ホンダがベルギーGPに新しいパワーユニットを投入することはすでに伝えられている。フェルナンド・アロンソがスペック3.5で、ストフェル・バンドーンはスペック3.6だ。
では、この違いはなんなのか。ホンダF1プロジェクト総責任者の長谷川祐介氏は次のように説明する。
「スペック3.5はエンジン本体ではない部分、ペナルティが課せられない部分を変更しました。つまり、フェルナンド(・アロンソ)のエンジン本体はハンガリーGPで走ったものと同じです」
長谷川総責任者は明言を避けたが、ペナルティを受けずにアップデートできる部分というのは、吸気系か排気系が考えられる。
「ただ、それでも0.5分に相当する進化を遂げていて、ラップタイムでいえば、0.1秒は速くなっています」
これに対して、バンドーンのマシンに投入されたスペック3.6は35グリッド降格のペナルティを受けたように、エンジン本体を改良してきた。
「これはパフォーマンスアップというよりも、信頼性を向上させたものです。もちろん信頼性の改善にともなって、若干ではありますが、パフォーマンスも上がっていますが、速さの面では3.5と大きな違いはありません」
では、なぜ2台そろってスペック3.5、あるいは3.6を投入しなかったのだろうか。それは、スペック3が投入された時期が2人で微妙に異なるからだ。
「なぜストフェル(・バンドーン)のホームグランプリのベルギーGPにあえてペナルティを受けてでもスペック3.6を入れたのかというと、信頼面でのリスクを負いたくなかったからです。しかも、きちんと走りきれば、イタリアGPよりもベルギーGPのほうがポイントを取れる可能性がありますから」
バンドーンがスペック3を入れたのは、第9戦オーストリアGP。これに対して、アロンソは第10戦イギリスGPだった。バンドーンは今回のベルギーGPが4戦目。
本来なら、距離的に1基で4戦は走り切らなければならないが、スパやモンツァはエンジンに対しする負荷が大きく、4戦目として使用するにはできれば避けたいコースだったことも、ホンダにとってはスペック3.6を入れる理由となったのではないだろうか。
「基本な考えとして、ホンダとしては少なくともレースを走行している最中に問題を起こしたくない。さらに、もし一か八かでハンガリーGPで走らせたスペック3をベルギーGPでブローさせてしまうと、いわゆる金曜日エンジンとしてストックすることができないため、今後エンジンのやり繰りという面でも厳しくなります」
これが、ベルギーGPでホンダが、アロンソにスペック3.5を、バンドーンにスペック3.6を投入した理由だった。