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31号車TOYOTA PRIUS apr GT 2017スーパーGT第5戦富士 レースレポート

2017年08月16日 17:12  AUTOSPORT web

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31号車TOYOTA PRIUS apr GT 2017スーパーGT第5戦富士
2017 AUTOBACS SUPER GT ROUND 5 FUJI GT 300KM RACE
開催地:富士スピードウェイ(富士県)/4.563km

8月5日(予選)
天候:曇り コースコンディション:ドライ
観客数:2万1600人

8月6日(決勝)
天候:晴れ コースコンディション:ドライ
観客数:3万3500人

完全復活まであと一歩!
#31 TOYOTA PRIUS apr GTは3位で、今季初の表彰台へ
 全8戦で争われるスーパーGTシリーズの第5戦、「FUJI GT 300km RACE」が富士スピードウェイで開催された。今年もaprは2台のトヨタ・プリウスZVW51を走らせ、「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」を嵯峨宏紀選手と久保凛太郎選手に託すこととなった。

 前回のSUGOから「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」はBoPが改められて最低重量の40kg増加が条件ではあるものの、エンジン本体へのダメージもあったことからリストリクター径が28.32mm×2から昨年と同じサイズの28.70mm×2への拡大が許されることとなった。
 
 開幕戦でこそ10位入賞を果たしてはいたが、続く2戦では低迷が続き……。しかし、本来までとは行かないまでも、エンジンが少なからず元気を取り戻したことで前回の予選は6番手を獲得。
 
 決勝も序盤に久保選手がスピンするハプニングはあったが、6位でフィニッシュ。タラレバが許されるなら、表彰台にも上がっていたかもしれないレースだった。

 今回の舞台、富士スピードウェイは「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」が決して得意とするコースではないものの、まだまだウエイトハンデも12kgと苦しむまでのレベルには達していないことから、前回に続いて入賞を、いや表彰台の獲得に期待が込められることとなった。

公式練習 8月5日(土)8:50~10:25
 SUGO、富士、鈴鹿と続く「真夏の3連戦」の第2幕は、予想どおり厳しい暑さをもライバルとすることとなった。気になるのは天気予報で低いものの、土曜日の降雨が告げられていたことだ。
 
 実際、上空には灰色の雲が浮かんでいた。その一方で、雲の切れ間からは強い日差しが注がれ、路面を焦がしそうな勢いでもあった。しかし、幸いにして公式練習は程よいコンディションで行われたというか。気温は26度、路面温度は29度と、想定よりもやや低めの状態からのスタートとなった。

 最初に「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」に乗り込んだのは嵯峨選手。いつものようにアウト~インを行なって最初の確認をし、そこから短い周回でしばらくセットアップを進めていく。
 
 前回のSUGOでは赤旗中断が相次いだものの、富士はコースもランオフエリアも広いこともあり、セッションは順調に進行。
 
 1時間を間もなく経過、という段階で初めて赤旗が出されるが、その頃には嵯峨選手は長い周回を重ねるようになっており、メニューどおりセットアップが進んでいることが明らかになる。そんななか、嵯峨選手が記したベストタイムは1分39秒311。

 GT300単独のセッションが始まる直前になって、ようやく久保選手が乗り込むことになり、そのまま終了まで走行する予定が、残り2分というところでふたたび赤旗が。そのため、予定より早く走行を終了することとなったが、その間に久保選手も1分39秒994を自己ベストとしていた。
 
 その後に行われたサーキットサファリも久保選手がドライブ。そして終了間際の1周のみ嵯峨選手が走行して、最終チェックも済ませることができた。

公式予選
Q1 8月5日(土)14:35~14:50
天気予報が告げていた弱雨とはされたが、降るとされていたのは予選のタイミング。実際に降り出してきたら混乱も来しただろうが、なんとか灰色の雲は泣き出すことなく、ドライコンディションを保ったままQ1が行われることとなった。

 今回のQ1担当は嵯峨選手。気温は27度、路面温度は33度と、公式練習よりやや上がった程度。

 硬めのタイヤを選んでいたことから嵯峨選手は、「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」のウォームアップは入念に行い、アウトラップに加えて3周を充ててからアタックを開始する。
 
