2017年08月26日 09:43 弁護士ドットコム
「北斗の拳」などで知られる漫画原作者の武論尊さん(70)がこのほど、出身地の長野県佐久市に総額4億円を寄付した。武論尊さんは「進学が困難な若者が勉学に励み、夢をかなえてほしい」と話したという。
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佐久市は、武論尊さんの寄付金をもとに給付型奨学金の基金を創設し、来年度から給付をはじめる。市在住の大学進学者が対象になる。毎年10人を選考し、1人あたり100万円を4年間給付する予定だ。
個人で4億円というとかなり高額の寄付金といえるが、贈与税などは発生しないのだろうか。また、何らかの税金控除などがあるのだろうか。大塚英司税理士に聞いた。
寄附した場合、どういった税金控除があるのか。
「個人が国や地方公共団体、公益法人などに対し寄附をした場合には、寄附金控除として所得税において所得控除や税額控除、住民税の計において税額控除を受けることができます。以下に計算式を挙げますが、ややこしいと思った場合はとりあえず読み飛ばしてください」
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所得税
<所得控除>
次のいずれか低い金額 - 2千円 = 寄附金控除額
イ その年に支出した一定の寄附金の額の合計額
ロ その年の総所得金額等の40%相当額
<税額控除>
政党等や認定NPO法人等、公益法人等に対する寄附金のうち一定のものについては、その年分の所得税額の25%を限度に所得控除に代えて、税額控除を有利選択することができます。
(その年中に支払った公益法人等に対する一定の要件を満たす寄附金の額の合計額※(1)– 2千円)× 40%※(2) = 公益法人等寄附金特別控除額
※(1)その年分の総所得金額等の40%相当額が限度(2)政党等寄附金の場合には30%
住民税
<税額控除>
(1)基本控除(都道府県、市区町村が指定する寄附金)
(寄附金の額の合計額※ – 2千円)×10% = 住民税控除額
※所得金額の30%が限度
(2)特例控除(ふるさと納税)
(寄付金額の合計額 – 2千円)×(90%-所得税率)= 特例控除額※
※住民税所得割の20%が限度
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贈与税は発生しないのか。
「贈与税の納税義務者は、贈与によって財産を取得した個人(自然人)ですので、市が寄附金を受け取った場合には贈与税は課税されません。
また、奨学生が受ける奨学金については、貸与型の奨学金には贈与税はかかりません。一方で給付型の奨学金の場合には、形態や金額によっては贈与税が課されるケースもありますが、1人当たり年間110万円以下であれば贈与税はかかりません」
今回の武論尊さんの場合は、どの程度の控除がされるのか。
「武論尊さんの所得金額がどれくらいかは不明ですが、個人事業として行われている場合には、おそらくは所得税の最高税率である45%が適用されると推測できます。
仮に所得金額が1億円であり、4億円の寄付金を支払った場合には、所得税(復興税を含む)が約1838万円、住民税が約500万円軽減され、合計でおよそ2300万円程度の税金を減額することができます(寄付金以外の各種控除等は考慮していません)」
地方自治体などに寄附する際、気をつけるべきことは。
「寄附金控除等を受けるためには、寄附をした年の翌年3月15日までに確定申告が必要となりますが、申告の際には、寄附をした地方公共団体から発行される領収書の添付が必要となりますので、大切に保管しておく必要があります。
また相続によって取得した財産を寄附した場合において、一定の要件を満たしたときは、その寄附をした財産や支出した金銭は相続税の対象としない特例があります」
【取材協力税理士】
大塚 英司(おおつか・えいじ)税理士
中央大学商学部卒業。税理士法人トゥモローズ代表税理士。世界四大事務所であるEY税理士法人出身。大企業の法人税務から相続・不動産等の個人税務まで幅広くサポートできる稀有な存在の若手税理士。
事務所名 : 税理士法人トゥモローズ
事務所URL:http://tomorrowstax.com/
(弁護士ドットコムニュース)