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運送業や飲食業ではなぜ過重労働が改善されないのか 「人員が足りない」「売上減少を懸念」

2017年08月17日 14:31  キャリコネニュース

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厚生労働省は8月10日、2016年度の「過労死等に関する実態把握のための労働・社会面の調査研究事業報告書」を公表した。過労死が多く発生している運送業と外食産業を対象に調査を実施。さらに雇用労働者だけでなく、自営業者と法人役員にも調査を行った。

運送業への調査は、全国の4000社とそこで働くドライバー4万234人を対象に、2017年の1~2月にかけて実施。ドライバー本人に実労働時間を聞いたところ、バス運転手は平均で月141.8時間、タクシー189.9時間、トラック178.8時間で、全体では177.9時間だった。

トラック会社では「手待ち時間」や「取引先の無理解」も改善の妨げ

運送業を営む企業に所定外労働が発生する理由を聞いたところ、バス会社では「仕事の特性上、所定外でないとできない仕事があるため」が47.1%と最も多く、タクシー会社では「所定外でないとできない仕事がある」「予定外の仕事が突発的に発生する」「人員が足りない」がいずれも33.0%だった。トラック会社では「取引先の都合で手待ち時間が発生するため」が52.1%で過半数を超えていた。

過重労働を防止するための課題は、タクシーでは「売上げや収益が悪化するおそれがある」(35.5%)、トラックでは「荷主・発注者の理解が不足している」(54.1%)が最も多かった。しかしバスでは、そもそも「人員不足で対策を取ることができない」という回答が最も多く26.7%に上った。

また所定外労働が発生する原因をドライバー本人に聞いたところ、やはり「人員が足りないため」が27.0%で最も多く、「所定外でないとできない仕事がある」(24.6%)がそれに続いた。

ドライバーのストレスや悩みの内容として最も回答が多かったのは、バス運転手では「長時間労働の多さ」(47.7%)で、タクシー運転手では「売上・業績」(48.3%)、トラック運転手では「精神的な緊張・ストレス」(38.8%)だった。

外食産業では「人員不足で過重労働防止の対策を取れない」

外食産業への調査は、全国の4000社と従業員4万109人を対象に実施された。

外食産業を営む企業に所定外労働が発生する理由を聞いたところ、「人員が足りないため」という回答が最も多かった。過重労働防止に向けた取り組みへの課題を店舗の種類ごとに見ると、「人員不足のため対策を取ることができない」が33.0%で最も多かった。

1週間当たりの実労働時間を従業員本人に尋ねたところ、スーパーバイザーで42.3時間、店長で41.2時間、店舗従業員で39.0時間だった。所定外労働が生じる理由としては、やはり「人員が足りないため」が51.7%で最も多かった。

ストレスや悩みを抱えている人にその内容を聞いたところ、スーパーバイザーと店長では「売上・実績」と答えた人がそれぞれ44.9%と54.4%で最も多かった。店舗従業員では「精神的な緊張・ストレス」(42.1%)が最も多かった。

運送業や外食産業では、過酷な長時間労働が常態化しているというイメージが強い。しかし同調査の数字だけみれば、必ずしも労働時間が長いわけではないようだ。厚生労働省の担当者は、キャリコネニュースの取材に対し、

「アンケートのボリュームがあったり、労働時間を厳密に把握するのが難しかったりするため、無回答も多かった。そのため調査結果の評価については留意してほしい」

と語った。

法人役員の8割弱は「過労死等防止対策推進法」について「理解していない」「知らない」

同調査では、全国の自営業者5000人と法人3000社における役員6000人にも調査を実施。1週間当たりの平均実労働時間について聞くと、自営業者のうち「教育・学習支援業」が41.3%で最も長かった。法人役員については、「電気・ガス・熱供給・水道業」において44.1%に上った。労働時については、73.4%の自営業者が「特に把握していない」という。法人役員でも半数に近い49.8%の人が「把握していない」と答えた。

過労死等防止対策推進法について、法人役員で「聞いたことはあるが、内容は理解していない」「聞いたことはなかった、知らなかった」と回答した人は77.8%に上った。また過労死等の防止のための対策に関する大綱についても「理解していない」「知らなかった」が83.5%に達した。