ハンガリーGPの日曜日のお昼、フェラーリの「メディア・ユニット」と呼ばれるモーターホームでランチを摂っていたら、「同席していいか?」と言って、一緒のテーブルに座って来た男がいた。元世界チャンピオンのジャック・ビルヌーブだ。
イタリア語も堪能で、スカイ・イタリアのテレビ解説もしているビルヌーブがフェラーリのモーターホームでイタリア料理を食べることは決して珍しくない。だが、元世界チャンピオンなら、フェラーリのメディア専用である「メディア・ユニット」で提供されているビュッフェ式ランチでなくても、ほかのモーターホームできちんとしたコース料理だって食べられたはずだ。
現在、F1のパドックでメディアにランチを提供しているチームは、4チーム。メルセデス、レッドブル、フェラーリ、そしてマクラーレンだ。いずれも予算が豊富なビッグチームだ。
これらのチームのモーターホームはすべてのメディアに対して、ランチを提供しているため、ビュッフェ式となっている。これに対して、ビッグ4チーム以外のランチは限られたメディアのみに対応しているが、きちんとしたコース料理となっている。
ビルヌーブは、この限られたメディアに属しており、どこへ行ってもコース料理のランチを摂ることができる。ただし、ハンガリーGPでは、あるチームがビルヌーブを出入り禁止にしていたのである。それはウイリアムズだ。理由は、ビルヌーブが開幕前からウイリアムズのルーキーであるストロールに対して、「F1史上最悪のルーキー」などと酷評を繰り返していたからだ。
しかし、F1チームが特定のメディアを出入り禁止にするというのは、前代未聞。しかも、ビルヌーブはウイリアムズにとって、最後の王者である。ビルヌーブはだれから出入り禁止を伝えられたかについては言明しなかったが、それがストロールの父親のローレンスであることは想像に難しくない。
かつて所属していたチームからの非情とも言える対応を、ビルヌーブは次のように嘆いていた。
「私はメディアとして、自分の意見を述べているだけ。私が批判したのはランスだけではない。マックス(・フェルスタッペン)にもかなり辛辣なコメントを言い続けてきたが、レッドブルから出入り禁止と言われてことはない。本当に悲しいね」
辛口のコメントで知られているビルヌーブ。ウイリアムズには、「ビルヌーブに批判されているうちが花。批判もされなくなったらおしまい」だというぐらいの懐の深さを見せてほしいものである。