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GUが本気でファッションを始めた!

2017年08月11日 19:43  Techinsight Japan

Techinsight Japan

ユニクロとGU、ここにきて違いが明確に
今の時期、夏物セールも終盤に入り、どのお店も秋冬新作が店頭に並んでいます。真夏に秋冬物は見ているだけで暑苦しいものですが、新しいシーズンのトレンドを知るうえで立ち上がりはとても重要です。見るだけでも今後のお買物に役立ちますし、トレンドを読み解く目も養えるので新作チェックはお勧めです。そんな視点で秋冬物をチェックしていたところ、あのGUが驚きの新作を打ち出していました。GUが「本気でファッションに取り組み始めた証」と言っても過言ではないでしょう。

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【大衆の支持を得た結果、“ファッション”を失ったGU】
GUのブランド立ち上げ当初、GUとユニクロのコンセプトはきっちり棲み分けされていました。ユニクロは『流行に左右されないベーシックなデザイン、ターゲットは老若男女、高品質で高機能な商品をユニクロ価格で提供する。』。一方のGUは『ユニクロより安い価格、ユニクロのベーシックに対しトレンドやファッション性を追求、ターゲットは10代~30代、とにかく安さにこだわってトレンドアイテムをGU価格で展開する』といったように商品のテイスト、ターゲットや価格の設定などこのふたつのブランドには分かりやすい違いがありました。

しかしその後、ユニクロは海外の有名デザイナーとコラボしファッション性を打ち出すようになり、GUもユニクロの商品と似たようなデザインのトップスやボトムを展開したりと両者の違いがどんどん曖昧になりました。結果「GUの方がユニクロより少し安くてちょっと若向き」という以外、両ブランドの間に大きな違いを感じることがなくなりました。

昨今のガウチョやスカンツの大流行もGUが打ち出し、その後ユニクロも展開しましたが、GUの価格が安かったことで10代からシニア層まで販路が広がり爆発的な流行となりました。街行く人にかなりの確率でガウチョやスカンツを見かけるといった現象を生み出したのですから、GUの人気と影響力は凄いものです。サイズが豊富、身体を締め付けない着やすさ、そしてコスパも良い、GUにはまさに日常着として私達が望む要素が全て込められていたのです。しかし、それはあくまでも日常着としての話。GUは“ハレの日”に着る服ではなかったのです。

2016年10月決算会見でGU社長の柚木治(ゆのき おさむ)氏が「ファッションは大衆化するとファッションじゃなくなると言われる。そんな常識を超えたい」と語っていましたが、まさにガウチョやスカンツの大流行などGUが多くの人に支持されたことにより、逆にGUのファッション性が大きく削がれてしまうという皮肉な結果となったのです。

【GUが変わった!】
そんなGUの秋冬新作がなぜ衝撃だったのか、それにはまずこのフレーズを見て頂きたいと思います。

■『THE GENTLE WOMAN この秋、カッコイイ女が主役になる。』
■『クールだけど佇まいはしなやかで、内に秘めた芯の強さがある。2017年秋冬シーズン、なりたいのはそんな人』
■『フェミニン×マスキュリンを絶妙にミックスすれば、トレンド最先線に立つ、最新のジェントルウーマンになれるはず』


これはGUの商品広告にあった言葉ですが、まずコンセプトが明確で秋冬のハイファッションのエッジの効いた部分を押さえていることに驚きました。「ファッションを売ること」イコール「単に服を売ること」ではありません。そのデザインのコンセプトや背景、デザイナーの思いなどが付加価値となってファッションが生まれます。今までのGUはそれぞれアイテム毎のテイストやコーディネートの説明はありましたが、スタイルとしての付加価値やデザインの背景などは見られませんでした。ただ流行りのアイテムをお安く提供する、それに尽きていたように思います。しかし今季は明確に商品コンセプトが打ち出され、さらにダブルのジャケット、ワイドパンツ、グレンチェックの柄といった、旬なトレンドと大人びたモード感のあるテイストも登場しました。


これらは今までのGUからは想像もつかない展開です。ファッションの最先端を商品コンセプトにしたあたり、GUの「本気でファッションを展開していく」という意気込みが感じられました。しかも、見た目だけでなく着心地もカッティングも本当に良く出来ていて、着た感じがブランド品と見劣りしないのです。


「この商品を着る」と想像した時に、合わせたい服がすぐに浮かんだり、着ている自分が旬な雰囲気になると感じたり、コンセプト通りジェントルウーマンでカッコイイ女性になれると思える。要するに服を着ることでワクワクして気分が上がりハッピーになれる、これこそがファッションではないでしょうか。日常着は制服のようで着ていて安心するけれど、ワクワクして気分が上がることはありません。このワクワク感を取り入れた、思い切った商品を打ち出してきたという事実に、「ファッションに大きく舵を切る」というGUの強い決意が垣間見えます。


日常着ではない“ハレの日”に着たくなるファッションの提案、そして去年の春にロンドンに研究拠点を立ち上げ「GUは日本発のファストファッション。このコンセプトはありそうでなかった」と明言した柚木社長の言葉通りに「そこに行けば必ず気分が上がって思わず買ってしまう商品がある」。そんな日本を代表するファストファッションブランドにGUにはなって欲しいと願わずにはいられないのです。先のジェントルウーマンのジャケット3,990円とチェスターコート3,990円があまりに良くて衝動買いしてしまったのは紛れもなくハイブランドを経験した私だったのですから。


■樋口玲子(ひぐちれいこ)プロフィール
1973年 東京生まれ
R.H.mirror 代表

『樋口玲子のファッションを味方につける!』https://ameblo.jp/rhmirror/

婦人服メーカー、フランスのインポートブランドを経て、1999年にジョルジオアルマーニジャパン株式会社入社。退職までの12年間で販売からPR、VMD、レディースの買付業務、店舗マネージャーを務める。退職後、男児を出産。
2015年トラストコーチングスクール認定講師の資格取得。2016年にこれまでの経験を活かしてパーソナルスタイリストとしてR.H.mirrorを立ち上げる。『ファッションを味方につける!』をモットーに、なりたい自分になるためのファッション講座、ファッションクルーズのサービスを提供中。それぞれのライフスタイルに合わせて上質なものとプチプラを賢く取り入れながら、個々の魅力を引き出すスタイリングを提案する。
(TechinsightJapan編集部 パーソナルスタイリスト樋口玲子)