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非公式テストでペドロサを上回った中上。ホンダ山本部長が語る日本人MotoGPライダー誕生の経緯

2017年08月20日 21:12  AUTOSPORT web

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中上貴晶/イデミツ・ホンダ・チーム・アジア
2018年にMotoGPクラスへ昇格し、LCRホンダで戦うことになった中上貴晶。その起用に至った経緯について、ホンダの山本雅史モータースポーツ部長がツインリンクもてぎで行われた記者会見で語った。

 Moto2クラスの参戦は2017年で6年目となる中上。これまでに2016年第8戦オランダGPでの優勝を含む13回の表彰台を獲得している。そして、2018年は最高峰クラスに昇格。HRC(ホンダ・レーシング)契約ライダーとしてLCRホンダに所属する。

 中上のMotoGPクラス昇格のきっかけとなったのは、2016年の第10戦オーストリアGP決勝での走りだとホンダの山本雅史モータースポーツ部長は語る。

「昨年のオーストリアGPの現場で、中上君の決勝での走りを見たとき、彼だったらMotoGPに走れるんじゃないかと感じさせてくれるものがありました。そこでHRCの桑田(哲宏ゼネラルマネージャー)たちと話して、2016年のテストに一度乗せてみようというのが最初のスタートです」

「昨年の末、彼にへレスでMotoGPのテストを3日間してもらいました。その時、彼の夢にまでみたHRCのワークスツナギを作ったんです。そこで僕は『つなぎが傷つくから絶対に転ばないでくれ』と(笑)。そのことだけお願いして、あとは好きに3日間楽しんで乗ってこいと言いました」

「(中上を)すごいと思ったのが3日間の内、最終日でしっかりとタイムを出し、ラップを重ねたことです。テスト初日はバイクを乗りこなすのに四苦八苦したらしいのですが、3日目には非公式ですがダニ・ペドロサの出したタイムを上回る記録を出したりしていました。(その時のことを)外に公開しなかったことは本当に後悔しています」

「それが彼の評価に繋がり、彼をMotoGPに上げていこうとなった決めてです」

 MotoGP昇格が決まった中上だが、2017年シーズンは3度表彰台に登っているものの不運などが重なり、現在のポイントランキングは7位と思ったような成績を残せていないように見える。

 このこともあり、会見では中上起用に対する不安はないかという質問が上がったが、山本部長は次のように答えた。

「ないことはないですが、ホンダ側が反省するのは、久しぶりの日本人をMotoGPで乗せたいなどのいろいろな思いがあって、(中上に対して)少しプレッシャーをかけすぎてしまったのかなというのは正直感じています」

「たとえば鈴鹿8耐。中上君のスケジュールが空いているということで、鈴鹿8耐に引っ張ってウチのトップチームに入れました。ご存知のように彼はヘアピンで転倒してしまいました。ありえないなと」

「心配はしていたのですが、『(中上は)何か引っかかっているよね』と桑田たちと話しをしていました。今年のオーストリアGPでのレース前にそういう話をして、彼に自分の走りをすれば結果はついてくるんだし、オーストリアは思い切って自分の好きなレースをしなさいという話をしたのを覚えています」

「僕らが思う以上にドライバーやライダーは重く受けていることがあって、『来年MotoGPだぞ!』ということをプレッシャー的に感じさせてしまっているのかなと。そのことに関しては、私も日々反省というものがあります」

「不安もありますが、彼の走りを現場で見ているので、彼がMotoGPにいってもやっていけるというのは思っていますし、期待に応えてくれると感じています」