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声優・保志総一朗、『最遊記』新シリーズでも“あの頃のまま” なぜ少年役がハマり続ける?

2017年08月24日 10:03  リアルサウンド

リアルサウンド

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 1997年の漫画連載スタートから絶大な人気を誇る、峰倉かずや原作の『最遊記』シリーズ。今年は連載開始から20周年ということもあって、記念プロジェクトとしてアニメ『最遊記RELOAD BLAST』が現在放送中だ。十数年ぶりの地上波放送かつ、メインキャストも過去のテレビアニメシリーズと同じ顔ぶれということで、当時リアルタイムでアニメを視聴していたファンは大いに懐かしさを感じていることだろう。


参考:声優・石田彰『昭和元禄落語心中』の七変化ーー青年、老人、女役までこなす“神業”に迫る


 新シリーズを見ていて何より驚いたのが、『幻想魔伝 最遊記』からおよそ20年の月日を経たにもかかわらず、声優たちの演技が良い意味で“あの頃のまま”だったことだ。登場人物が作中でほとんど年を取らないアニメ作品において、声優もキャラ同様若々しい声を保ち続けることはとても重要になる。そんなわけで、久しぶりの『最遊記』シリーズも放送前は少しドキドキしていたのだが、長い時を経てもキャラクターのイメージがまったく変わらない声優陣の演技に触れ、大きな安堵感を覚えた。特に、三蔵一行の中で最年少の悟空は相変わらず無邪気でかわいらしいハスキーボイスだったため、悟空役の保志総一朗の年齢を確認して再三びっくりしてしまった(保志はメインキャストの中では最年少ながら、それでもなんと今年45歳!)。


 一般的に、一度ヒットすれば息が長いと言われている男性声優だが、保志も1995年にデビューしてから現在に至るまで、『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』のキラ・ヤマト役や『ひぐらしのなく頃に』シリーズの前原圭一役といった少年役を中心に、さまざまなキャラクターを演じてきた。雑誌『アニメージュ』が企画する「アニメグランプリ」でも、声優部門で過去に3度グランプリを受賞している。


 現在では、声優業以外に歌手などのアーティスト活動を兼業している声優も珍しくはない。しかし、保志はデビューしてしばらくの間は、音楽活動に本腰を入れることに抵抗を抱いていたという。だが、「年を重ねていくと新しい挑戦もしたくなった」そうで、2012年にシンガーとして1stアルバムをリリース。そこからはソロライブも開催するなど、本格的な音楽活動をスタートさせた。


 40歳を目前にしても、新しい環境に身を投じることを恐れない。生まれ持った若々しい声色のみならず、そうしたチャレンジングな姿勢を忘れないことが、保志が今なお少年役を生き生きと演じ続けている秘訣なのかもしれない。


 今期は『最遊記』以外に、『潔癖男子!青山くん』や『戦姫絶唱シンフォギアAXZ』にも出演している保志。『シンフォギア』シリーズでお馴染みの緒川慎次は比較的落ち着いた大人の役どころだが、『潔癖男子!青山くん』の坂井一馬は、やや悟空の立ち位置に近いおふざけ要員だ。とはいえ、今期の配役の中では、圧倒的に悟空が天真爛漫なキャラクターだろう。


 悟空はとにかくいつもハイテンションでエネルギッシュなため、保志自身、過去のインタビューで「(悟空を)演じるうえではエネルギーが相当必要」と語っている。しかし、そんな保志も、プライベートでは悟空さながらのマイペースな天然キャラで知られている。今年6月に行われた『最遊記RELOAD BLAST』の先行上映会でも、保志は司会を担当したものの、終始ほかのキャストたちにいじられていたという。また、猪八戒役の石田彰とはほかに共演作品も多いこともあって非常に仲が良い……というよりも、「人付き合いが苦手」と自他共に認める石田が唯一心を開いているのが保志だそうで、ファンも彼らをあたたかい目で見守り続けている。


 今期はさまざまな作品で保志の演技を見ることができるが、こうしたエピソードも含めて、やはり個人的には『最遊記』が至高だなと感じる。過去シリーズと見比べても良し、ノスタルジーに浸るも良し、“中の人”たちのエピソードにほっこりするも良しの作品だ。


■まにょ
ライター(元ミージシャン)。1989年、東京生まれ。早大文学部美術史コース卒。インストガールズバンド「虚弱。」でドラムを担当し、2012年には1stアルバムで全国デビュー。現在はカルチャー系ライターとして、各所で執筆中。好物はガンアクションアニメ。