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EV化が進むなかTRD永井氏が持論を展開。スーパーフォーミュラとレシプロエンジンの未来

2017年08月20日 08:32  AUTOSPORT web

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土曜日のサタデーミーティングに参加したTRD永井氏と、ホンダ佐伯氏。佐伯氏は明言を避けた。
ここ最近、欧州を中心に自動車メーカーがモータースポーツへの取り組み方を変化させる方針を相次いで発表しているが、スーパーフォーミュラのトヨタエンジン開発リーダーである永井洋治氏(トヨタテクノクラフト株式会社TRD事業部)は、もてぎ戦のメディア向けサタデーミーティングに登壇した際、トヨタテクノクラフトとしての立場から、「ここでこういうピュアなレースができることは幸せ。絶やさずに守っていきたい」との旨を話した。

 もてぎ戦からシーズン後半戦仕様へとアップデートされたエンジンについては「あまり言うことがないんで、今日はここでそういう話(今後のモータースポーツ情勢について)をしようと思っていました」と冗談めかして話し始めた永井氏。だが、その内容は興味深い。

「まず、今のスーパーフォーミュラで我々は本当にピュアなレースができる状況にあります。これはとても幸せな環境なんだと思わなければいけませんね。そしてこれを絶やしてはいけないし、守っていかなければならないという思いもあります」

 トヨタ、ホンダ、そしてヨコハマタイヤといった日本メーカーの尽力によって、ドライバーとチームの力を中心にしたピュアレーシングをこれだけの規模とレベルで実現し続けられているスーパーフォーミュラ。

 こういった例は世界的に見ても希少だ。永井氏はまず、モータースポーツへの理解ある日本のメーカーの姿勢に敬意を表しつつ、この環境を維持していきたい意向を強くにじませた。

 とはいえ、永井氏はもちろん、世界の趨勢も誰よりよく理解している。「今はモータースポーツの在り方という意味では過渡期なんだと思います。これはトヨタテクノクラフトの若い人たちとも話をしていることですが、これからの10年は(トヨタテクノクラフトを含むモータースポーツ界全体にとって)いろんな意味で厳しい時代になるかもしれませんね」。

 間違いなく、そういう流れが感じられる昨今。しかし永井氏は、ただ厳しくなるとばかりは考えてはおらず、その先の新たな展開も想起している。

「レースはなくならないと思いますし、ここを乗り切れば、自分たちの存在が強くなるのではないか、とも思っています」

「レースが100パーセント、すべて電気(自動車)のレースになるかというと、そういうことではなくて、レシプロエンジンのレースをやりたい人が絶対いるでしょうから、それも残っていくと思います。そして、それを支えるのは自動車メーカーではなく、トヨタテクノクラフトのようなところになるのではないか。そうなれば、ビジネスとしてももっと伸びることができるかもしれません」

 この先、自動車メーカーがその名を掲げて参戦するのは電気自動車や次世代エネルギー系車両のレースになっていくのが現在の必然的な流れ。一般市販車に関してもそうなっていくだろう。しかしレシプロエンジンのレースも残っていくと考えた場合、現在もそういった高性能エンジンを手がけているレース専門(的な)会社や組織が、10年後にはビジネス面も含めて新たな“強い立脚点”を有している可能性は確かに高い。

 モータースポーツを含む自動車業界が大きく動いている現代。先々に向けてはいろいろな見方をする必要があるが、永井氏の言うような新しいかたちの未来を模索し続けることも重要だと思われる。

 そして当面は、やはり今のスーパーフォーミュラの競争環境の維持と今後の発展を目指していくことが、なにより重要。新シャシー導入が予定される2019年に向けて、永井氏を含む関係者の尽力に(感謝しつつ)期待したいところだ。