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「チャットアプリのつもりだった」経営者逮捕…なぜ「出会い系アプリ」と判断された?

2017年08月12日 10:43  弁護士ドットコム

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スマートフォン向けの「出会い系アプリ」を運営したのに、管轄の公安委員会に届け出なかったとして、川崎市のアプリ開発会社の経営者ら男性2人が8月上旬、出会い系サイト規制法違反(無届け)の疑いで愛知県警に逮捕された。


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報道によると、2人が運営していたのは、「ツートーク」というアプリで、ユーザーはチャット相手を募集して、出会った人とメッセージのやり取りができるというもの。2人は2016年10月~2017年4月ごろ、神奈川県公安委員会に届出ないまま、インターネット異性紹介事業を運営した疑いが持たれている。


このアプリは現在、サービスを停止しているが、昨年、アプリを利用した児童が買春などの被害にあう事件が発生していたという。一方で、逮捕された経営者の男性は「出会い系ではなく、チャットアプリのつもりだった」などと容疑を否認しているという。出会い系アプリとチャットアプリはどう違うのだろうか。奥村徹弁護士に聞いた。


●チャットアプリでも「出会い系サイト」に該当する可能性がある

「いわゆる『出会い系サイト』については、児童・青少年に対する性犯罪・福祉犯の増加を理由として、『出会い系サイト規制法』(インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律)が設けられています。


事業者の届出制や児童の排除、児童への誘引行為の禁止が定められています」


出会い系サイトはどう定められているのだろうか。


「この法律では、『出会い系サイト』(インターネット異性紹介事業)を次のように定義しています。


『異性交際(面識のない異性との交際)を希望する者(異性交際希望者)の求めに応じ、その異性交際に関する情報をインターネットを利用して公衆が閲覧することができる状態に置いてこれに伝達し、かつ、当該情報の伝達を受けた異性交際希望者が電子メールその他の電気通信を利用して当該情報に係る異性交際希望者と相互に連絡することができるようにする役務を提供する事業』(同法2条2号)。


要するに、この定義にあてはまる限り、チャットアプリやSNS、掲示板であっても、異性紹介に関する情報が主になった場合、法律の要件を満たしてしまうことが起こりえます。


その場合、『出会い系サイト』として規制を受けて、届出義務が生じます。そのため、検挙された管理者からは『出会い系サイトになるとは知らなかった』という弁解が出てくることがあります」


つまり、チャットアプリの運営であっても、その実態によっては「出会い系サイト」とされる可能性があるということだ。


「警察庁が公表している『インターネット異性紹介事業』の定義に関するガイドラインでも、いわゆる結婚相談サイトやSNS、趣味サイト、メル友サイト、利用者同士が直接会うことを禁止しているサイト、『恋愛相談』を目的とするサイトであっても、運用実態に照らして、法律上の『インターネット異性紹介事業』(出会い系サイト)に該当する可能性があるとされています。


インターネット上で、不特定のユーザーが接するサービスを提供するにあたっては、法律上の『出会い系サイト』に該当するかどうかを留意して、該当しないように仕様変更するか、届出をおこなうなどの対応が必要だと思います」


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
奥村 徹(おくむら・とおる)弁護士
大阪弁護士会。大阪弁護士会刑事弁護委員。日本刑法学会、法とコンピューター学会、情報ネットワーク法学会、安心ネットづくり促進協議会特別会員。
事務所名:奥村&田中法律事務所
事務所URL:http://www.okumura-tanaka-law.com/www/top.htm