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窪田正孝『僕たちがやりました』、なぜ熱狂的ファンを獲得? 関西テレビ“攻めの姿勢”の狙い

2017年08月15日 10:12  リアルサウンド

リアルサウンド

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 はっきり言って視聴率は振るわない『僕たちがやりました』(フジテレビ系、関西テレビ)。しかし、『ザテレビジョン』(KADOKAWA)の「視聴熱ランキング」(SNSなどの盛り上がりを数値化したもの)でトップに立つなど、見ている人の熱は高い。


参考:新田真剣佑は夢を持ったひとりの少年だったーー『僕たちがやりました』衝撃の展開みせた第4話


 視聴率トップの『コード・ブルー』(フジテレビ系)は、過去のヒット作であり、山下智久、新垣結衣、戸田恵梨香、比嘉愛未ら豪華キャストを配した「手堅い安全策」と言っていいだろう。一方、『僕たちがやりました』は、29歳の窪田正孝を高校生の主役に据え、バイオレンスとエロをふんだんに盛り込んだ「イチかバチかの危険策」だ。


■低迷が続くフジテレビの救世主に


 ここでスポットを当てておきたいのは、制作の関西テレビ(通称「カンテレ」)。テレビ業界がコンプライアンスやクレームを気にするあまり、表現の自主規制を進める中、カンテレは別次元をゆくチャレンジを見せ続けている。


 たとえば今年放送の作品では、韓流リメイクの続編をオリジナルで作った『嘘の戦争』、規格外のアクションと後味の悪い結末にこだわった『CRISIS 機動捜査隊特捜班』、そして今期の『僕たちがやりました』と、攻めに攻めている。


 その他、近年の作品も、菜々緒がサイコパスな整形女を演じた『サイレーン』、木村佳乃の悪女ぶりとジェットコースター的な急展開で引きつけた『僕のヤバイ妻』、朝ドラ後の波瑠を猟奇犯罪者と対峙させたホラーテイストの『ON 異常犯罪捜査官・藤堂比奈子』など話題作ぞろい。視聴率以上にネット上の反応は大きく、低迷が続くフジテレビを救う存在となっていた。


■話題性ではなく、スリルやドキドキを狙う


 かつては夏の定番だった学園モノが、今ではそれだけで希少価値が高い。そして最も注目したいのは、前述したバイオレンスとエロのシーン。1話から壮絶なイジメとケンカを真っ向から描き、2話以降では17歳の永野芽以と元アイドルの川栄李奈のキスシーンを放送している。当然ながら批判的な声があがっているが、カンテレが屈する様子は見られない。


 同作が原作漫画を忠実に再現していることを踏まえると、バイオレンスもエロもますますエスカレートすることが予想される。ただし、それらは決して単なる話題性狙いというわけではなく、視聴者がドキドキやスリルを感じ、登場人物に感情移入してもらうためのものに違いない。視聴者は回を追うごとに、バイオレンスとエロのシーンが「未熟な高校生の成長物語」の前振りとなっていることに気づき、終盤の感動につながるのではないか。


 TBSの22時枠は『逃げるは恥だが役に立つ』の大ヒット以来好調だが、カンテレの奮闘でドラマ好きの間では、「火曜日はドラマを見る日」として認知されている。今後もカンテレとTBSが切磋琢磨することで、「火曜は面白いドラマがあるから早く帰ろう」という人が増えるのではないか。とにかく、今後もチャレンジングな作品に期待したい。


■木村隆志
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月間20数本のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などに出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。