8月17~20日に行われるWRC世界ラリー選手権第10戦ドイチェランドに向けて、参戦するドライバーたちが意気込みを語った。
4月に行われた第4戦ツール・ド・コルス以来の本格的なターマック(舗装路)イベントであるラリー・ドイチェランドは、1982年にヨーロッパ選手権の1戦として初開催。WRCには2002年からカレンダー入りしている。
WRC初開催から2013年までの間は、WRC9連覇を達成したセバスチャン・ローブが全戦全勝。2014年はティエリー・ヌービルが、2015~16年はセバスチャン・オジエが制している。
ラリー・ドイチェランドの特徴は、さまざまな路面/コンディションのステージが用意されている点。週末にはぶどう畑の間を狭い道を抜けるつづら折れのステージや、軍事演習場のような特殊な路面、スピードの出やすい公道ステージがドライバーたちを待ち受ける。
また、舞台となるドイツ南西部の山間部は天候が変わりやすく、タイヤ選択やマシンセットアップにも影響が出てくるほか、ステージによっては出走順が遅いほど路面コンディションが悪化しやすい。
ラリーは17日(木)夜に、ザールブリュッケンで行われる2.05kmのSS1で開幕。このSS1は2台が同時に走行するスーパーSSだ。
翌18日(金)は、ぶどう畑を走るステージをメインにSS2~8の7SSで争われ、19日(土)は軍事演習場が舞台となる“パンツァープラッテ”をハイライトにSS9~17の9SSが行われる。
最終日の20日(日)はSS18~21の4SS。最終ステージのSS21はトップ5にボーナスポイントが与えられるパワーステージだ。
最上位クラスは全チームが3台体制で参戦。シトロエンはレギュラーのステファン・ルフェーブルに代わり、アンドレアス・ミケルセンを起用している。
2017年のWRCは、このラリー・ドイチェランドを含めて残り4戦。ポイントランキングではオジエとヌービルが160点と同点だが、優勝回数の差でヌービルが首位につけている。
このままヌービルが逃げ切り初戴冠を成し遂げるか、それともオジエがシリーズ5連覇を達成するのか。チャンピオン争いの面でも、このラリー・ドイチェランドは大きな意味を持つ。
Mスポーツ/ヒュンダイ陣営のコメントはこちら
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■Mスポーツ
●セバスチャン・オジエ(フォード・フィエスタWRC)
「毎年ラリー・ドイチェランドを楽しみにしているけど、今年はチャンピオン争いが接戦(ティエリー・ヌービルと同ポイント)だから、本当にエキサイティングになるだろう」
「当然のことながら、僕らの目的は最善を尽くすことと、タイトル防衛を軌道に戻すことだ」
「ターマック(舗装路)の戦いに戻るのは、いつでもうれしいよ。そして、ドイツは年間カレンダーのなかでも、もっともチャレンジングな箇所がいくつか存在している」
「難しいラリーだから、SSごとに大きく異なる特徴に合わせて、気持ちをリセットする必要がある。それと、正しいセットアップを見つけなくてはね」
「今年は、いくつか新しいステージもあるから、一層楽しみだ。今シーズン、このフィエスタWRCはターマックでも、いい反応を示しているから、(コ・ドライバーの)ジュリアンと僕はこのチャレンジをとても楽しみにしている」
●オット・タナク(フォード・フィエスタWRC)
「高速のグラベルイベントが僕のお気に入りだけど、ターマックでのチャレンジも楽しみにしているよ。(第1戦)モンテカルロやコルシカ島(第4戦ツール・ド・コルス)での僕たちのペースを考えれば、どうなるか興味深いね。強力な結果を期待している」
「ラリー・ドイチェランドは間違いなく僕の大好きなターマックイベントの1つだよ。ステージごとに特徴が異なるから、刻々と変化する状況に、どれだけ素早く適応できるかが試される」
