2017年08月25日 11:13 弁護士ドットコム
育児休業を取得しながら一部働く「半育休」という働き方が提唱されている。NPO法人「フローレンス」に在職中の橋本吉央さん(「スゴいい保育」編集長)が、自身の経験をブログ「パパ半育休からの時短なう」( http://ysck-hashimoto.hateblo.jp/ )にまとめ、育児休業中であっても、限られた時間内であれば働くことが可能だと紹介している。
【関連記事:ビジネスホテルの「1人部屋」を「ラブホ」代わりに――カップルが使うのは違法?】
Twitterでは「こういう動き、もっと広がっていってほしい」といった声もあがっている。男性の育児休業取得率があがらない背景として、長期間、仕事から離れることへの不安の声が聞かれるが、半育休制度が浸透することで、育児休業の取得率が高まる可能性もありそうだ。
育児休業中にこうした「半育休」制度を活用して働くことは誰にでもできるのだろうか。法律上はどうなっているのか、谷口真理弁護士に聞いた。
「1歳未満の子どもを養育する労働者は男女問わず、会社への申し出により、1歳又は1歳2か月(場合によっては1歳6か月)まで、育児のための休業が認められています。この間、雇用保険の給付として育児休業給付金を受け取ることができます。
なお育児休業は、フルタイムの正社員にかぎらず、雇用保険に加入し一定の要件を満たしている場合、パート、派遣、契約社員でも取得は可能です。同じ事業主に1年以上雇用されていること、子どもの1歳の誕生日以降も引き続き雇用されることが見込まれるなどの要件を満たす必要はあります」
冒頭に紹介した「半育休」のように、育児休業中に働いても、育児休業給付金を受け取ることがなぜできるのだろうか。
「育休期間中でも勤務はできるとは言え、職場に完全復帰して会社から給与を受けると育休給付は受けられません。
2014年(平成26年)10月の育児休業給付金制度改正により、勤務日数に関わらず、月に80時間以内の勤務であれば、育休中勤務し会社から給与をもらいつつも、継続して育休給付金を受け取ることができるようになりました。
ただし、給付金と給与を合わせた額が育休前月給の80%相当額を超える場合は、超える分につき給付金が減額されます。そのため、給与の額だけで育休前月給の80%相当額以上になる場合には育休給付金は支給されない点に注意が必要です」
谷口弁護士は「半育休」という試みをどう評価するのだろうか。
「会社との話し合いにより、毎日数時間の在宅勤務など、短時間ずつでも可能な仕事ができれば、仕事の実績を積みながら、勤務に応じた賃金の支払と育休給付金の両方を受けとることができます。
結果として、女性が円滑に職場復帰することや、長期の勤務ゼロに抵抗があり周囲の理解を得ることもまだ容易でない男性の育休取得促進が期待されます」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
谷口 真理(たにぐち・まり)弁護士
第二東京弁護士会所属。一橋大学卒業後、司法試験に合格。 一般民事案件を中心に企業法務案件にも携わり、東京都千代田区内の2ヶ所の法律事務所での勤務を経て、桜花法律事務所を開設。著書「新・労働事件法律相談ガイドブック」(第二東京弁護士会・共著)
事務所名:桜花法律事務所
事務所URL:http://www.oukalaw.jp