今年で最後となる鈴鹿の名物レース、鈴鹿1000km。ドライバーとして、そして現在は監督して今年の1000kmに臨む国内モータースポーツ界のレジェンドたちに、当時の思い出と今年の抱負を聞く。
第2回目は1990年の鈴鹿1000kmを制し、現在はスーパーGT500クラスに参戦しているTEAM IMPULを指揮する星野一義監督だ。
■星野一義(TEAM IMPUL 監督)
・1990年 鈴鹿1000km優勝ドライバー
「100m走とマラソンに似ていて、鈴鹿1000kmでは、スピードが速いに越したことはないんだけど、1000kmをしっかり走れるようにブレーキングやステアリングさばきも、マイルドに負担をかけないようにしないといけないレースですよね。いろいろなことに気を遣わなければならない」
「でも、技術屋さんたちが(クルマが)壊れないように頑張ってくれていた。そういう表には出ない人間の財産というのが鈴鹿1000kmでは築かれたと思っています」
「僕たちは勝って表彰台に上って喜べばいいけど、それだけではない技術の向上が、ニッサンはもちろんだし、トヨタさんもホンダさんも築かれたんじゃないでしょうか」
「日本は石油が出るわけでもないし、いいクルマを作って、輸出してこそ、いい暮らしができる。その意味では、この鈴鹿サーキットが(1000kmを)できたのは、すごい経済効果を生み出していますよね」
「僕たちは危ないことをして、ガソリンを無駄遣いしているんじゃない。技術の進歩がモータースポーツで、鈴鹿1000kmで築かれたんです。すごいレースだと思う」
「そして僕は世界中のサーキットを回ってきたけど、ホテルがあって、ボウリング場があって、レストランがあって、遊園地があって、温泉まであるようなサーキットは世界に他にない。鈴鹿は世界一。世界一の場所で優勝したいのは当たり前ですよ」
「コースもまた世界一。低速、中速、高速……。複合コーナーもある。こんなコースが50年以上前に、よく設計できたと思いますよね」
「今年は前半戦で調子がいいチームがいて、ウエイトを積んだクルマもいるけれど、鈴鹿1000kmはそのハンデが大きく出るレースだと思う。その意味では、今年TEAM IMPULとしてはすごく1000kmを意識している」
「他のスーパーGTのレースも大事だけど、鈴鹿1000kmは『重み』があるんですよね。鈴鹿という、他のサーキットでは得られない重みがある。薄暗いなかで花火が上がってね。できれば今年優勝するなら鈴鹿でしたいですよね」