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小松礼雄コラム第11回:バトルの裁定には一貫性が必要。クビカ復活に感動したインシーズンテスト

2017年08月17日 12:22  AUTOSPORT web

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小松礼雄コラム第11回:バトルの裁定には一貫性が必要。クビカ復活に感動したインシーズンテスト
ハースF1チームのチーフエンジニアとして今年で2年目を迎える小松礼雄氏。創設2年目の新興チームであるハースはどのようにF1を戦うのか。現場の現役エンジニアが語る、リアルF1と舞台裏──F1速報サイトでしか読めない、完全オリジナルコラムの第11回目をお届けします。

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■ハンガリーGPは金曜から苦戦。レースの裁定には疑問も

 サマーブレイク前のラストレースとなったハンガリーGPでしたが、金曜日の時点から苦戦していました。マシンのダウンフォース不足もありますが、なかなかタイヤをうまく機能させられず、特にスーパーソフトでの速さが足りませんでした。

 まず金曜日ですが、ロマン(グロージャン)がFP1でとっちらかっていただけに(アントニオ)ジョビナッツィが数周でクラッシュし、マシンを壊してしまったのも痛かったですね。

 右フロント以外のサスペンションをすべてて交換というかなり大掛かりな修復になってしまったので、かなり時間がかかりケビン(マグヌッセン)はFP2の残り20分弱しか走れませんでした。

 ロマンはFP2でもかなり手こずり、セッティングをつめていくという段階には至りませんでした。結果として、ほぼ1日遅れに近い状況で土曜日を迎えることになってしまいました。FP3で少しは改善したものの、やはり遅れは大きく、予選はロマンが15番手、ケビンが16番手という残念な結果でした。

 レースではまず、ターン1でロマンが(ニコ)ヒュルケンベルグに追突され、それだけならまだ良かったのですが、ターン2の出口で今度は(マーカス)エリクソンにぶつけられたんです。エリクソンの右リヤとロマンの左フロントが当たった結果、リムにダメージを受けスローパンクチャー起こしてしまいました。

 ただ、アクシデント直後にセーフティカーが導入されたことにより、タイヤのプレッシャーが全体に下がっていたので、最初はその兆候に気づきませんでした。ところが、リスタートすると右前輪はプレッシャーがちゃんと上がってきたのに対し、左前輪はなかなか上がってこなかったので、これはスローパンクチャーだと気づき、緊急ピットインしました。

 ここで残念だったのは、タイヤ交換でミスが起こってしまったことです。以前からトレーニングを積み、カナダGPあたりからピット作業のスピードも上がってメカニックたちも自信を持っていただけに残念でした。

 ミスを犯したメカニックはすぐにシグナルを送り、チーフメカニックから僕のところへ連絡がきたのですが、ドライバーに伝えた時にはもうピットレーンを出た後だったため、リタイアせざるを得ませんでした。

 レース中にケビンがヒュルケンベルグとのバトルでペナルティを科された件ですが、僕としてはスチュワードの裁定に一貫性があれば良かったと考えています。しかし、残念ながらハンガリーGPでは、その一貫性がありませんでした。

 以前、同じような一件があった時、FIAのレースディレクターであるチャーリー(ホワイティング)は、「コーナーへ進入した時に横に並んでいなければ、前にいるマシンに優先権があるので、そのままレーシングラインを通っていい」と話していました。

 その言葉どおりであれば、あの場面でケビンにペナルティは出されないはずです。ケビンはヒュルケンベルグよりも先にコーナーへ入っていましたし、彼と接触もしていません。ヒュルケンベルグがアウトから仕掛けて、勝手にコースオフしたわけですから。

 それでも、スチュワードがペナルティを科すというなら、百歩譲ってよしとしましょう。ただしその場合、セーフティカーが入り、レース再開直後のターン1で(カルロス)サインツJr.が(フェルナンド)アロンソに対してスペースを空けずに2台が接触し、その結果アロンソがコースオフしたアクシデントにペナルティが科されなかったのはなぜでしょうか。

 少なくともこの2件は両方ともペナルティを科すか、両方ともペナルティなしという裁定にすべきだったと思います。裁定に一貫性がなければ、レースが混乱するだけです。

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