バンドーンに搭載されているエンジン(ICE)に、金曜日の夜、データ上の問題が発見されたため、ホンダは徹夜でバンドーンのパワーユニットの交換作業を行なった。交換したのは、ICEとそのICEに取り付けられているMGU-K、そしてターボとMGU-Hだ。
ICEとMGU-Kはそれぞれ6基目で、ターボとMGU-Hはともに9基目となるため、バンドーンはすでに受けている40番手降格(パワーユニット35番手+ギアボックス5番手)に加え、新たに25番手降格のペナルティが科せられ、合計65番手の降格となった。
40番手降格の段階で最後尾スタートが決定していたので、それが65番手になっても状況に変わりはない。問題は、交換した6基目のICEが5基目のICEとして投入されたスペック3.6ではなく、スペック3.5に積み替えられたことだ。
長谷川祐介ホンダF1総責任者は木曜日の段階で「スペック3.5もスペック3.6も、それぞれスペアがある」と語っていたので、ホンダはあえて3.6ではなく、3.5に交換したことになる。つまり、3.6に信頼面でなんらかの不安があったことを示唆する。
フリー走行3回目を終えた時点では、まだホンダに確認がとれていないので、その点はわかり次第、あらためて報告したい。
ホンダの信頼面の不安といえば、これまではMGU-Hだったが、ここ数戦はホンダはMGU-Hにトラブルを起こしていない。その理由を長谷川総責任者は「MGU-Hそのものの改良だけでなく、オイルシステムも改善してきたことも関係しています」と説く。
というのも、ホンダのMGU-Hのトラブルは最初はシールからの水漏れが主だったが、その後はベアリングが固着するという問題に悩まされた。そして、その原因がオイルだった。
「オイルタンクのオイルが吹いてしまう。いわゆるオイル吹きという症状によって、ターボ内にオイルが入って、いろいろと悪さをしてしまっていました。ベンチではオイルが吹くような状況では走らせることはないので、気がつかない問題でした」
「じつはこの問題は、ウインターテストでは減速中にオイルがうまく循環しないで油圧がダウンしてしまう、いわゆるオイルスパイクに悩まされたので、油圧をダウンさせないため、オイルの量を増やしたんですが、今度はそのオイルが吹いてしまうという問題に悩まされることになったんです。ベンチでは起きない現象で、トラブルを潰すうえで、オイルシステムを見直しました」
オイルタンクから吹き出したオイルが侵入したのはMGU-Hだけでなく、エンジンの燃焼室にも入ったいたという。改良されたオイルシステムが投入されたのは、イギリスGPから。アロンソはイギリスGPからスペック3を投入したため、オイル吹きの被害を被らなかったが、バンドーンはオーストリアGPからスペック3を使用しており、すでにオイル吹きの被害を受けていた。そのため、ホンダはバンドーンのスペック3の信頼性に関して、不安を抱えていた。
それもホンダが、バンドーンのエンジンのみ3.6に変えた理由となっていた。だが、ホンダはベルギーGPの土曜日になって、その3.6の使用を断念。いったい、何があったのか?