スタンドの指定席、そしてパドック入場券の前売り券がすでに完売してしまったという、スーパーGT第5戦鈴鹿1000km。46回目で最後となる1000kmの注目どころは多々あるが、今回GTデビューを迎えるジェンソン・バトン(MOTUL MUGEN NSX-GT)と小林可夢偉(WedsSport ADVAN LC500)のふたりを抜きには今回の鈴鹿1000kmは語れない。
バトンの人気ぶりは、金曜日のパドック裏を見ればすぐにわかる。MOTUL NSX-GTのパドック裏には多くのファンが集まっており、警備員が交代制で常駐。金曜日からすでに大きな注目を集めており、土曜、日曜とその注目度が加速していくことが予想される。
「そうですね、ちょっと荷が重いですね(苦笑)」と、冗談めかして話すのはMOTUL NSX-GTの中嶋大祐。英国F3にも参戦していた大祐は英語が堪能で、チームメイトとしてだけでなく、今回はバトンの通訳を兼ねてチームスタッフとのコミュニケーションの橋渡しもしている。
「ジェンソンとは昨日、イベントがあってその時に話しました。前戦のGT富士のレースも見ていて『どんなタイヤを使ったんだ?』とか『どんな感触だった?』とか、たくさん聞かれましたね。スーパーGTへの興味が強いというか、ものすごい勉強熱心なドライバーです」と、バトンの様子を語る大祐。
「今週末はチームが注目を浴びると思うので一生懸命頑張って、決勝勝負だと思っていますので、土曜日の予選結果に慌てることなく、日曜日にいい結果が出せるように3人のドライバがー協力して頑張ります」と、今週末の抱負を語った。
そんな注目に応えるように、チーム無限もバトンがパフォーマンスを存分に発揮できるようにいろいろと工夫を凝らしている。その中でも一番の驚きは、バトン用に専用ステアリングを制作したこと。
手足が長いバトンは、武藤英紀、大祐とはシートポジションがどうしても異なってしまう。シートはスライド式なので対応が可能だが、ステアリングはポジションを変えられないため、ドライバー交代の際にステアリングごと交換して、バトンの体格に合わせるのだ。
表面の見た目は通常のNSX-GTと同じデザインながら、パドルシフト面のアタッチメントが短くなっている、この1戦限定(?)のバトン専用ステアリング。いったい制作費はいくらくらいなのか……恐る恐るチームスタッフに聞いてみると、「100万円以上、掛かっています」とのこと(!)。この1戦に懸けている、チーム無限の意気込みが十分すぎるほど伝わってくる。
その緊張感の漂う無限のパドック裏とはまた違った意味で異なるのが、バトンと同じく今回の鈴鹿1000kmでスーパーGTデビュー戦を迎えるWedsSport ADVAN LC500の小林可夢偉。さすが百選錬磨の可夢偉、注目を浴びるGTデビュー戦にも「頑張って仕事をするだけです」と、至ってリラックス。
すでに坂東正敬監督が可夢偉を第3スティントと第6スティントに起用することを明言しており、バトンとは鈴鹿で3位表彰台を争ったF1での直接バトルの再現を期待してしまうが、そんなメディアの妄想にも、「勝手に妄想していてください!(笑)」と、可夢偉節で切り返す。
「テストで乗ることができましたが、まだGTマシンに慣れていないので、本番でレースをしながら慣れていきたいと思います」と今週末の抱負を語った可夢偉だが、レースでふたりが直接バトルをするシーンは見られるのか。レースの勝ち負けだけでなく、明日からの鈴鹿1000kmはとにかく、話題と楽しみが多い。