2017年08月11日 10:33 弁護士ドットコム
共に収入がある共働き夫婦の家計管理は悩ましい。お互いの出費をなんとなく調整すれば家計は回るものの、相手がどれくらい蓄えているかは気になるもの。
【関連記事:「タダで食べ放題」相席居酒屋で、大食い女性に「退店して」――店の対応は許される?】
自分の収入や出費は知られたくないが、相手のものは把握したい。そんな腹の探り合いは、ささいなきっかけで終止符が打たれ、結果として家計は一元化されてしまう。
本記事では自分の収入をパートナーに管理されるようになってしまった男性の悲劇を紹介しつつ、税金の面から、夫の所得を把握する術はないのか、三宅伸税理士に聞いた。
不動産コンサルタントとして独立していたSさんは昨年、妻にすべての家計を握られた。
共働きの妻とはそれまでお互いの財布は共有せず、子供が生まれてからも、Sさんが月々まとまった生活費を渡すことで折り合ってきた。
しかし、Sさんはある散財をきっかけに妻を激怒させてしまった。500万円強の外車を衝動買いしてしまったのだ。
事前にひと言の相談もなく大きな買い物をしたことに妻は激怒。子どもを連れて実家に帰りってしまった。
「車くらいで」「俺の金だし」と言い訳するSさんに、妻は「もう離婚する」と主張した。妻はそれまでSさんの散財を気にしてはいたものの、個人事業主としての営業や付き合いもあるだろうと我慢していた。それが「俺の金」のひと言で我慢の限界に達したのだ。
実はSさん、これまでオーダースーツや趣味のグッズなどを好き放題購入し、家の収納をパンクさせるほど散財をしていた。なまじ1000万円を超える収入があり、妻も稼ぎがあるだけに、「これくらいは大丈夫だろう」と思っていたが、蓋を開けてみると貯金は思ったより残っていない。
妻は外車を勝手に購入する夫の姿をみて「私の蓄えに頼って今後を生きていく気か」と激昂したそうだ。
「離婚はやめてくれ」とすがったSさん。結局、仕事用口座の通帳を妻と共有することを条件に妻の許しを得た。自分の好きにできる額はお小遣いの範囲となり、最近の週末は最後の散財である外車の手入れをして過ごしているという。
これでSさん宅の家計問題は落着したかに思えたが、妻はまだ油断していない。
「夫は自営業ですからね。違う振込口座や手渡しの謝礼がまだ残っていると思います。夫もそのあてがあるから、今回家計を統一したのだと思いますよ」
いまだ夫の財布の中身は探られているようだ。
夫の散在に気付きながらも話し合いの機会をもてず、不満を貯めた結果、家庭崩壊の危機に至るほど激怒してしまったSさんの妻。
事前に夫の収入を把握し、やわらかく注意をすることはできなかったのだろうか。三宅伸弁護士に聞いた。
「夫婦運命共同体といえども、税務上お金は別。夫の財産は夫のものなので、Sさんのような夫(妻)が自分の確定申告書や源泉徴収票を見せてくれる可能性は低いでしょう」と三宅税理士。
相手の収入や所得はその預金通帳、確定申告書、源泉徴収票や所得証明書等などで把握できるものの、見せてはくれない場合は、自動車や住宅ローンの審査、子どもの保育園入園、公営住宅入居審査等のライフイベントに乗じてお互いの所得証明を提出することで、額を確認する方法もある。
また、所得証明書を確認する手もある(ただし、自治体によっては、委任状を求められるケースがある)。
ただし、手渡しの現金等で、どこにも計上されていないものは所得証明書でも把握することはできない。
「脱税の発覚が身内の密告だった、ということも少なからずあるようです。長い結婚生活を円満に過ごすためにも、夫婦の財布をどうするかは重要な事項。それぞれの考え方や生き方にあったやり方をよく話し合い、『お互いの納得感』を大事にしながら、家計管理・資産運用をすることは必要でしょう。
Sさんのような悲劇を生まないためにも、どちらかが不満を溜めている場合は、話し合う機会を作ってみてはいかがでしょうか」
以下は三宅税理士が紹介してくれた、収入関連の証明書の詳細だ。
共働き家庭の皆さんはぜひ参考にしていただき、少しでも家計に関するストレスをやわらげていただきたい。
【確定申告書・源泉徴収票どちらにあてはまるか】
個人事業主:確定申告書
法人の社長、一般の会社員:給与所得者のため源泉徴収票
給与所得者で確定申告が必要な人:
(1)給与の年間収入金額が2,000万円を超える場合
(2)その給与所得や退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円を超える場合
(3)6団体以上にふるさと納税を行う場合等
【所得証明の取得方法】
・市町村役場で申請
【取材協力税理士】
三宅 伸(みやけ・しん)税理士
大阪府立大学経済学部卒業後大手リース会社勤務仕事、育児、勉強を両立しながら大阪の税理士法人に勤務平成26年11月堂島で独立開業 平成29年4月業務拡大にともない江戸堀に事務所移転誠実であること、素直であること、常にお客様の立場に立って考えお客様と共に成長していくことをモットーにしている。クラウドを活用し法人会計税務、起業支援、相続等を軸に幅広く活動している。
事務所名 : 三宅伸税理士事務所
事務所URL: http://miyake-tax.jp
(弁護士ドットコムニュース)