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半強制の「資格取得」のために通常業務後に「居残り勉強」…残業代を請求できるか?

2017年08月21日 11:03  弁護士ドットコム

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社内資格取得のための勉強時間は残業に含まれるのかーー。こんな質問が弁護士ドットコムの法律相談コーナーに寄せられた。


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投稿者の会社には社内資格があり、従業員は半強制的に試験を受けさせられている。試験は土日のため、休日を返上する形になるが、代休は与えられず、試験勉強も社内のツールを使うため、会社で通常業務の終了後に勉強に取りくまざるをえなくなるという。


先輩たちによる勉強会も度々開催されており、「ありがたいのですが、断れず参加する」状況にあるそうだ。


このような場合、受験についての何らかの手当や、試験勉強時間については残業代として請求することはできないのだろうか。河野祥多弁護士に聞いた。


●労働時間として認められるかどうか

「労働者の残業代等の請求が認められるためには、受験勉強等の時間が、労働時間として認められる必要があります。



判例上、労働時間とは、労働者が使用者(例えば会社など)の指揮命令下に置かれている時間と定義され、具体的には、労働者が業務の準備行為等を使用者から義務付けられ、又はこれを余儀なくされている時は原則として労働時間に該当するとされています。



そこで、使用者が労働者に対して、試験や勉強会への参加を命じている場合には、使用者の指揮命令下に置かれているため、労働時間となり残業代の支払い請求が認められます。


また、使用者が参加を命じていなくても、労働者が勉強会等に余儀なく参加させられた場合にも、使用者の指揮命令下にあるとされ、残業代の支払い請求が認められる余地はあることになります」


それでは、今回のケースについてはどうなのか。



「社内資格の位置付けが不明ですが、社内のツールを使って試験勉強するため、自宅ではなく会社で通常業務の終了後に取りくまざるを得ない点や、会社の先輩という断りづらい人物から勉強会に誘われている点を重視すると、勉強会等に余儀なく参加させられたとして残業代の請求が認められる可能性もあります。


社内資格の内容等にもよるかと思いますが、使用者としては、勉強会等についても幅広く労働時間として認めていくか、もしくは、社内ツールを使わずに勉強できる環境を用意するなどして、残業の対象になるのかどうかを含め、ルールを明確にしていくことが大切かと思います」


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
河野 祥多(こうの・しょうた)弁護士
2007年に茅場町にて事務所を設立以来、個人の方の相談を受けると同時に、従業員100人以下の中小企業法務に力を入れている。最近は、ビザに関する相談も多い。土日相談、深夜相談も可能で、敷居の低い法律事務所をめざしている。
事務所名:むくの木法律事務所
事務所URL:http://www.mukunoki.info/