「この地域の天気は本当に変わりやすいから、ペースノートやウエザークルーたちと密接に連携しながら、各ステージから最新情報を得ることが重要だ」
「現在、僕たちは事前テストの真っ最中で、できる限り多くの道路、サーフェス、コンディションを走っている。マシンのセットアップも重要な要素で、事前テストは、いいラリーをするために重要なんだ」
●エルフィン・エバンス(フォード・フィエスタWRC)
「ラリー・ドイチェランドは、シリーズのなかで僕が大好きなイベントのひとつだ。これまで多くの成功を収めてきたからね。確かにチャレンジングなラリーだけど、そこも僕が楽しめている理由のひとつだと思う」
「いくつもの異なるサーフェスと特徴あるステージに直面するから、場所ごとに正しいセットアップと走行リズムを見つけ出すことが重要だ」
「100%集中して、完璧な走りが求められる。一度でも間違った動きをしたり、少しでも集中が途切れれば、もうチャンスはない」
「天候も重要な要素で、ウエットになれば興味深いバトルになるだろうね。難しいステージに立ち向かう際、考慮に入れるべき要素だ」
■ヒュンダイ/ヒュンダイ・モータースポーツ
●ヘイデン・パッドン(ヒュンダイi20クーペWRC)
「ラリー・ドイチェランドは3つのイベントが合わさって、ひとつのラリーになったような、とてもユニークなラリーだ」
「期間中、僕たちはぶどう畑や一般道、軍事演習場などを走ることになり、そのためラリーはチャレンジングなものになる」
「僕たちは、このラリーで自分たちを高め、ターマックでの自信とパフォーマンスを積み上げるイベントとして使うつもりだ」
「チームの本拠地であるアルツェナウにとても近い点も、僕たちのやる気を高める要素だね」
●ティエリー・ヌービル(ヒュンダイi20クーペWRC)
「ラリー・ドイチェランドは、ドライバーとしてもチームとしても相性のいいラリーだと言える。特にヒュンダイにとっては、2014年にWRC初優勝を遂げた場所で、素晴らしい経験と思い出がある」
「今年のイベントにはチャンピオン争いもかかっているから、新鮮な気持ちだ。先頭走者としてコースに出ることを楽しみにしている」
「いいパフォーマンスが発揮できることを願っているし、ランキングでリードを広げられるよう努力する。簡単ではないけれど、自分たちが上位で戦えるということは分かっているからね」
●ダニ・ソルド(ヒュンダイi20クーペWRC)
「グラベルラリーが続いたから、またヒュンダイi20クーペWRCでターマックを走るのは楽しいだろうね」
「ここ数戦は浮き沈みがあったから、ラリー・ドイチェランドでは一貫性を維持して競争力のある結果を出すことを目指している」
「ドイチェランドはいくつかトリッキーな道路がある面白いラウンドなんだ。ぶどう畑の狭い道を抜けるステージで、ワイドボディの2017年型WRカーを走らせるのは大変だと思うし、天候にも気を配らないとね」
「前向きな心境だし、ドイチェランドで表彰台を狙う準備は整っているよ」
■シトロエン/シトロエン・レーシング
●クリス・ミーク(シトロエンC3 WRC)
「(第4戦)ツール・ド・コルスでは、ターマックでシトロエンC3 WRCにポテンシャルがあることが分かった。ドイチェランドでは異なるチャレンジに直面するけど、テストではいい感触を掴むことができた」
「このイベントでは、大きく分けて3つの路面コンディションに取り組む必要があり、週末を通して天候が安定することは滅多にない。かなり難しい戦いになる」
「ただ、ぶどう畑の間を走るのは本当に楽しいよ。かなり狭く曲がりくねった道をトップスピードで走るから、正確な操作が求められる」
「また最終的にいいポジションを手にしたいなら、スタートからフィニッシュまで全開で進む必要がある」
●クレイグ・ブリーン(シトロエンC3 WRC)
「これまで、このラリーには2回しか参戦したことがないし、WRカーで挑戦するのはこれが初めてなんだ。僕自身の経験には限りがあるけど、ターマックはラリーにおける究極の挑戦のひとつだから、モチベーションは高いよ」
