今週末、イギリスのシルバーストンサーキットでMotoGP第12戦イギリスGPが開催される。
シルバーストンは60年以上の歴史を誇るサーキットで、1970年代から1980年代にかけて世界グランプリの開催コースだった。その後、イギリスGPのホストサーキットはドニントンパークで定着していたが、2010年にシルバーストンは大幅な改修を受け、MotoGPの開催コースとしてカレンダーに復帰した。
当初、シルバーストンは新たに建設予定のサーキット・オブ・ウェールズ完成までの代替コース的な位置づけだった。サーキット・オブ・ウェールズはイギリスにおけるMotoGP開催権を有しており、2015年から5年間の延長開催をオプションに含めた5年契約に合意している。
しかし、サーキット・オブ・ウェールズの建設は、建設費に関するイギリス政府などからの公的融資の問題で進んでおらず、2010年以降シルバーストンでの開催が継続されている。
シルバーストンは1周約5.902km、4本のストレートと10の右コーナー、8つの左コーナーという構成。高速レイアウトで1周のアベレージスピードも高いが、中低速コーナーもありマシンのセットアップが難しいコースとして知られている。
また、天候面ではブリティッシュウェザーと呼ばれる不安定な天気になることが多く、気温、路面温度が低いコンディションだったり、ウエットとなることも少なくない。
2016年の決勝レースも各クラス、気温と路面温度が同等のコンディションで争われ、MotoGPクラスでは、スタート直後のクラッシュで赤旗中断。
レースは1周減算の19周で再スタートが切られ、カル・クラッチロー(ホンダ)が好ダッシュを見せるが、マーベリック・ビニャーレス(スズキ)が1周目にトップに立つと、後続にリードを取り独走。そのままMotoGPクラス初優勝を飾った。
2番手争いはクラッチロー、バレンティーノ・ロッシ(ヤマハ)、マルク・マルケス(ホンダ)による接戦のバトルとなり、クラッチローが2位、ロッシが3位に入賞。マルケスは4位でチェッカーを受けた。
Moto2クラスではトーマス・ルティ(カレックス)が優勝。フランコ・モルビデリ(カレックス)が2位、中上貴晶(カレックス)が3位表彰台を獲得した。Moto3クラスではブラッド・ビンダー(KTM)が優勝を飾っている。
MotoGPクラスではサマーブレイク前にランキングトップに立ったマルケス(ホンダ)が、チェコGPで優勝、オーストリアGPで2位入賞を果たし、ランキングトップをキープ。オーストリアGPで今シーズン3勝目を記録したアンドレア・ドビジオーゾ(ドゥカティ)がランキング2位に浮上し、マルケスを16ポイント差で追っている。
ビニャーレス(ヤマハ)はオーストリアGPで6位に終わり、ランキング3位に後退。ドビジオーゾとの差は8ポイントとなった。ロッシ(ヤマハ)はサマーブレイク後の2連戦で表彰台を逃したものの、ランキング4位を堅持。一方、2連戦で2連続表彰台を獲得したダニ・ペドロサ(ホンダ)はランキング5位は変わらないものの、ロッシとのポイント差を2ポイントに縮めた。
ヨハン・ザルコ(ヤマハ)がルーキートップ、そしてインディペンデントチーム勢トップのランキング6位をキープ。ホルヘ・ロレンソ(ドゥカティ)はオーストリアGPでは4位と惜しくも表彰台を逃したものの、ランキング7位に浮上した。
オーストリアGPでリタイアに終わったジョナス・フォルガー(ヤマハ)は、ロレンソから2ポイント差のランキング8位に後退。イギリスGPがホームレースとなるカル・クラッチロー(ホンダ)はフォルガーと1ポイント差のランキング9位。ダニロ・ペトルッチ(ドゥカティ)はオーストリアGPでノーポイントに終わり、ランキング10位に後退している。
シーズン中盤、サマーブレイク明けの2戦を見る限り、マルケスが一歩リード。フラッグ・トゥ・フラッグとなったチェコGPでは、難しい路面コンディションのなか、マシンコントロールのうまさを発揮。昨年はやや苦戦気味だったオーストリアGPも優勝こそ逃したものの、うまくまとめた。
一方、シーズン3勝目を記録したドビジオーゾが駆るドゥカティは、チェコGPより新型エアロカウルを投入。ドビジオーゾもオーストリアGPから同型のエアロを使っている。
昨年のオーストリアGPでも優勝しているドゥカティが、レッドブルリンクに合っていることは証明済だったものの、今年も連勝し、ロレンソも表彰台を逃したものの、4位に入るなど、ドゥカティ勢の調子は上向き。イギリスGPでその流れがどうなるのかに注目が集まる。
ヤマハのビニャーレスとロッシは、オーストリアGPで苦戦、表彰台争いに加わることができなかった。マシンとコースの相性もその要因の一つではあるものの、特にビニャーレスはシーズン前半の勢いを取り戻すことができていない。
ビニャーレスにとってシルバーストンは、MotoGPクラスで初優勝を飾ったコース。ヤマハ勢が流れを取り戻すことができるかどうか注目だ。