モータースポーツ界でも世界的に浸透の気配を見せる電気自動車への移行は、ラリークロスにも波及。WorldRX世界ラリークロス選手権が、2020年を目処にフルEVクラスの創設を視野に入れていることが明らかになった。
FIAの世界選手権であるWorldRXのプロモーターを務めるIMGは、FIAと参戦マニュファクチャラーの間で、このカテゴリーにも電動化技術の進出を進める方向性であることを確認。現行のトップカテゴリーとなるスーパーカー・クラスとは別に、フルEVクラスの創設を視野に入れている。
「我々はすでにいくつかのマニュファクチャラーと話をしており、FIAとも今後のビジョンについて有益な意見交換を進めている」と語るのは、WorldRXのマネージング・ディレクターを務めるポール・ベラミー。
「本格導入の2020年を前に、なんらかの形でプレ・クラスの創設を検討する必要はあると思うが、どのようなコンセプトにするか、マシンの技術仕様はどのようなものが最適か、そして現在の選手権イベントの週末にどのように適合させていくのかを議論している段階だ」
北米で人気を集めるもうひとつのラリークロス・シリーズであるGRC(グローバル・ラリークロス選手権)は、すでに2018年からのEVクラス創設を明言しており、今季後半からは同クラスを『E/RACING』と呼び、テスト的な運用を開始するとも言われている。
一方、WorldRXにペター・ソルベルグ率いるPSRXとのジョイントでワークス参戦するフォルクスワーゲンは、2016年初頭からラリークロスの電動化を本格的に検討、推進していたことが明らかとなり、その後、オーストリア出身の元WRCドライバー、マンフレッド・ストールが運営するSTARDが、同カテゴリーに向けた世界初のエレクトリック・ラリークロス・スーパーカーを開発、テストしてもいる。
このテストに使用されたプジョーを筆頭に、フォルクスワーゲン、アウディなどはいずれもワークス体制でWorldRXをサポートしており、前出のベラミーによれば、技術的にもフォーマットに最適なEVマシンこそ「メーカーが望んでいるものだ」と語っている。
「4セッションの予選ヒートは4周、セミファイナルとファイナルは6周。航続距離を心配する必要がなく、セッション時間も短いことから熱害の心配も少ない」
「そして何より、我々が日常生活で目にする各社の主力ハッチバック・モデルたちがそのままレースを繰り広げるのだから、彼らがそれをどう役立てるかを検討する価値があるのは一目瞭然だ」
ただし、ベラミーは現在のトップカテゴリーである内燃機関のスーパーカー・クラスとの混走は考えていない、ということも付け加えた。
「もちろん、性能的に競合しないことも含め、同一クラスでの混走は考えていない。あくまで同じ週末の別クラスでの運用になるだろう。パワフルな内燃機関をトップクラスに据えておくのは、我々にとっても非常に重要なんだ」
「現行のレギュレーションの策定と運用に多額の投資をしてきたので、ここから離れるつもりはない。現在のフォーミュラEがF1にはなり得ないように、RXスーパーカーも、エレクトリック・ラリークロスに取って代わられることはないだろう」