ウェブメディア運営事業などを手掛けるインフォバーングループは8月1日、「リア充手当」の支給など、複数の施策で働き方改革を進めると発表した。
リア充手当は、「毎月の残業時間目標値に伴う会社全体の残業手当をあらかじめプールしておき、実際に発生した支給額がそれを下回った場合、余った金額を対象社員に還元」するもの。実働時間がそのまま残業代として支給されるすべての社員を対象に、2017年7月から導入されている。
全員で削減した残業時間分が手当の原資 残業時間が少ないほど得する制度
例えば、全社共通で一人あたりのひと月の目標残業時間を30時間と設定し、対象社員が10時間の残業で乗り切ったとする。削減に成功した20時間分の残業代は手当の原資となるが、他の社員が目標を超過し35時間働いた場合、超過した5時間分が原資から差し引かれる。こうして最終的に残った分を「リア充手当」として再分配する仕組みだ。社員全員が目標を達成すれば、実働残業時間に関わらず満額支給されるため、得するからくりになっている。
業務を多く抱える社員を周囲が助け、仕事を分散することで、全員で残業時間を減らそうという意識の醸成にも繋がっていると、同社人事担当者は言う。
「全社で負荷分散がうまく進めば、メンバーのリア充手当が増えるので、みんなで早く帰れるように頑張ろうよ、という共通の目標を持つことができます。社員は前よりも効率化を意識し、退社時間も早まるようになりました」
ちなみに、リア充手当の名称は「早く帰って、プライベートも充実させよう」という意図で、仮でつけていた名前がそのまま採用になったそうだ。
「名前自体が社員にウケているのかどうかはわかりませんが、名前はあっという間に浸透しましたので、そういう意味ではシンプルでよかったと思います」
基本給引き上げも 働き方改革は、優秀な人材獲得に向けた戦略
こうした仕組みを導入した背景には、長時間労働を削減することで、優秀な人材の獲得に繋げたい、という思いがある。リア充手当の実施に加え、従来支払われていた残業手当の減少が見込まれることから、社員全員の基本給を平均5%以上引き上げた。
組織編制の見直しも行った。組織運営に関わる役職はこれまで経営陣とマネージャーだけだったが、4月からはマネージャーの下に複数のチームを作り、それぞれにリーダーを配置。小編成のチームを作ることで、これまで目が届かなかった社員への細かなケアも行える体制を整えた。
担当者は、リーダー制は新卒社員の教育上でも効果があったと振り返る。例年と同じショートジョブローテーションでの研修内容に加え、リーダーによる独自の新卒研修を実施したところ、新入社員から「あんな先輩になりたい!」という声が出ていたと言う。先輩社員との距離が近くなることで、ロールモデルを見つけやすくなったのかもしれない。
同社はホームページ上で一連の制度改革について「デジタルメディア全体のクオリティの上昇と生活者の満足を実現し、それを活用する広告主様のデジタルマーケティングの発展へとつなげたいと考えております」と説明している。