8月25日で7回目を迎える「プレミアムフライデー」。しかしネット上では「プレミアムフライデーとか全然気づかなかった」という声も多く見られる。
そんな中、25日放送の「クロノス」(TOKYO FM)では「定時退社協会」が紹介された。同協会の理事長で、クラフトビールの製造販売を行うヤッホーブルーイング代表取締役社長の井手直行氏は「『早く帰って美味しいビールを飲もう』というメッセージを伝えたくて作りました」と説明した。
「経産省とのコラボの話が出ていて、これね、世の中変わりますよ」
同協会は、上司が先に帰らないと帰れなかったり、帰り間際に仕事を頼まれたりする"帰りにくい空気"があるとして「その雰囲気を打破してユーモアを持って、もっと早く帰れる空気を作ろう」という提案をしている。
今年5月には大手企業9社からの参加者24人を対象に「第1回定時退社訓練」を実施した。内容は、早く帰るために速くタイピングをしたり、ホワイトボードを速く消したり、上司に気づかれないようにそっと帰るため、物音を立てないように首に鈴をかけて退席したりする、というもの。
訓練終了後は同社のクラフトビールが振る舞われた。訓練の様子を撮影した動画は26万回再生されたという。井手社長は「この動画だけで企業の体質改善になるとは思わない」とした上で、
「楽しく早く帰れることもあるんじゃない?と問題提起することで世の中を変えられたらいいなあと思っているんです」
と語っていた。この動画は「会社の先輩にこの動画を見てもらって一緒に早く帰ろう」というコミュニケーションツールとしても使えるという。さらに番組内で、
「我々の取組みを見て経産省の人たちが会いたいと言ってきて、この間ディスカッションしてきたんですよ。一緒にコラボやりましょうって話が出て、これね、世の中変わりますよ」
と意気込んでいた。
「協会発足後、『面白いから応援したい』という声が寄せられた」
実際、「定時退社協会」を運営している同社では、どのようなプレミアムフライデーが実施されているのだろうか。キャリコネニュースの取材に、広報担当者は「プレミアムフライデーは特に何もしないです」と話す。
「発足前から早く帰れる空気があったんです。仕事に余裕があれば、定時前に帰ることも可能なんですよ」
なぜそのようなことができるのだろうか。今でこそ12年連続増収増益になっている同社だが、2008年頃は「倒産しそうな会社」だったという。社内の雰囲気に危機感を覚えた井手社長はチームビルディングを学び、社内環境改革に務めた。
その一環として従業員が帰りやすい状況を作るため、時間に余裕があるときは井手社長自ら定時前に帰宅するようにしたという。今では「先週忙しかったので、今週は早めに帰ります」という自己申告のみで定時前退社も可能だそうだ。また子どもの送り迎えや銀行に行くため等の定時前退社も推奨されているという。同担当者は、
「プライベートが充実することでモチベーションが上がり、生産性も上がるようになりました。この取り組みをさらに広めるため『定時退社協会』を設立し、ビール会社ならではの広め方としてSNSで『#定時退社ビール』と呟いてもらう、ということをしています」
と話す。定時退社協会発足以降、爆発的に同社ビールが売れたということはない、というが「お客様から『面白いから応援したい』という声は多く寄せられるようになりました」と好評のようだ。経産省とのコラボに関しては、
「本当は言ったらダメなはずだったんですけど……。でも後で確認したら経産省の方に『大丈夫です』と言ってもらえて安心しました。具体的に話が進み次第、内容を発表していきたいです」
と話していた。