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関ジャニ∞の冠番組増加が予感させる新時代 『ペコジャニ∞!』レギュラー化に寄せて

2017年08月17日 07:02  リアルサウンド

リアルサウンド

 先日、関ジャニ∞の出演する『ペコジャニ∞!』(TBS系)が今秋からレギュラー化されるとの発表があった。これまで二度特番として放送されていたこの番組は、食をテーマにしたバラエティ。芸能界の食通や関ジャニ∞メンバーがテーマに沿った一品をプレゼンし、一位のメニューに投票した人だけが食べられる、というものだ。


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 現在、関ジャニ∞がグループ全員で出演する冠番組、つまりグループ名が入った番組は3本ある。2007年から続く関西ローカルの『関ジャニ∞のジャニ勉』(関西テレビほか)は、ゲストを迎えてのトークをメインにした、彼らにとってのバラエティの原点とも言える番組だ。また毎回トークと生演奏を交えながらマニアックに音楽を掘り下げる音楽バラエティ『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系)、そして趣向を凝らした多彩な企画にメンバーが取り組む本格バラエティ『関ジャニ∞クロニクル』(フジテレビ系)の2本は、ともに2015年5月からスタートし、好番組として高い評価を受けている。そこに『ペコジャニ∞!』が加わり、したがって秋からはグループの冠番組が4本ということになる。


 この4本という数は、現在活動するジャニーズグループとしては最多だ。もちろん、それぞれのグループの活動スタイルは異なるので一概に比較はできないが、テレビの世界において、それだけいま関ジャニ∞が注目されているのは間違いない。


 いまの時代、ジャニーズグループがテレビで活動していくにあたって、冠番組を持つことが大きな目標になっていることは確かだろう。自分たちのグループ名を冠した番組は、テレビのなかで存在を認められた証しでもある。


 とは言え、ジャニーズの歴史を振り返ってみると、冠番組へのこだわりはずっと強かったわけではないように思える。


 1960年代の元祖・ジャニーズには『ジャニーズナインショー』(日本テレビ系)(後に『ジャニーズセブンショー』としてリニューアル)という冠番組があったが、1960年代の後半から70年代にかけてテレビでも活躍したフォーリーブスにはなかった。裏を返せば、冠番組を持つことにそれほど大きな意味があるとは思われていなかったとも言えるだろう。


 1980年代になっても、状況にさほど変化はなかった。1980年代前半に爆発的人気を誇ったたのきんトリオ(田原俊彦、近藤真彦、野村義男)には『たのきん全力投球!』(TBS系)があったが、1980年代後半一世を風靡した光GENJIのようにレギュラーのメインの番組はあっても冠番組というかたちをとらないグループもあった。この時点でも「まずは冠番組を」といったような流れはまだ見られなかった。


 それが大きく変わるのは、1990年代である。


 この面でのパイオニアはやはりSMAPだろう。1996年開始の本格バラエティ『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)の大きな成功によって、後に続くグループの道筋は定まったと言える。それ以降、彼らの後にデビューしたグループにとって冠番組を持つことがひとつの明確な目標になっていった。


 その背景には、テレビ自体の変化もあった。


 1980年代、漫才ブームをきっかけにお笑い芸人がテレビの世界を席巻するようになった。そしてそのなかで中心になったのが、タモリ、ビートたけし、明石家さんまの「お笑いビッグ3」である。三人はそれぞれの冠バラエティ番組を拠点に長くその地位を保ち、次世代のお笑い芸人たちもそれにならった。テレビはバラエティ化した。


 SMAPがアイドルにとって未踏の地だった本格バラエティに挑戦したのは、ちょうどそのようなタイミングだった。その結果、アイドルとお笑い芸人のあいだの距離はぐっと近くなった。アイドルにとっても冠番組を持つことが、ひとつの成功の象徴になった。


 関ジャニ∞も、そんな時代の流れのなかにいる。ただ、彼らの場合、グループの冠番組が増え続けている点が新しい。グループの冠番組が同時に4つになるというのは、ジャニーズの歴史のなかでもいままでおそらくなかったようなことだ。


 しかもその内訳も、トークバラエティ、本格バラエティ、音楽バラエティ、グルメバラエティといったように色合いがそれぞれ違う。いままでは、ひとつの冠番組が中心になるかたちが通常だった。だが最近の関ジャニ∞を見ると、星座のように連なった複数の冠番組を通じてグループの多彩な魅力をアピールする新時代の始まりを予感させる。


 実際、関ジャニ∞自体、多様性がそのままアイデンティティになっているグループだ。「王道」といったようなひとつの枠に収まらず、どんどん活動のフィールドが広がっていくような自由さを感じさせるグループであり、その名の通り「∞(無限大)」と形容したくなるような開放感がある。


 もちろんそのベースには、個性豊かなメンバーの存在がある。渋谷すばるのようにソロで歌手活動をするメンバーがいるかと思えば、村上信五のようにバラエティやMC業で活躍するメンバーもいる。さらに錦戸亮や横山裕、大倉忠義のように俳優として映画、ドラマなどで実績を重ねるメンバーもいる。あるいはお笑いへのこだわりの強い丸山隆平や独特の感性で乙女系とも言われる安田章大などは、とりわけキャラクターが光るメンバーだ。


 そうしたメンバー同士によるグループ内ユニットの充実も関ジャニ∞の特長だろう。バンドとしての活動も精力的な彼ららしく音楽ユニットも目立つなかで、丸山隆平と安田章大による「山田」のような漫才ユニットがあるのも、いかにも彼ららしい。


 そしてなんと言っても、こうした個人やコンビが、グループのなかでいっそう輝きを見せるところに関ジャニ∞の持つ最大の良さがある。それを支えるのが、グループ全体のバラエティ能力の高さだ。関西出身ならではとも言えるボケとツッコミの当意即妙さ、出るところは出て引くところは引く状況判断の確かさは群を抜いている。


 音楽、演技、笑いとなんでもこなす関ジャニ∞のオールマイティさは、ジャニーズの伝統である「なんでもあり」の総合エンターテインメントの流れをくむものだ。そして彼らの場合、その伝統はテレビで大きく花開いた。それはきっと、先ほどふれた1980年代以降のテレビのバラエティ化の流れと彼らのバラエティ能力の高さが上手くかみ合ったからだろう。その点、1990年代後半から2000年代前半のJr.ブームのなかで早くからバラエティでの経験を積むことができたのも大きかったように思う。


 こうしてみると、関ジャニ∞というグループが、ジャニーズのバラエティ進出の歴史とテレビのバラエティ化の歴史の交わる最前線にいる存在であることがよくわかる。これから彼らがジャニーズとテレビの新しい関係をどう見せてくれるのか、楽しみにしたい。(太田省一)