2017年08月19日 10:53 弁護士ドットコム
これから佳境に向かう夏の風物詩・甲子園。球児たちの聖地でプレーする「野球エリート」たちは、やはり規格外のエピソードを持っている。
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たとえば、ベスト8に進出した東海大菅生(西東京代表)の4番に座る片山昂星選手(2年)。高校野球ドットコムによると、今年3月にあった練習試合で、両翼100メートルもあるグランドの防球ネットを超え、ライト奥にある民家まで届くホームランを打ったという。
また、惜しくも初戦で敗退したが、滝川西(北北海道)の高島泰都選手(3年)は8月5日、試合形式の打撃練習で、防球ネットを超える場外弾を放ち、停まっていた車のドアにへこみ跡をつくった。スポーツ報知によると、同校の小野寺大樹監督は、そのボールに「心配するな、保険で対応します」と書いて、高島選手に手渡したという。
一生懸命やっている球児たちに、力を加減しろと言っても無理な注文。もし、練習や試合で放ったホームランやファールで部外者がケガをしたり、物が壊れたりした場合、責任は誰にあるのだろうか。日本プロ野球選手会公認選手代理人でもある塩見恭平弁護士に聞いた。
ホームランやファールで部外者がケガをしたり、物が壊れたりした場合、被害者に対しケガの治療費や慰謝料、物の修理費などを支払うことが必要になる場合があります。
まず、打った球児については、野球場でプレーしている限り、責任を負う可能性はありません。「ホームランは打ってもよいが、場外ホームランは打ってはいけない」ということにはなりません。安心してかっ飛ばしてください。
次に、監督や部長などの責任者についても、責任を問われる可能性は低いでしょう。もっとも、球場利用についてあらかじめ注意をされている場合があります。打球が場外に出てしまった場合についての注意点等はしっかりと聞き、選手に対し周知徹底しましょう。
なお、球児や責任者も球場ではなく、学校など施設利用目的が限定されていない場合や、球場外でキャッチボールしている時に事故を起こしてしまうと、責任を負う可能性があります。
自身がケガをしてしまうこともありますので、いわゆるスポーツ保険(傷害保険や賠償責任保険)への加入を検討すべきでしょう。
一方、球場については、場外ホームランやファールボールなどで事故が起きてしまうと、野球を行うにあたり「通常有すべき安全性」を欠く施設として、被害者に対し損害賠償責任が生じる可能性があります(民法717条、国家賠償法2条)。球場に防球ネットがなかった場合やネットが著しく低かった場合は、責任が認められる可能性が高まります。
実際の紛争に当たっては、責任の所在があいまいになる可能性もありますし、個別のケースにより判断が異なりますので、専門家に相談してください。備えを万全にして、楽しくプレーしましょう!
ーーなお、弁護士ドットコムニュースが高野連に問い合わせたところ、場外打球でのケガや物損については、「施設賠償保険に入っています」とのこと。主催大会中の球場での試合・練習に適用されるとのことだ。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
塩見 恭平(しおみ・きょうへい)弁護士
大阪府立四条畷高校・大阪市立大学で体育会硬式野球部に所属。現在も、GSG斑鳩クラブ(奈良県:硬式)、大阪弁護士会野球団(軟式)に所属し、投手として野球を楽しんでいる。取扱分野は個人・法人・野球と多岐にわたる。
事務所名:はちかづき法律事務所
事務所URL:http://www.helper-law.com/