2017年からオートスポーツwebナビゲーターに就任した水瀬きいさんに、レーシングドライバーに突撃インタビューをしてもらうこの企画。第9回目は、いよいよ日本を飛び出し世界で活躍しているドライバーに突撃です。今季GP3で戦う福住仁嶺選手、そしてFIAヨーロピアンF3で戦う牧野任祐選手のふたりを、遊びに来ていたスーパーGT第5戦富士でキャッチ! いろいろ聞いちゃいました。
じつは、きいさんと福住選手、牧野選手は以前カートで戦っていた頃から、大阪で顔なじみだったんだそうな。なので、今回の突撃インタビューは“きい姉さん”が若者ふたりに聞く感じの、けっこうくだけた雰囲気に。しかも、このインタビュー直前にきいさんはなぜか目の下を蚊に刺され、一同ミョーに気になるなかでトークがスタートしました。
■海外ひとり暮らし。困ることもいろいろと……
水瀬きい(以下きい):では、おかえりなさい!
福住仁嶺(以下仁嶺):ただいま。英語で言うと……。
牧野任祐(以下任祐):I'm Back.
仁嶺:そう。I'm Back.
きい:では、仁嶺くんが海外2年目で、任祐は1年目。海外生活はどうですか?
任祐:それより、目の下めっちゃ腫れてるんですけど。大丈夫?
仁嶺:それ写真に撮ってアップした方が、僕たちのインタビューよりアクセスあると思いますよ。
きい:そんなに?
任祐:そんなに。心配でインタビューどころじゃないですわ。このインタビューは、なぜそんなところを蚊に食われたのかについてやりましょう。
<以下、3分ほど蚊に刺されたことについて続くので省略>
きい:はいはい。きいの顔のことはいいんです。で、海外の生活はどうですか?
任祐:そんなに変わらんよね。
仁嶺:海外でもそんなトコ蚊に刺されることはないですね(笑)。 えーと、僕は海外生活2年目で、フランス語は正直あまり勉強はしていないんですが、チームの人にヘンな言葉ばっかり教えてもらってますね(笑)。
きい:もう洗濯機の使い方は分かった?
仁嶺:おかげさまで(笑)。去年、きいさんに電話したんですよ。洗濯機の使い方が分からなくて。フランス語だったので、きいさんなら分かると思って。
任祐:逆に、オレがいま分かってなくて、仁嶺に聞きました。
仁嶺:そうなんです。でも『英語だからできるやろ』って言ったら……。
任祐:ドイツ語やったんです。イギリスなのにドイツの洗濯機のメーカーで。しかもIHの使い方も分からなくて。
きい:海外のひとり暮らしで、なにか料理は作る?
仁嶺:基本的にひとりでいる時間が多いので、朝起きて午前中に簡単にタマゴとかブレッドを焼いてますね。自分ができる料理はしてますよ。
任祐:ブレッドって。オシャレか。
仁嶺:んで、コイツはオムライスが好きなんです。で、オムライスたまに作るんです。けっこう簡単じゃないですか。作って写真を送りつけてます(笑)。
任祐:オムライス作られへんね~ん! 食べたいんだけど。
仁嶺:料理は楽しいですよね。
任祐:い~や。楽しくない。
きい:はいはい。任祐の料理の話はもういい。どうせレトルトでしょ?
任祐:ちょっとくらい聞け(笑)。スープ作ったんですよ。トマトベジタブル……野菜いろいろスープ。トマト缶と、コンソメスープの素とか入れて作ったんです。
仁嶺:そう。で、僕に写真送ってきて自慢するんです。しかもまあまあ美味しそうなんですよ。
■難しいのはブレーキ!? ふたりの2017年シーズン
きい:えっと、もう料理の話はいいです。レースの話して。
任祐:オレはもうこのままゴハンの話でいいねんけど。
仁嶺:彼はレースの話あまりしたくないみたいですね(笑)。僕は今シーズンが2年目で、自分なりにプレッシャーもあったんですけど、開幕ラウンドのバルセロナで優勝して、いい流れでシーズンに入ることができました。その後のレッドブルリンクでは予選は良くなかったんですけど、2戦連続で表彰台。シルバーストンではトラブルもあってポイントは獲れなかったけど、その後ブダペストでまた表彰台に乗れて。すごく安定して戦えている前半戦ですね。でも、僕なりにまだ改善するところはあります。予選ではもっと前にいきたいですし、ポールポジションがないので、ポールを意識して後半戦に臨みたいです。
きい:去年と比べて、クルマは変わりましたか?
