スーパー耐久シリーズ第5戦『SUPER TEC』が9月2日(土)、3日(日)に富士スピードウェイで開催される。今年は10時間レースとして、現在の国内レース最長の戦いとなる。
今年の富士伝統のレース『SUPER TEC』は昨年の9時間よりも1時間延び、より過酷なレースになるのは間違いない。そんな中で、年に一度の同窓会、フェスティバル的に楽しもうというドライバーも決して少なくない。そこでスーパーGTにも出場するドライバーたちに、スーパー耐久の魅力や楽しみ方、10時間耐久レースへの意気込みを伺った。
まず語ってもらったのは本山哲だ。日本のトップカテゴリーで輝かしい活躍をしてきた本山は、昨年の『SUPER TEC』にスポット参戦。そこで魅入られたのか、今年からST-3クラスに34号車SKT team motoyama Z34でフル参戦。第2戦SUGOでは、3位表彰台に上がっている。
「長いレースは24時間レースを含めて何回も出ていますが、長ければ長いほど内容がおもしろいレースになりますよね。そういった意味でも、『SUPER TEC』は参加する人も観る人も、みんなで楽しめるレースです」
「昨年の9時間レースは3位でしたし、長い時間走るのでドライバーとしては暑さが厳しいですが、表彰台には上がりたいと思っています。今年はスーパーGTと同じでS耐もレクサスが速くて……(笑)。2、3秒速い状況ですが、シリーズにも参戦しているので結果も出したいと思っています」
本山選手同様にST-3クラスを戦う若手ドライバーの注目株、山下健太。ドライブする62号車DENSO Le Beausset RC500は「SUPER TEC」との相性は抜群で、一昨年デビューウインを飾って、昨年も優勝と負け知らず。3連覇への挑戦には、不安もあるという。
「10時間ともなるとブレーキとかをいたわって走らないと保たないかもしれないし、他のパーツもいたわりが必要です。普段の3時間とは違う部分も要求されるレースになるでしょうね」
「8時間、9時間のレースでしたら、今にして思えば、あんまり他のレースと違う印象はなかったですね。クルマもそれほどいたわらなくても大丈夫だったし、他のクルマもスプリントみたいなレースをしていたんで、そんなに9時間だからといって意識はしていませんでした。でも、1時間増えるとどうなるんですかね? 10時間なんてそんな長いレース、僕は走ったことないので、わからないというのが本音です」
不安をこぼしつつも山下が狙うのはもちろん……。
「僕らのクルマは3年目で、かなり仕上がってきて、タイヤにも優しいし、ブレーキの信頼性も高いから、ここまでの戦いの印象としては、そんなに不安はないということもあります」
「富士は8時間、9時間と連覇しているので今年も勝ちたいですね。もちろんチャンピオンも獲りたい! ただ、今は強力なライバルも増えているから、そんなに楽な戦いにはならないですよ」
志はあくまで高く、ということなのだろう。最後にスーパー耐久シリーズの印象について語ってもらった。
「雰囲気はピリピリし過ぎず、とはいっても、みんなプロフェッショナルなので、楽しくプロのレースができるのが面白いところなんです。それに、こんなにいっぱい混戦するカテゴリーは他にはない。僕らのST-3はちょうど真ん中で、全クラス混走の時には後ろも見なければいけないし、抜かさなくてはいけないので、そこはけっこう勉強になります」
「重いクルマを乗ることもそんなにないので、そこも勉強になりますし、特にST-3はみんなレベルが高いので、普通に自分に勉強になるレース。GTとかスーパーフォーミュラでは味わえない雰囲気で、勉強になるという感じのシリーズです」と山下。
今年から新設されたST-TCRクラスで98号車Modulo CIVIC TCRをドライブする加藤寛規は、開幕戦でデビューウインを達成。その後も2勝を挙げ、「SUPER TEC」も勝てば、最終戦を待たずしてチャンピオンが決定する。
「ここまで3時間ぐらいのレースを戦っているんですけど、僕らのST-TCRクラスは、いつもスタートから全然ばらけなくて集団でずっと走っているので、たぶん10時間もそんな厳しいレースがそのまんま続くんじゃないかと思っています」
「ただ、これまでのレースを見ている限りでは、必ずしもどのクルマがいつ速いというわけではない。富士ではひょっとしたら、アウディがちょっと速いのではないかと思っています。そこをピット戦略だったり、オーバーテイクされる、する時のロスを減らしたりして、着いていきたいですね」
「あとは10時間なので台数もすごく多いですし、本当にお互い当たらないよう、ちゃんとチェッカーを受けられるように最低でも持っていかなければいけない。ドライバーはかなりプレッシャーがかかると思います」
「チームもピットストップが増えるので、そのあたりだいぶ取り組んでいますし、そういう意味では天候も読めないし、先が読めないレースですね。簡単にいけるなんて言わず、逆に僕らは気を引き締めて戦いますよ」
「クルマの耐久性はわからないところなんですよ。エンデュランスパッケージというわけではないですし、本来はスプリントしかやっていないクルマなので、いきなり10時間とかやって、どこまで保つんだろうっていうのが正直なところですね」
「そこを本当に、クルマをいたわりながらでもタイムを上げるというのがドライバーの仕事になっちゃうし、そりゃ大変ですよ。富士に限らず、夏の長いレースでは天候がずっと安定していることがあんまりなかったので、今年も荒れちゃうのかな、と思ったりもしていますよ。ただじゃ済まないなって感じですね」
必勝宣言が出るのかと思いきや、意外なほどに謙虚な加藤。しかし、それは長丁場のレースの難しさ、怖さを知り尽くしているからなのだろう。そんな加藤にも山下同様、現在のスーパー耐久の印象を語ってもらった。
「まずやっている側としては、ジェントルマンドライバーのレベルも最近は上がっていて、抜きつ抜かれつのマナーや勘どころがつかめてきて、お互いに安心して行ける部分が多くなりましたね。変なコンタクトが少なくなったかな」
「あと、お客さん目線としては、参加台数も増えているし、前と違って有名なドライバーもけっこう出てきて、それなりにファンの人も足を運んでくれるようになったし、参戦車種もどんどん増えている傾向にあります」
「今後も国産だけじゃなくて、海外のクルマも増えてくると思うので、すごくバラエティに富んで楽しいですよね。サーキットにお客さんが来ていただくことに関して、常に何かのクルマが走っていますから、そういう意味では、退屈させないレースじゃないかと思います」
現在の国内公式レースとしては最も長い10時間耐久のスーパー耐久第5戦富士『SUPER TEC』。スーパーGTでも活躍するドライバーたちも魅了する最長耐久レースを、ぜひ富士スピードウェイで味わってほしい。