今週末、オーストリアのレッドブル・リンクでMotoGP第11戦オーストリアGPが開催される。
オーストリアGPは2017年に復活。舞台となるレッドブル・リンクは、1969年にオーストリアの第2の都市グラーツから北西に約100キロメートルに位置するシュピールベルクの緑美しい丘に建設されたエステルライヒリンクを起源とする。
オーストリアGPは1971年から1994年までザルツブルクリンクで開催されたが、エステルライヒリンクがコースの大幅な改修(距離の短縮、レイアウト変更)を受けてA1リンクに生まれ変わった後、1996年と1997年の2度、A1リンクが世界グランプリの舞台となり、当時の500cc、250cc、125ccと2ストロークマシンによる3クラスで開催された。しかし、その後、オーストリアでの世界グランプリ開催は途絶えてしまう。
1990年代後半から、オーストリアを拠点とするエナジードリンクメーカーのレッドブルは急速にモータースポーツへのスポンサー活動を強化。2003年にはオーストリアのバイクメーカー、KTMがロードレースに進出するなど、オーストリア企業のレース熱は高まっていたが、オーストリアGPの復活には時間がかかった。
レッドブルは2004年にA1リンクを買収し、再開発を手掛けようとしたものの、騒音問題などより、地元の環境保護団体からの反発を受けて計画が頓挫。この後、しばらくA1リンクは放置され、廃墟と化してしまったが、レッドブルは2010年にA1リンクを再建することを決定すると同時に名称をレッドブル・リンクに改めることを発表、2011年にはリニューアルオープンにこぎつけた。そして、F1を始めとする四輪レース、二輪ではドイツ選手権のオーストリアラウンドとしての開催などで実績を積み、2016年にオーストリアGPが復活した。
レッドブル・リンクは時計回りの全長4.318km、右コーナー7、左コーナー3という構成の中高速サーキット。丘陵地帯に作られたコースのため、1コーナーは上り坂の右コーナーで、その後、高速で駆け抜けるゆるやかな上りが続き、上り切った3コーナーがコースの最高地点となる。右コーナーの3コーナーはエステルライヒリンク時代のバックストレートの中間地点に当たり、タイトな右3コーナーを曲がると、下りセクションとなり、右左と中速コーナーが連続、途中短いストレートを挟んで、最終コーナーへとつながる。
MotoGPシリーズとなって初開催となった昨年のレースでは、MotoGPクラスはドゥカティ勢が好調で、アンドレア・イアンノーネ(ドゥカティ)がポールポジションを獲得。決勝レースもイアンノーネが優勝、アンドレア・ドビジオーゾ(ドゥカティ)が2位に続き、ドゥカティがワンツーフィニッシュを達成。ホルヘ・ロレンソ(ヤマハ)が3位に入賞した。
Moto2クラスではヨハン・ザルコ(カレックス)がポールtoウイン。Moto3クラスではホアン・ミル(KTM)がポール・トウ・ウインでグランプリ初優勝を飾った。
路面コンディションの変化により、フラッグ・トウ・フラッグレースとなったチェコGPでマルク・マルケス(ホンダ)が今シーズン3勝目を記録、マーベリック・ビニャーレス(ヤマハ)は3位入賞でランキング2位をキープしたが、マルケスとのポイント差は14ポイントに広がった。
チェコGPでは路面がまだ乾ききらない内にスリックタイヤのマシンへの乗り換えを決断し、そのような路面状況でもマシンをコントロールしたマルケスのたぐいまれなる才能を見せる結果となった。
アンドレア・ドビジオーゾ(ドゥカティ)はチェコGPでは6位に終わったが、ランキング3位をキープ。バレンティーノ・ロッシ(ヤマハ)は4位でランキングは4位と変わらないが、ドビジオーゾとのポイント差は1ポイントに縮まった。ロッシはチェコGP翌日のオフィシャルテストでトップタイムを記録、ヤマハファクトリーは新型カウルなどをテストに投入、ドゥカティも新型カウルを実戦から投入している。
オーストリアGPでは昨年、ドゥカティが圧倒的な強さを発揮。2年目の今年はホンダとヤマハがどう戦うかに注目が集まる。今年もミシュランタイヤのややピンポイントなキャラクターがシーズン全体を混戦模様としているだけに予測することは難しいが、今レースも接戦となることは間違いないだろう。