仁嶺:今年はDRSが導入された影響もあって、前後のダウンフォースが増えたんですよね。それでクルマのバランスが変わって。タイムにしたら1秒は変わらないですけど、去年よりも速くなりましたね。
きい:ドライバーとして、去年より気をつけることは増えましたか?
仁嶺:去年は初めてのヨーロッパで、いっぱいいっぱいで失敗も多く、まわりが見えていないところもありました。今年はプレッシャーはあるけど、まわりを見てレースができている感じはします。でも、正直チームメイトもみんな速いし、そのなかでも一番じゃなければいけないと思っているので、そこは自分なりに課題にしているところです。
きい:仁嶺くんはマジメに応えてくれましたが、任祐は? レースは楽しめているの?
任祐::ん~。楽しいは楽しいですけど、結果的にこうして怪我して(ノリスリンクで手首と人差し指の付け根を複雑骨折)日本に帰ってきて手術もしてますし、今は『早く乗りたいな』と思っています。でも現実的に結果が出ていないし、日本のF3と比べてもレベルが全然違う。今のヨーロピアンF3は若い子がいっぱい集まって、みんなF1のテストをしてたりレベル高いところでやっているので、そこで自分の足りないところも分かった。いまは自分の走りができているとは全然思わないし、いろいろ悩んでやってきて、ちょっとずつ良くなっていたところで怪我してしまったんですよね。
仁嶺:自分の課題はやっぱりブレーキ?
任祐:そう。ブレーキ。シーズンオフのテストでは全然大丈夫だったんですけど、モンツァくらいからずっとブレーキがおかしくて。モンツァは片効きだったりで根本的におかしかったんですけど、その後も全然自分のフィーリングと合わなくて、何してもダメ。ブレーキだけで全部負けている感覚なんですよね。しかも、それがまた日本のフィーリングと違うんですよ。日本では自分はブレーキがいちばん良かったんです。次回変えられるので、それがいい方向にいけばいいかな……とは思っていますけど。
仁嶺:僕も海外でF3もたまにテストするんですけど、走っていてたしかに難しいです。どう難しいかはなかなか表現できないんですけどね。
任祐:使っているものも違うんですよ。マスターシリンダーとか、パッドも違うので。去年日本で使ってたものを聞いたりして、合わせて次にテストできれば……と思っています。とにかく僕の場合、ぜんぶブレーキです。
仁嶺:去年の僕もブレーキはすごく課題でした。予選はいいんですが、レースではなかなか。みんな毎周ギリギリ限界でブレーキするので、それを僕はなかなかできなかった。
きい:任祐は現実的に、いつくらいからレースに復帰予定?
任祐:再来週のレース(ザントフールト戦)にたぶん。
仁嶺:僕はぜったいキツいと思うけど。
任祐:いや、でも出なあかんねん。それはいろいろあるんですよ。
■イギリス人同士の英語は聞き取れない!
きい:ヨーロッパでレースを戦うにあたって、言葉や文化でとまどうことはなかったですか?
任祐:言葉は正直、最初はありましたね。僕はチームがイギリスなので、普通に話していたら分かるんですけど、ミーティングとかでは調子が悪いときにみんなヒートアップして早口になって、ワケ分からなくなるときはありますね。
きい:コースはすぐに覚えられましたか?