 まずは1分39秒385をマークし、続けてのアタックでは38秒625にまで短縮。その結果、8番手につけることとなり、難なくQ1突破を果たすこととなった。

公式予選
Q2 8月5日(土)15:20~15:32
 Q2を担当するのは久保選手。ここを任され、実際に走行するのは、今季3回目となる。嵯峨選手からのインフォーメイションを受けた久保選手も、ウォームアップは入念に。
 
 同じタイミングからのアタック開始となった。まずは1分38秒399をマークして、この日のベストタイムを更新。さらなるタイムアップを狙って久保選手は、もう1周コースを激しく攻め立てていくも、38秒646を記すに留まった。

 しかしながら、そのタイムは6番手と「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」は、決勝レースを3列目グリッドからすることが決定。得意ではないサーキットにおいて、この順位は大健闘と言うことができるだろう。

嵯峨宏紀選手
「前回の富士と比べると、リストリクターが昨年と同じになったので、プリウスが本来いるべき場所に戻ってきたような気がします。ただ、ライバルとの戦力差が分からなかったので、コンサバな走りに徹し、完璧に内圧を合わせきれていれば、もう少し行けたかもしれませんが、とりあえず落ち着いて走ることができました」

「前回のSUGOのレースはバタバタしすぎた面もあったので、今回は全体で落ち着いたレースをしなくてはならなかったから、そのための予選としてよかったと思います」

久保凛太郎選手
「富士で少しは、元気なプリウスが戻ってきた感じがしました。いいレースができるんじゃないかという期待も持ちつつ、公式練習ではあんまり走れず不安もあったので、嵯峨選手にQ1をお願いして、僕がQ2を担当して」

「正直、不安もありましたが、なんとか6番手のタイムが出せて、まとめきってはいないのですが、やっとブリヂストンタイヤの美味しいところを、ちょっとだけ使えたという印象です。明日は天気がどうなるか分かりませんが、晴れでも雨でも良さそうな気がしていますので、頑張ります」

金曽裕人監督
「6番手というポジションはありがたいポジションというか、欲を言えばJAF-GT勢のトップは獲りたかったというか。でも、5月のレースはパーフェクトなアタックをしてもQ1を通れなかったのに、ここまでパフォーマンスを上げられたのは、チームとして大きな成果を感じます」

「宏紀も凛太郎も、アタックに関しては今、持っているポテンシャルのほぼほぼ、いいところまで出しきれていたような気がします。明日のレースはうまくまとめて、優勝までできるとは思っていませんが、確実に高いポイントを獲得して、まだシリーズを諦めたわけではないので、このいちばん苦手とされる富士で、どこまでいけるかやってみたい。だから作戦も含めて、明日はドラスティックにやっていこうと思っています」

決勝レース(66周) 8月6日(日)15:25~
 決勝レースが行われる日曜日にも上空には雲が浮かんでいたものの、土曜日は灰色だったのに対して白く変化。
 
 これならば、雨の心配はなさそうだ。ゴールデンウイークに比べれば少ないものの、それでも夏休みの真っ最中ということもあり、家族連れの観客でスタンドは満員に。子供たちが、この先も長くレースファンでいてくれることを願わずにはいられない。

 20分間のウォームアップを最初に走行したのは、スタートも担当する久保選手だ。コースオープンとともにピットを離れ、4周を走行。
 
 その間に100Rでオーバーランするも、すぐにコースに復帰、直前には1分41秒101をマークする。そしてピットに戻ってドライバー交代の練習も行い、そこからは嵯峨選手が。やはり4周して最終チェックを済ますとともに、嵯峨選手は40秒983をマークしていた。

「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」がグリッドに並べられた時の気温は29度、路面温度36度は想定の範囲内。まさに上々のコンディションとなっていたことになる。

フォーメーションラップの後、絶妙のダッシュを決めた久保選手ながら1コーナーまでの逆転は果たせず。だが、その進入時にブレーキロックさせてコースアウトしていた車両もあって1台をパス。

オープニングラップを5番手で終えることとなった。そして3周目のコカコーラコーナーで1台を抜き、久保選手は早々に4番手に躍り出ることに。

 その後、トップのBMWだけが逃げる格好となったが、2番手争いは白熱。4台が一列に並ぶも、あえて攻めの姿勢に出ることなく久保選手は周回を重ねていった。
 
 それが何を意味していたかは、間もなく明らかになる。上位陣では最も早い22周目に「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」はピットイン。タイヤ無交換として21.7秒という最小限のロスで、嵯峨選手はコースに送り出されたからだ。
 
