厚生労働省は8月17日、「子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について(第13次報告)」と2016年度の「児童相談所での児童虐待相談対応件数」を発表した。
「第13次報告」によると、2015年4月~2016年3月までの1年間で、虐待によって死亡した子どもは52人だった。重傷を負った子どもは8人で、心中によって死亡した子どもは32人だった。
虐待の動機は「子どもの存在の拒否・否定」「泣きやまないことにいらだった」など
虐待の類型としては、身体的虐待(35人)とネグレクト(12人)が多かった。ネグレクトの中でも「家に残したまま外出する、車中に置き去りにする」が特に多く、他には「遺棄」「必要な医療を受けさせない」といった事例が報告されている。
主な加害者は「実母」が26人で最も多く、次いで「実父」が12人だった。心中の加害者はほとんどが実母(29人)だった。
虐待の動機としては、「保護を怠ったことによる死亡」が6人で最も多く、「しつけのつもり」「子どもの存在の拒否・否定」「泣きやまないことにいらだった」がそれぞれ5人だった。心中の動機は、「保護者自身の精神疾患、精神不安」(13人)が中心で、「育児不安や育児負担感」(11人)も多かった。
虐待をしてしまう背景には望まない妊娠があるのかもしれない。虐待によって死亡した事例では、「予期しない妊娠/計画していない妊娠」が18人おり、「妊婦検診未受診」(17人)、「若年(10代)妊娠」(13人)も多い。
同報告書には、個別の事例も紹介されている。妊婦検診未受診のまま出産した実母(22)と実父(42)は、家賃滞納で退去請求を受けており、生活保護の援助により転居。その後、生活保護担当部署が月1回の訪問を試みていたが、長男(0)はネグレクトにより死亡した。
継父(21)が暴力によって次女を死亡させた事例もある。過去に自分自身も祖父から虐待を受けており、暴力事件で少年鑑別所へ入所したことのある継父は、実母の女性(23)や長男(4)・次女(3)に暴力を振るっていた。児童相談所が子どもたちの保護を試みるものの、継父や実母の拒否で実施できず、死亡事件が発生した。
児童相談所での相談は心理的虐待が過半数
「児童相談所での児童虐待相談対応件数」によれば、2016年度に全国210か所の児童相談所が児童虐待として対応した件数は12万2578件で過去最高だった。背景には、児童虐待への意識が高まったことがある。
相談の内容としては、心理的虐待が51.5%で最も多く、身体的虐待は26.0%、ネグレクトは21.1%だった。なお心理的虐待には、言葉による脅しや無視、子どもの目の前で家族に対して暴力を振るうといったことが含まれる。