ゲートウェイ・モータースポーツパークの1.25マイルのショートオーバルで開催されたインディカー・シリーズ第15戦。26日に行われた決勝レースでは、ランキングトップのジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)がチームメイトバトルを制し、今季4勝目を挙げた。予選6番手から挑んだ佐藤琢磨(アンドレッティ・オートスポート)は、スタート直後に他車のスピンに巻き込まれ、悔しいリタイアに終わった。
2003年以来の開催となったイリノイ州マディソンのゲートウェイ・モータースポーツパークでのインディカーレース。予選ではチーム・ペンスキーがウィル・パワーを先頭にトップ4を独占した。5番手はエド・カーペンター・レーシングのエド・カーペンターで、シボレーはトップ5をスイープ。ホンダ勢トップは佐藤琢磨(アンドレッティ・オートスポート)の6番手だった。
土曜日の夜9時前に248周のレースはスタート。フロントストレッチ前のグランドスタンドは満員だ。照明を浴びた21台のインディカーがグリーンフラッグを受ける前のラップ、予選17番手だったトニー・カナーン(チップ・ガナッシ)がターン2で単独スピンし、クラッシュ。
フルコースコーションが出され、レースのラップ数もカウントが始まった。
事故処理が終わって6周目にリスタート。ターン1から2にかけてニューガーデンがアウトからトップに躍り出る。ターン2出口で2番手に下がった直後のパワーがスピンしウォールにクラッシュ。その背後で琢磨とカーペンターが接触し、一瞬にしてトップグループから3台がリタイアした。
18周目にレースが再開されるとニューガーデンがリードを続けた。しかし、100周を回ったところでのピットストップでニューガーデンはピット作業に僅かだったが時間がかかり、トップは予選3番手だったエリオ・カストロネベス(チーム・ペンスキー)に変わった。
カストロネベスのリードは50周以上に渡って続いたが、次のピットストップでエンジンをストールさせて大幅にタイムロス。再びトップはニューガーデンのものとなった。これで今日の勝負は決まったと思われた。ニューガーデンは安定して速く、トップを走る彼をパスするのは難しいと見えていたからだ。
しかし、最後のピットストップで今度はシモン・パジェノー(チーム・ペンスキー)がトップを奪う。ニューガーデンは今日二度目のピットストップでのポジションダウンを喫してしまう。
終盤になってトップに躍り出たパジェノー。彼のシーズン2勝目でますますタイトル争いは混沌とするのか……と思われたが、ニューガーデンは残り周回数が30周という終盤戦でパジェノーのインへと飛び込んだ。
彼らはチームメイト同士だが、この時に2台は接触。パジェノーはあわやアクシデントとなるところをなんとかセーブ。しかし、トップはニューガーデンに奪われ、さらに2番手のポジションもポイントスタンディング2位につけているスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ)の手に渡ってしまった。
ニューガーデンはパジェノーの攻撃を退けるので精一杯だったディクソンとの差を広げ、悠々と今季4勝目のゴールへと飛び込み、ディクソンに対するポイントリードはレース前の18点から31点に広がった。ポイント3番手のカストロネベスはトップと42点差、同4番手のパジェノーは43点差。そして、ポイント5番手のパワーはトップとの差が42点から83点にまで広がってしまった。
ニューガーデンはレース後、「最高のレースになった。カーナンバー2のクルーたち、そしてチーム・ペンスキーを誇りに思う。彼らはベストのレーシングマシンを僕らに用意してくれている。彼らの一員として戦えることは本当に楽しい」
「今日、僕らはまたしてもPPGがスポンサーのマシンで優勝を飾った。今シーズン、初めてそのカラーリングで走ったミド・オハイオで僕らは優勝した。今日の優勝でまた特別な力を手に入れることができたかもしれない」
「レース終盤のシモン(・パジェノー)とのバトルはエキサイティングだった。彼はスペースをくれた。だから突っ込んだ。ぶつかる気はなかったが、接触してしまった。彼がクラッシュせずに3位でフィニッシュしてくれてよかった。そして、僕は優勝でまたポイントを多く稼げた。攻撃的に戦い、優勝を目指すのみ。そういう態度こそがチャンピオンシップ獲得に繋がる」と話した。
その一方でパジェノーは、「ジョセフに対する信頼を失った。尊敬もだ。彼は僕に敬意を払っていない。スコット・ディクソンが誰かチームメイトに今日の僕と同じような目に合わされたのを見たことがない」
「僕らはチームメイトのことを配慮しながら戦わねばならない。レースをフェアに戦うことのできる間柄になっていることが必要だ。特にオーバルでは。アクシデントが起こったら大変危険だからね」
「チームメイトでも当然レースをしていいんだ。しかし、オーバルではアクシデントが起こると危険であるということも十分に理解していなければならない。今日あそこで僕らふたりがクラッシュしていたら、ディクソンが優勝を手に入れていただろう。今、僕はニューガーデンと話をする気には慣れない。しかし、キッチリ話をしなければならない」とニューガーデンのドライビングを強く非難した。
ディクソンは粘り強い走りで2位フィニッシュ。
「今日は表彰台は難しいと思っていた。トップ10入りでもハッピーなはずだった。残る2レースは僕が得意なコースだし、なんとか5回目のタイトル獲得を達成したい」とディクソンは話した。
チーム・ペンスキー、そしてシボレーが優位を保った中、トラブルを避け、ハイペースを保ってディクソンは4~5位でのフィニッシュを狙っていたが、上位陣がミスで自滅し、与えられた少ないチャンスを確実に掴んだディクソンが2位でのゴールを達成した。
琢磨はポイントスタンディングが8番手に一歩後退。残り2戦でランキングを再び上位に戻すことを目指す。
「マシンが良かったはずなので、レースがあんなに早く、アクシデントで終わってしまって本当に残念」と琢磨は悔しがっていた。
「残る2レース、ワトキンス・グレンとソノマのロードコースで好成績を残し、ポイントスタンディングを上位に戻したい」と意気込みを語った。