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Youtuberヒカルの捏造動画「コーラン燃やしてみた」が炎上、投稿者の犯罪性は?

2017年08月21日 14:43  弁護士ドットコム

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人気YouTuberのヒカルさんらがイスラム教の聖典「コーラン」を燃やしているかのような動画がインターネット上で拡散されて、炎上している。動画は、仮想株式「VALU」をめぐる問題で注目をあつめたヒカルさんに対して、反感を持つ人物が捏造したものとみられている。


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動画には、ヒカルさんらの画像に「コーランを燃やしてみた!」という字幕が付けられた場面が映し出されたあと、コーランとみられる書物がライターを使って燃やされるシーンが映っている。だが、その現場には、ヒカルさんらは登場しない。ネット上では「コラ動画」と指摘されている。ヒカルさんもツイッターで、自分が制作したものでない旨を投稿した。


YouTubeやLiveLeakといった動画サイトで拡散されており、ヒカルさんに対する殺害予告するようなコメントも投稿されていたようだ。過去には、反イスラム的とされた小説『悪魔の詩』の翻訳者が殺害されるなどの事件も起きており、不穏な空気も流れている。


今回のような「コラ動画」をつくって、YouTubeなど動画サイトにアップロードする行為は法的にどんな問題があるのだろうか。清水陽平弁護士に聞いた。


●ヒカルさんに対する名誉毀損罪が成立する

「このような『デマ』それ自体を直接的に規制する法律はありません。


しかし、アップロードされた動画等の内容が、人の社会的評価を低下させるものである場合には名誉毀損罪、その人の業務を妨害するものである場合には業務妨害罪の成立が考えられます。


名誉毀損罪の法定刑は『3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金』、業務妨害罪の法定刑は『3年以下の懲役または50万円以下の罰金』とされています」


今回のようなコラ動画をアップロードした場合、名誉毀損罪は成立するのだろうか。


「今回のコラ動画は、コーランを燃やしていると誤解されるものです。コーランはイスラム教の聖典であることは誰もが知っていることでしょう。そして、聖典を燃やすという行動は、社会常識があれば『やってはいけないこと』であるとわかります。


そのため、この動画によって、ヒカルさんが社会常識がない人物であると捉えられてしまうことになるため、社会的評価が低下しているということができます。そして、この動画は捏造されたものである以上、真実ではないことは明らかといえます。したがって、名誉毀損罪が成立すると思われます」


●アップロードした人物を特定できないと・・・

では、業務妨害罪はどうだろうか。


「業務妨害罪が成立するためには、ヒカルさんの『業務』が妨害されることが必要です。殺害予告のコメントがされたりしているようですが、これだけでは直接的に業務が妨害されたと言うことは難しいと思われます。


しかし、デマに対応する作業をしなければならなくなったとか、たとえば動画に付いたコメントを削除しなければならなくなったなど、業務への支障が生じている可能性があり、その場合には業務妨害罪が成立する余地もあります。


したがって、アップロードした人物には、これらの責任追及がされる可能性があります。また、民事上も責任が発生しており、ヒカルさんは損害賠償請求をすることもできるでしょう」


ヒカルさんはどういう対応をとるべきだろうか。


「わざわざデマを流している以上、アップロードした人物が特定されるような方法は用いられていない可能性が高いのではないかと思われます。特定ができなければ、責任追及をすることは難しいということになってしまう問題があります。


ただ、アップロードした人物がわからなくても、動画がアップロードされているサイトの運営会社に削除請求をすることは可能です。そのような対応を早めにとったほうがよいのではないかと思います」


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
清水 陽平(しみず・ようへい)弁護士
インターネット上で行われる誹謗中傷の削除、投稿者の特定について注力しており、Twitterに対する開示請求、Facebookに対する開示請求について、ともに日本第1号事案を担当。2016年12月12日「サイト別ネット中傷・炎上対応マニュアル第2版(弘文堂)」、2017年1月18日「企業を守る ネット炎上対応の実務(学陽書房)」を出版。
事務所名:法律事務所アルシエン
事務所URL:http://www.alcien.jp