンアウト! それを避けようとイン側にマシンを向けた琢磨は「アクセルを戻したけど、もう出口が見えて避けられる状態だったからいけると思った」時に後続のマシンに当てられる形で外側のウォールにヒット!
自走してピットへと戻ったが、マシンの修復は不可能で万事休す。琢磨は短いレースを終えた。
「本当に残念でしたね、いい車に仕上がってたのに。グリッドで(スコット)ディクソンとグラハム(レイホール)のマシンを見て、さらにダウンフォースを削ったんです。今日はディクソンともいいレースになるはずだった。本当にもったいないです……」
レースらしいレースも出来ずに、ゲートウェイを後にすることになってしまった琢磨。十分にポイントを挽回出来る可能性があっただけに残念でならない。これでランキングも8位となった。
2017年のオーバルレースはこのゲートウェイで終了。残り2戦ワトキンスグレンとソノマはロードコースでのレースだ。どこまで琢磨がランキングを挽回して今シーズンを終えることができるだろうか。