任祐:それは大丈夫でした。でも、海外のコースは基本的にミューが低いですよね。日本のコースはめちゃくちゃいいんだな、と思いましたね。キレイだし、あまり跳ねないし。シルバーストンの1コーナーとかすごくない?
仁嶺:ボトミングがハンパないっす。跳ねすぎてアンダーかオーバーかも分からないくらい。そこはF3の方がいいかも。僕も言葉の壁はあって、英語も最初は厳しかったですけど、基本的に人としゃべるのは苦じゃないので、あとはひたすらしゃべりました。チームメイトにも恵まれて、その家に行ったりして、家族としゃべったりしていましたね。それで良くなったと思います。でも、イギリス人同士がしゃべってる英語はホント分からない(泣)。
任祐:それが僕の環境です(泣)。
仁嶺:日本語で言ったら、若者同士がしゃべってる感覚というか。
任祐:オレらでもあるやん。大阪弁と標準語とか。
きい:えーと、最近の趣味とかは? 海外にいると、自分の趣味もうまくできなかったりするじゃない?
任祐:たしかに。僕は休みの日は散歩です。
仁嶺:変わってるな。僕は音楽が好きなので、休みの日はずっと聞いてます。僕はレースがダメだったら、音楽の仕事したいと思っているんです。僕の父がもともとドラムをやっていて、バンドを組んで曲も作っていたんですが、売れなくてお坊さんになったんです。僕もお坊さんの道があるかもしれませんが、今のところはそちらに興味がないので(笑)。
きい:なにか仁嶺くんの最近のオススメは?
仁嶺:僕、昔はロック系が好きで、リンキンパークをよく聴いていたんですが、ボーカルのチェスター・ベニントンが亡くなってしまったので、最近はまた聴いています。
任祐:オレも洋楽ですね。海外まで行って日本の曲はあまり聴かないですね。
仁嶺:海外だとカラオケに行けないじゃないですか。なので、クルマのなかで歌うのをよくするようになりました。
任祐:あ、それ分かる(笑)!
きい:それでは、最後に今年、そして将来の目標をぜひお願いします!
任祐:まず、目先のいま出ているレースである程度結果を出さなければいけないと思っています。怪我までして、いまより悪くなることはないと思うんですよね。悪いものは全部はき出したと思っているので、後半戦こそうまくやっていけたらと思っています。
仁嶺:僕はある程度自分の課題も見えてきていますし、今年うまく結果を残すことができれば、来年また繋がると思います。牧野くんが言ったとおり、目先のことをしっかりと大事にしてレースをしていけば、その後に繋がると思います。来年、ひとつだけでもステップアップできればと思います。
きい:はい! ありがとうございます。では最後に言い残したコトは?
任祐:その蚊に噛まれてるのがホンマにすごいなと(笑)。
<編集部から>
というわけで、きいさんがゲットしてくれたのは、F1を目指しヨーロッパで戦うホンダの若武者ふたり。ふたりは同い年で、切磋琢磨する間柄ですが、とても楽しくトークを展開してくれました。福住選手はさらに上を、そして牧野選手も、昨年みせてくれた輝きをふたたび期待しています!
福住仁嶺
1997年1月24日徳島県生まれ。レーシングカートで多くのチャンピオンを獲得し、SRS-Fを2013年に卒業。2015年にはHFDP RACINGから全日本F3に参戦しシリーズ4位。2016年からヨーロッパに活動の場を移し、GP3に参戦を開始した。今季は開幕戦で初優勝。以降も表彰台を多数獲得し、波に乗っている。
牧野任祐
幼少期からカートに挑戦。数々の実績を残し、2014年にはスーパーFJ岡山シリーズチャンピオン、日本一決定戦優勝等を獲得。2015年は1年目のFIA-F4で坪井翔と激闘を演じた。16年は全日本F3に参戦し5位。また、スーパーGTでもGT300で鈴鹿、GT500で2戦を戦い、鮮烈な印象を残し今季からヨーロピアンF3に参戦している。