ハースF1チーム代表のギュンター・シュタイナーは、今のF1にはグリッド下位の小規模チームがもはや存在せず、若手ドライバーがこのスポーツに参入するためのチャンスが乏しくなっていると嘆いた。
HRT、ケータハム、マノーといったチームはこの数シーズンの間に消滅した。フェルナンド・アロンソやマーク・ウエーバーを輩出したミナルディは、2005年末にレッドブルに買収され、トロロッソへと姿を変えた。
トロロッソはレッドブル・レーシングのジュニアチームとして若手を育成する場を提供しており、ザウバーはフェラーリとの提携を通じてそれと似たような役割を担うことを考えているものとみられる。そういったチームがあることで、レッドブルやフェラーリのジュニアドライバーたちにF1への道が開かれることになるが、現状では、他の若手にはチャンスはほとんど存在しない。
「若手ドライバーにとっては厳しいことだが、彼らは適切なタイミングで適切な場所にいなければならない」とシュタイナーは英AUTOSPORT誌に対して語った。
「それしかできることがないんだ。今の状況ではシートを買うことすらできない」
「ミナルディが存在した頃のことを考えると、あのチームは下位でも満足だったのではないかと思う。彼らはドライバーを上位チームに送り出すという務めを担っていた」とシュタイナーは付け加えた。
「それが彼らのビジネスモデルで、うまくいっていたんだ。ドライバーを育成するという素晴らしいビジネスモデルだ」
ミナルディに在籍した経験を持つドライバーは、アロンソ、ウエーバーの他にも、ヤルノ・トゥルーリ、アンソニー・デイビッドソン、ジャンカルロ・フィジケラ、ジャスティン・ウイルソン、ステファン・サザランなど大勢存在する。
最近までこういった役割を果たしていたのはマノーだった。マノーは2016年のインディ500優勝者アレクサンダー・ロッシに、2015年にF1へ参入するチャンスを提供、2016年にはパスカル・ウェーレインとエステバン・オコンにも同様の機会を与えた。
今ではレッドブルのスター選手であるダニエル・リカルドは、ジュニア時代の2011年にHRTからF1デビューを飾り、翌年にトロロッソに移籍した。
「(HRTでは)彼が目立った成績を挙げることはできないと分かっていたが、そこで経験を積むことができた。だがそのチームはもう存在しない」とシュタイナーは嘆いている。
ジュニアチームやパートナーチームを持つレッドブルやフェラーリでさえ、所属のジュニアドライバーたち全員にはチャンスを与えられずにいる。フェラーリ傘下のアントニオ・ジョビナッツィは、負傷の影響が残っていたウェーレインの代役として、今季開幕戦でF1デビューを飾ったが、2018年にF1にフル参戦できるかどうかは定かではなく、同じくフェラーリのジュニアドライバーであるシャルル・ルクレールにシート獲得のチャンスを奪われるかもしれない。
メルセデスのジュニアドライバーであるウェーレインは、マノーからザウバーに移籍し、しばしば素晴らしいパフォーマンスを見せている。ウェーレインの育成に多額の投資を行ったメルセデスとしては、彼が来シーズンF1から外れることを望んでいないはずだが、ウェーレインの去就は明らかになっていない。
「フェラーリとメルセデスの間のどちらかから、次に優秀なドライバーが出て来るだろう」とシュタイナーは語った。「彼らがどうやってシートを獲得するかが難しい。今のF1はその点で本当に厳しい状況にある」
「シャルルやアントニオをすぐさまフェラーリに乗せるのは大きなリスクだ」
「うまくいくかもしれない。でもそうはいかない可能性の方が大きい。あまりにも大きな期待がかけられるからだ」
「F2とF1では状況が全く異なる。大きな差があり、学ばなければならないことがある」
「若いとミスをするが、それは経験が少ないからだ。経験を買うことはできない。経験を積むには時間が必要なんだ」