「(第4戦)ツール・ド・コルスで満足できる結果を手にし、ドイチェランドの前には有意義なテストができたから、前向きな気持を維持できている」
「期間中は多くのステージを走るけど、なかでもモーゼルのぶどう畑を抜けるステージを1番楽しみにしているんだ」
「それに日曜日は、誰も走ったことがないステージに直面する。その点も楽しみな要素だね」
●アンドレアス・ミケルセン(シトロエンC3 WRC)
「僕のお気に入りは(第11戦)ラリー・カタルーニャなんだけど、ラリー・ドイチェランドのコースも気に入っているよ」
「C3 WRCで参戦できるのは、とてもうれしいし、僕たちは異なるタイプの地形に向けて正しいマシンセッティングを見つけられたと思っている」
「僕のキャリアで初めて(軍事演習場がある)バウムホルダーでもテストすることができたんだけど、タイヤのマネジメントやブレーキングについて、多くのことを学ぶことができた」
「みんなと同様に、天候がラリーに大きく影響してくると思っている。金曜日がドライコンディションでマシンの感触もよければ、表彰台を狙えるだろうね」
■トヨタ/TOYOTA GAZOO Racing WRT
●ヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタ・ヤリスWRC)
「例年通り、ラリー・ドイチェランドでは雨が降る可能性が高いから、プレイベントテストで雨の走りを経験できたのは良かった」
「ヤリスWRCのターマック仕様は、ラリー・フランス(ツール・ド・コルス)を戦った時とほぼ同じだ。しかし、ドイツのコースはコルシカ島よりもコーナーが少なく、ジャンクションに進入する際は高い速度域からハードなブレーキングになる。ブレーキングはタイムに大きな影響を及ぼすから、テストでは主にブレーキの改善に努めたよ」
「また、サスペンションについても改善を進め、ラリー・フランスの時よりも少し柔らかめのセッティングで走ることになるだろう。ラリー・ドイチェランドは今季もっとも難しいラリーのひとつで、ライバルも非常に手強いから、5位以内に入ることができれば満足だ」
「そして、もし表彰台に上がることができたならば、それは本当に素晴らしい結果だと言える」
●ユホ・ハンニネン(トヨタ・ヤリスWRC)
「ラリー・フィンランド以降、とてもいい調子を保てている。ラリー・ドイチェランドに出るのは久しぶりだけど、今年序盤のラリー・モンテカルロやラリー・フランスなど、ターマックラリーでは速さを示すことができたから、今回も競争力を持って戦えると思う」
「ドイツは天気が変わりやすく、雨が降るとデイ2のぶどう畑内のコースは道に泥が流れ出し、とても滑りやすくなる。デイ2をやや遅めの出走順で走る僕にとっては、チャレンジとなるだろう」
「しかし、ユニークなバウムホールダーのステージなど、ラリー・ドイチェランドはとても面白いラリーだから楽しみだよ」
●エサペッカ・ラッピ(トヨタ・ヤリスWRC)
「フィンランドでは優勝することができたが、ラリー・ドイチェランドに対するアプローチは何も変わらない。自分にとってフィンランドはもっとも馴染み深く自信のあるラリーだったけど、ドイツはある意味真逆だ。さらにWRカーでターマックラリーに出るのも今回が初めてなんだ」
「しかし、ヤリスWRCはレーシングカーのようなフィーリングがあり、グラベル(未舗装路)よりターマックの方が走りやすいかもしれない。エアロダイナミクスを含めたクルマのポテンシャルは非常に高く、エンジンのパワーがタイヤのグリップ力を上まわっているため、タイヤの性能を保ち続けるためには、とにかくクリーンで丁寧な運転が求められるんだ」
「問題なく最後までこのラリーを走り切り、5位以内でフィニッシュしてポイントを獲得することが、今回の目標になる」