 熱の入ったままのタイヤということもあって、アウトラップのペースも速く、約20秒を稼ぐことに成功。

 トップのBMWがドライバー交代を行なってコースに戻った35周目には、嵯峨選手は事実上の2番手に立ち、その段階で3秒以上の差を徐々に詰めて、やがて背後に迫るまでとなる。が、トップのタイヤに熱が入るとペースは上がり、次第に遅れをとるようになっていた。
 
 さらにメルセデスも近づいてきて、しばらくの間、激しい攻防は続いたものの、トップのBMWにしてもFIA-GT3勢とはベースの速さが異なることから、無理は禁物と嵯峨選手は判断。41周目のレクサスコーナーでインを差してきたメルセデスに対して、あえて閉めることはせず。

 これが好判断だったことは、ゴール間際に同じJAF-GTのスバルも近づいてきたことで証明される。もしBMWやメルセデスに対して必死に抵抗して、自分のペースで走れなくなっていたなら、追いつかれて、極端な話、抜かれていた可能性とてなかったわけではないからだ。
 
 そのスバルは結局、3秒差までに来ていたが、嵯峨選手は難なく逃げ切りに成功。「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」は3位でフィニッシュし、嵯峨選手にとっては今季初の、そして久保選手にとってはデビュー2年目で、正真正銘初めて表彰台に上がることとなった。

 次回のレースは3周目に控える鈴鹿、そして伝統の1000kmとしては最後の開催となる。大量得点も可能な一戦、現在の「#31 TOYOTA PRIUS apr GT」のポテンシャルを持ってすれば、ミスなく走りきれたならば今回以上の成果も期待できるはず。今年いちばんのビッグレースとなることが、大いに期待される。

嵯峨宏紀選手
「今回はとにかくタイヤ温存ということで決勝は前半も後半も、タイヤをいたわる状態で走っていました。最後の方でメルセデスに追いつかれてしまいましたが、ペースがあまりにも違いすぎたので無理に閉めることなく、自分のペースでレースを続けた結果、スバルに追いつかれずに済んだので良かったです」

「今年からチームメイトが新しくなって、またBoPの影響も大きくて前半戦はドタバタしましたが、今回ようやく表彰台に戻ってくることができたので、今後のプリウス31号車の活躍、そして凛太郎の成長、いろんな部分で期待してもらいたいと思います。次の鈴鹿1000kmにもチャンスはあると思うので、御期待ください!」

久保凛太郎選手
「去年1年間、アルナージュレーシングで走らせてもらっている時、ひたすら無交換の第1スティントやっていたので、それしかレースしたことがなかったものですから、やり方は理解していて(苦笑)。

「そのなかでブリヂストンのタイヤとプリウスというパッケージで、どう温存しようかなというのを、ずっと考えていました。公式練習やウォームアップでずっと走って、確かにタイムの落ちも少ないから、行けるだろうとは思っていましたが……」

「いざ決勝をスタートしたら、ちょっとやばいかもと思った部分はありましたが、嵯峨さんがしっかりとつないでくれたので、こういう結果を得ることができました。初めての表彰台で号泣するかなと思ったのですが、そんなに泣けなかったので、優勝して号泣したいと思っています」

金曽裕人監督
「作戦も含めて、予定していたことがすべてできて、今の富士でJAF-GTとして3位まで行けたのは、すごい成果だと思っています。ドライバーもよく頑張ってくれましたし、何においてもブリヂストンのタイヤが交換せずとも同じタイムを刻むことができた。確かに交換する手もありましたが、HWをたくさん積んでも速いFIA-GT3勢との違いも含めて、簡単に抜けるような状況ではなかったので、作戦も含めてすべて理想的に進んだんじゃないかと思います」

「宏紀も凛太郎も、こちらからの指示どおりのことをしてくれましたし、非常にいい仕事をしてくれました。次の鈴鹿1000kmでは上位陣はHWが重たい状況なのでここぞとばかりに大量得点を狙いに行きます。期待していてください!」