塩田武士の小説『騙し絵の牙』が8月31日に刊行される。
グリコ・森永事件をモチーフにした『罪の声』で『第7回山田風太郎賞』や『週刊文春』ミステリーベスト10国内部門第1位を獲得した塩田武士。新刊『騙し絵の牙』は、塩田武士が主人公を大泉洋に「あてがき」して執筆した作品となる。
物語の主人公は、大手出版社の雑誌編集長・速水輝也。上司から休刊をにおわす発言を受けたことをきっかけに、速水が異常な執念を持ち始め、業界全体にメスをいれていく、というあらすじだ。
塩田武士は同書の執筆にあたり、4年間におよぶ取材に加え、話し方や会話の間の取り方など、大泉洋に関する綿密な分析を敢行。また大泉洋本人からも細部にわたってアドバイスを受けたという。書籍の表紙には主人公・速水に扮した大泉洋が登場。装丁は吉田ユニが担当した。
塩田武士は同書について何度もプロットを修正したことを明かしているほか、「さらに主人公の速水輝也と大泉洋さんの『完全同期化』を目指し、私は大泉さんの映画やバラエティー番組、舞台を観て、語尾や会話の間、どのような方法で笑いを取っているかを分析しました。作品中に速水が接待でモノマネをするシーンがありますが、それはほぼ全てが大泉さんのレパートリーです」と語っている。
また大泉洋は「今回速水というやたらかっこいい雑誌の編集長が出てくるのですが、あくまで塩田さんが私をイメージしたらこうなったというキャラクターです。たいがいダメなお父さんを演じるのが多い私ですが、今回は実に大人なかっこいい男で、この速水に扮してカバーも撮影しました。中にも私の写真が入っておりまして、私の写真集と言っても過言ではございません!」と述べているほか、「今、何より怖れているのが、この小説が映画化されたとき、速水役が私ではない、ということです。映画館で『特報』を観て、『騙し絵の牙』ってタイトルが出てきてるのに、主演俳優が違っていて『あー!俺じゃない』って」とのコメントを寄せている。
■塩田武士のコメント
実在の俳優、それも唯一無二の役者をアテガキにして小説を書く――。
芸能事務所の方と編集者と打ち合わせを続け、「完全アテガキの社会派小説」という未知の世界を前に何度もプロットを修正。新時代のメディア・ミックスに備えました。もちろん、大泉さんとも打ち合わせをし、その場で非常に鋭く厳しい読者目線のアドバイスをいただいたことにより、物語はさらに進化しました。それぞれの立場で、真剣に作品について考え続けた結果、私のイメージを遥かに超えた「小説の核」が出来上がったのです。
さらに主人公の速水輝也と大泉洋さんの「完全同期化」を目指し、私は大泉さんの映画やバラエティー番組、舞台を観て、語尾や会話の間、どのような方法で笑いを取っているかを分析しました。作品中に速水が接待でモノマネをするシーンがありますが、それはほぼ全てが大泉さんのレパートリーです。改めて実感しました。こんな振り幅の大きい俳優はいない、と。
取材、執筆に4年。今は「もうできることはない」という清々しさが胸の内にあります。「物語の内容が現実とリンクしていく可能性がある」――そう気づいたとき、読者の皆さまはどんな未来予想図を描かれるでしょうか?
■大泉洋のコメント
今回『騙し絵の牙』のカバーを担当させてもらいました。
もともと私をイメージして塩田さんが小説をお書きになられたというちょっと変わった作りの小説です。
そもそも、この『騙し絵の牙』の発案の出発点というのが、雑誌『ダ・ヴィンチ』の表紙に出るとき、おすすめの本を一冊選ばなければならなかったことなんです。私は表紙撮影がある度に、『大泉エッセイ』を担当してくれていた同編集者に、いつも「お薦めの本、ない?」と、聞いていたんです。“映像化されて、私が主演をできるような小説”をと。
それを、毎回訊かれるのが、彼女はめんどくさくなったんでしょうね。「じゃあ、もう大泉さんを主人公としてイメージした本をつくります!」と言ったのが始まりなんです。
今回速水というやたらかっこいい雑誌の編集長が出てくるのですが、あくまで塩田さんが私をイメージしたらこうなったというキャラクターです。たいがいダメなお父さんを演じるのが多い私ですが、今回は実に大人なかっこいい男で、この速水に扮してカバーも撮影しました。中にも私の写真が入っておりまして、私の写真集と言っても過言ではございません!
でも今、何より怖れているのが、この小説が映画化されたとき、速水役が私ではない、ということです。映画館で「特報」を観て、『騙し絵の牙』ってタイトルが出てきてるのに、主演俳優が違っていて「あー!俺じゃない」って。
本書の帯のキャッチに<最後は“大泉洋”に騙される!>ってあるんだけれど、<最後は“大泉洋”が騙される!>って。実はそれが“騙し絵の牙”だったんだと。それだけは避けたいですね。