2017年08月18日 11:23 弁護士ドットコム
強制わいせつの疑いで、●●会社の●●容疑者を逮捕ーー。テレビなどでよく見かけるニュースだ。逮捕されたということが報じられた時点で、その容疑者のフェイスブックなど、ネット上にある情報が掘り起こされ、即座にまとめられて、拡散してしまう。
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逮捕されただけでまだ有罪かどうかはわからないが、会社にとっては、大きなマイナスイメージが広まってしまうことになる。特に、公務員、有名企業の会社員、報道関係者などは、実名と所属組織名がともに報じられることも多い。
このような不祥事に関わる問題では、逮捕された容疑者が依願退職するケースが多いようだが、会社として、従業員が逮捕されたり有罪判決を受けたりした時点で、解雇することは可能なのだろうか。田代耕平弁護士に聞いた。
会社の従業員が逮捕されたら、その時点で解雇することはできるのか。
「それには慎重な判断が必要となります。解雇は、会社の秩序や職場規律を維持するためのものなので、これらに関係のない私生活上の行為は基本的に解雇の対象にならないのです。皆さんも仕事と関係のないこと、例えば、体重のこととか交際相手のことなどで会社に注意されるのは嫌ですよね」
どのような場合に、解雇が認められるのか。
「犯罪の性質や会社の業種や社会における地位・経営方針や本人の役職など様々な要素を踏まえて犯した犯罪が企業秩序や職場規律に支障を与えているといえるような場合には解雇も認められる可能性があります。痴漢の事案ですが、電鉄会社の社員が3度にわたって他社の電車内で痴漢行為に及んだケースでは解雇有効という判断がされています」
報道で名前だけでなく、会社名や肩書きが出ることもある。
「報道等で会社名が出るケースでは、会社の社会的な地位が高く公共性を有するような場合が多く、また、報道自体によって会社秩序が乱されるともいえるので、解雇が認められる場合も多いと思います。しかし、犯行の態様は様々ですのでやはりケースバイケースと言わざるを得ないでしょう。もっとも、報道されたという事実は解雇の有効性の判断において重要な事実と言えます」
逮捕された従業員が容疑を認めていた場合、どうだろうか。
「本人が被疑事実を認めている場合には、逮捕後と有罪判決後で違いは大きくありませんが、否認している場合には、逮捕の理由となった事実(被疑事実といいます)を前提として解雇することは慎重に行う必要があります。逮捕の時点では、裁判所にとっても被疑事実が真実であると確定しているわけでないからです(無罪の推定)。
このことは、逮捕の事実や会社名が報道されたとしても基本的に変わりません。すこし別の言い方をすると、社員が犯罪者として報道されたこと自体は解雇の直接の理由にはならないということです」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
田代 耕平(たしろ・こうへい)弁護士
札幌総合法律事務所(パートナー)、一般社団法人はまなす労務サポートステーション代表理事、日本交渉学会常務理事、日米協会会員。労働問題のほか不動産・建築分野にも注力しながら調査会社((株)flat)も運営する異色の弁護士。
事務所名:札幌総合法律事務所
事務所URL:http://www.sapporo-sogo-lo.com