前戦ミド・オハイオの後、日本に戻り内閣総理大臣顕彰式に出席するなど多忙な日々だった佐藤琢磨だが、わずか4日間の日本滞在でアメリカに戻った。すぐにワトキンスグレンのテストにも参加した。
2週間のインターバルを開けて行われる第14戦のポコノ。今回琢磨のマシンはインディ500でもついたRuoff社の別部門エクスペダイト社のスペシャルカラーで水色になっていた。
琢磨はこのポコノを得意としているし、今年はインディ500でのスーパースピードウェイでの実績もある。琢磨自身もここが後半線に最も期待できるレースのひとつに挙げていた。
2デイレースの初日は、風が強くマシンのセットアップを確認するには難しいコンディションだった。実際にプラクティスではエド・カーペンター、ギャビー・チェベスらがウォールにヒット。予選が始まってもエリオ・カストロネベス、ライアン・ハンター-レイなどベテラン勢もクラッシュするなど波乱含みな一日だった。
実際ハンター-レイのクラッシュは大きく、ハンターレイは病院に搬送されるほどだった。翌日にはドクターのOKも出てレースに出られたのは不幸中の幸いだろう。しかし、琢磨にとって気がかりだったのは、ハンターレイが自分と似たようなセッティングで予選中にクラッシュしたことだった。
琢磨は予選アタックは、くじ引きでいちばん最終のアタック順となった。待機中、不安を抱える琢磨にアレクサンダー・ロッシが寄り添いコースの状況をアドバイスした。
これに勇気付けられた琢磨は、予選再開後猛アタックを開始。ウォームアップラップは全車の中で最速をマークしてアタックを続ける。2ラップ目にはターン1で膨らみウォールヒットスレスレだったが、渾身のラップをまとめ上げて219マイルをオーバー! 見事ポールポジションを獲得した。
今季2回目通算7度目のポールポジションだったが「スーパースピードウエイでのポールは初めてなので、すごくうれしい」と笑みをこぼしていた。
「ポコノは3つのコーナーの形状がそれぞれ違って風の向きでターン1と3が難しかったんです。特にライアンは僕と似たようなセッティングだったし、どんな原因でクラッシュしたのかわからなかったので……。アレックスがスタート前に色々助言してくれたのは助かりましたね。アンドレッティ全体で取ったポールポジションだと思います」
最後の最後でポールポジションを決めたのも琢磨らしかった。しかし、決勝ではまるで土曜の予選がウソだったかのように失速してしまう。
ポールポジションの位置からうまくスタートを合わせた琢磨だが、ターン2では直後にトニー・カナーン(チップ・ガナッシ)が迫りターン3で交わされ、1周目のトップも守れないほどスピードがなかった。
以後1周につき1台くらいのペースで抜かれてしまい、15~16番手まで後退。無線では頻りにアンダーステアを訴えている。デイル・コインのエステバン・グティエレスのクラッシュで最初のイエローになり、ピットでウイングのセットをアジェストしてコースに戻るもののペースは戻らない。
強いて言えばニュータイヤがグリップしている間はペースを保っているのだが、徐々にペースが落ちていくのだ。
16~17番手を彷徨う琢磨は、まるで昨日と別人のようだ。
500マイルのポコノはピット回数が6~7回あるが、いずれの時にもピットでウイング変更をしているが、琢磨のペースが完全に戻ることはなかった。200周のレースを13位で完走するのが精一杯。ランキングが7位から滑り落ちなかったのが、せめてもの救いだろう。
「今日はマシンが遅すぎ! マシンのウイングをどんどん立てたし、コクピットの中でツールを使ったんですけど、使いきってしまった。ストレートは遅いしコーナーはアンダーステアだし、もうどうすることもできなかったですね」とこぼす琢磨。今日のマシンは勝負になっていなかった。
「この後、ちゃんとデータを見てみるしかないですね。すぐにセントルイスのレースがありますし、ショートオーバルはチームも苦手としてるので苦戦するかもしれませんが、頑張るしかありません」