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でんぱ組.inc、最上もが“脱退”の衝撃 グループは危機をどう乗り越える?

2017年08月10日 20:42  リアルサウンド

リアルサウンド

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 8月6日、でんぱ組.incから最上もがが脱退した。


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 最上自身のブログ・Twitterと、グループのHPで同時にアナウンスされた今回の発表。彼女は脱退の理由について「どうしても心と身体のバランスが取れなくなり、このままでんぱ組.incとして活動していくことがとても難しくなった」とコメントしている。


 最上は2011年に藤咲彩音とともにグループへ途中加入し、“宇宙を駆ける金色の異端児”のキャッチフレーズとともにグラビアなどでも活躍。でんぱ組.incのブレイクにも一役買った存在だ。今回の脱退について、雑誌『IDOL AND READ』で彼女のロングインタビューを担当するなど、でんぱ組.incの活動を追い続けている音楽ジャーナリストの柴那典氏は、「よくあるアイドルグループのメンバー卒業とは大きく意味が違う」と語る。


「僕がでんぱ組.incを取材し始めたのは、最上さんと藤咲さんが加入して以降のことで、グループもそのタイミングから大きく状況が転がり始めたという印象です。でんぱ組.incについては、6人の暗い過去やコンプレックスと、それを乗り越えたからこその現在というのが強く物語として刻印されていましたし、それが原動力にもなっていた。応援しているファンにとっても、メンバーにとっても替えのきかない6人だったので、今回の脱退は、驚きも残念な気持ちもありますが、本人にとっても重い決断だったのだと察します」


 また、ロングインタビューを担当した際に受けた印象について、柴氏はこう続ける。


「最上さんを個別でロングインタビューした際、アイドルとしての意識の高さを強く感じさせられました。常に現状に満足せず、『でんぱ組.incがもっと大きくなって上に行くにはどうすればいいか』と悩んでいました。取材したのは2016年の2月で、グループもある程度ブレイクしていたタイミングなのですが、『(でんぱ組.incは)売れてると思いますか?』と逆質問されたのも印象に残っています。でんぱ組.incは基本的にセルフプロデュースの上手い6人が集まっているのですが、そのなかでより強く思い悩んでいたメンバーだと感じました」


 その際に受けた彼女の不安定な一面についても、柴氏は言葉を選んで話してくれた。


「取材でも『病んじゃって夜中悲しくなって泣いたり、孤独だと思って悲しくなるけどでんぱ組.incのためならと思っている』や『Twitterのリプライやブログのコメントは基本的に全部読んでいるので、誹謗中傷とかがあったらみんなが想像している以上にダメージを受けるんですよ』と話してくれていました。グループがブレイクしたからこそ、本人へのストレスやプレッシャー、ファンからの言葉が予想以上に負担になり、心身のバランスが崩れたからこそ今回の脱退へと繋がったのかもしれません」


 また、柴氏は一度解散危機を乗り越えてここまで来たという、グループの歴史をこう解説する。


「でんぱ組.incは一度解散の危機を迎えたことがあり、その時にヒャダインさんがメンバーに話を訊き、ドキュメント的に作った『W.W.D II』という曲があります。全員がグループを愛していて、頑張ろうという思いが強いのに、自分がそのハードルに達していないんじゃないかという悩みや、他のメンバーが自分と足並みを揃えてくれないという葛藤を曝け出したことで、今一度絆を深めて以降の快進撃に繋げていきました。また、これはでんぱ組.incに限らず言えることですが、人気アーティストにはブレイクしてから数年間の勢いある期間、いわゆる“旬”のようなものが必ずあります。一方で新たな挑戦を続けて自分たちを更新していくPerfumeのように、キャリアを長く続けていくことができる時代になっています。そんななかで、2014年に解散してもおかしくなかったバラバラの6人が、ここまできたことだけでも凄いのだと思います」


 最後に柴氏はでんぱ組.incを「バンドに近い価値観を持ったグループである」とし、今後への期待を述べた。


「でんぱ組.incというのはバンドのようなグループと捉えています。とくにNUMBER GIRLに近いものを感じるんです。メンバー個々のセルフプロデュース能力が高くて、個性も強いしエッジも効いている。しかし、NUMBER GIRLは中尾憲太郎さんが脱退したことで解散を選びましたが、でんぱ組.incは最上さんの脱退後も継続することを選びました。でんぱ組.incはそれぞれが自分の得意領域とセルフプロデュース能力を持っている集団なので、解散を選んで新たな表現にシフトしていってもおかしくないし、僕自身もその決断をしても受け入れられるという気持ちがありました。ただ、彼女たちは続けることを選択した。このことにはすごく感慨深いです。残った5人は岐路に立った状態からどんなストーリーを紡いでいくのか興味がありますし、『W.W.D II』などを含め、6人ありきで成立していた曲がどうなるかも気になりますね」


 グループは継続することを選び、メンバーそれぞれも熱い思いを発信している現在のでんぱ組.inc。次の一手に注目が集まるなか、5人はどんな表現を選び取っていくのだろうか。(中村拓海)