ポコノ・レースウェイで開催されたインディカー・シリーズ第14戦。20日に行われた決勝レースは、ウィル・パワー(チーム・ペンスキー)が500マイルのレースを制し、今季3勝目を挙げた。ポールポジションからスタートした佐藤琢磨(アンドレッティ・オートスポート)はスピードが伸びず、13位でレースを終えた。
2日とも快晴に恵まれたポコノ戦。風がやや強く予選は荒れ模様となり、最終アタッカーとして走った佐藤琢磨が2周平均219.639mphでポールポジションを獲得。予選2番手はシモン・パジェノー(チーム・ペンスキー)、予選3番手はチャーリー・キンボール(チップ・ガナッシ)だった。
しかし、レースを制したのはウィル・パワー(チーム・ペンスキー)。予選5番手だったパワーはフロントウイングのトラブルで序盤に周回遅れに陥ったが、後方に回ったことをフルに利用してアドバンテージを手に入れ、ポコノ2連勝を達成した。
120周目を前に発生したイエローコーションを利用してリードラップに戻ると、燃料を満タンにするピットストップをイエロー中に繰り返す作戦をパワー陣営は採用。ライバルたちが燃費をセーブする走りを強いられたレース中盤戦で燃料を気にせずに全開走行。4秒以上という大きなリードを築き上げた。
破損していたリヤウイングも交換する作業を行ったことにより、パワーのリードは消滅したが、トップを奪われることはなかった。最後にアタックを仕掛けてきたチームメイトのジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)の攻撃は、勝利とチャンピオンシップへの執念と巧みなライン採りで封じ込め、インディGP、テキサスに続く今季3勝目を挙げた。
ポイントトップのニューガーデンと勝利数で並び、ポイント差は52点から42点に減らすことに成功。パワーはなんとかチャンピオン争いに踏みとどまった。残りレースは3戦。しかも、最終戦はダブルポイントなので逆転タイトルは十分に可能だ。
「劇的な勝利。とても満足感の得られる勝利となった。周回遅れを取り戻しての優勝はとても嬉しいね。昨年と違った勝ち方になったことも喜んでいる。目指すはタイトル獲得。それを狙えるポジションにつけることができた」とパワーは目を輝かせていた。
ニューガーデンはあと一歩での2位を悔しがりつつ、「終盤のパワーは速かった、パスを仕掛けるだけのスピードが自分にはなかった。しかし、今日はポイントリードを広げることができたのだから、そちらを喜びたい。残り3レース、どのコースでも僕らは強いはずだ。自分としては特にソノマで強いだろうと思う」とタイトル獲得への自信を覗かせた。
今日のレースで終始トップ争いを展開したのは、アレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)、トニー・カナーン(チップ・ガナッシ)、スコット・ディクソン(チップ・ガナッシ)、グラハム・レイホール(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)といった面々だった。
グリッド最後列の21番手スタートだったライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)も速く、100周をかけてトップにまで上り詰めたほど。みんなホンダ・ドライバーだ。しかし、最終的に勝利を手に入れたのはシボレーを駆るパワーで、2位もシボレーのニューガーデンのものとなった。
最終スティントではシモン・パジェノーも奮闘、カナーンとディクソンをパスして4位フィニッシュした。パワーは最初からスピードがあったが、トラブルで一旦後退。ニューガーデンはレースを戦う中でスピードを上げていき、パジェノーも最後に一段のスピードアップを果たしたことで4位フィニッシュを手に入れた。対するホンダ勢は終盤のスピードの伸びがなかった。
ポールポジションからスタートした佐藤琢磨は、1ラップ目にカナーンにパスされ、リードラップを記録することなく後退。アンダーステアの強いマシンで1回目のピットストップまでに17番手まで順位を大きく下げ、後方集団から抜け出すのに苦しんだ。
ピットストップを繰り返してもアンダーステアは解消されず、粘りに粘った結果が13位だった。「ポコノはリベンジしないと!」と琢磨は大いに悔しがっていた。
「スタートからマシンにスピードがなかった。カナーンにパスされたのはターン2とターン3の間の短いストレート。あそこで完全に抜き去られた。フロントウイングは6ターンも立てたし、リヤウイングも立てた。こんなことはアンドレッティ・オートスポートというチームとしてもこれまでに経験したことがないという話だった」と琢磨。
何かセッティングに間違いがあったのか、マシン自体に何かトラブルが発生していたとしか考えられない。「自分はフロントのスタビライザーをフルソフトにしてもマシンが曲がっていかなかったのに、チームメイトたちはフルスティフにしていた。こんなことは普通は起こらない」とも琢磨は話した。
ロッシとハンター-レイ、ふたりのチームメイトはトップ争いを行っていた。彼らとまったく異なる性格のマシンになっていたということは、琢磨のマシンに何かトラブルなりミスがあったと考えるのが妥当ではないだろうか。