シリーズ折り返し点の一戦にして、今季最初のタイヤ2スペック制レースであるスーパーフォーミュラ第4戦ツインリンクもてぎ。
後半戦仕様へのエンジン切りかえも予定されるなど“リスタート要素”の多い戦いとなるわけだが、そこで特注としたい存在がホンダ勢ではピエール・ガスリー、そしてトヨタ勢では小林可夢偉の上昇気流に乗りつつあるふたりだ。
開幕前の鈴鹿~富士での公式合同テストで、タイムや順位の面だけでなく内容的にも好調さを感じさせていたのが今季新人のピエール・ガスリー(TEAM MUGEN)。さすがは昨季GP2(現FIA-F2)チャンピオンにしてレッドブル陣営の次期F1ドライバー候補という即応力を発揮していたが、シーズン開幕後は一旦、その勢いがトーンダウンした。
ホンダ勢が全般にやや苦戦傾向であるのに加えて、実戦特有の壁に苦しんでいるようにも思われたガスリー。だが徐々に復調し、第2戦岡山のレース2、第3戦富士と2レース連続してホンダ勢トップでのゴールを果たしている。
特に富士での5位は4輪タイヤ交換決め打ちのピット戦略をしっかり機能させ、伝統的に富士を得意とするトヨタ勢の牙城に切り込んで得た自己最高位。順位以上の内容も伴っていたと評せよう。
そして次に挑むのは第4戦ツインリンクもてぎ。もちろんガスリーにとっては初めてレースを戦うコースであり、公式テストもなかった舞台ということになる。富士戦終了後、彼はツインリンクもてぎ戦に向けてこう語っていた。
「ツインリンクもてぎは自分にとっては新しいコース。いいトラックだと思うよ。しっかり準備をして臨みたい。今回(富士)もホットコンディションだったけど、さらに暑くなるんだろうね。(開幕前の)コールドコンディションとはマシンのフィーリングも違ってきているから、その点への対応が大切な要素になる。そして、異なるタイヤも使うというユニークな要素が入ってくる。これまでとは違うウイークエンドになると思うよ」
ガスリーは自分とチームの現状を、ポジション的には開幕前のテスト時にほぼ戻ったとはいえ、内容面では戻りきっていないと自己分析している。まだまだマシンのインプルーブが必要であると認識、それをツインリンクもてぎでさらに進めるつもりだ。
「もてぎでもマシンをどんどん速くしていくことが重要になる。チームとホンダをプッシュしながら、一緒にインプルーブしていきたい。今、僕たちはステップ・バイ・ステップで(開幕前の状態に)カムバックしつつある。5位だった今回より良い戦いができることを期待したいし、表彰台を狙えるようなレースができれば、と思う」
夏のツインリンクもてぎ戦、ガスリーはスーパーフォーミュラ初表彰台を目指す。
さて、次期F1候補生ということもあってガスリーの人気が各サーキットで沸騰中の今季だが、スーパーフォーミュラ参戦3年目の今も大物新人と互角以上の人気を誇るドライバーがいる。
F1表彰台経験者、小林可夢偉(KCMG)だ。
一昨年のスーパーフォーミュラ初年度は予選、決勝で幾度となくトップ3に食い込み、ポールや優勝こそなかったが、実は今季のガスリーや昨季のストフェル・バンドーン(現F1マクラーレン・ホンダ)同様に大半のコースでの経験値が高くない状況下でありつつも、可夢偉は見事なパフォーマンスを見せていた。
昨季は予想外の不振だったが、KCMGに移籍して心機一転の今季は1カー体制であることをむしろ強みとするかのように高い求心力でチームを牽引し、第2戦岡山ではレース1で4位、レース2で5位と連続入賞。早くも結果を出してきている。
第3戦富士ではピットストップ時のロスタイムで入賞チャンスを逸したが、岡山に続き存在感のあるレースを見せていた。
そして迎えるツインリンクもてぎ戦。“スーパーフォーミュラ初もてぎ”だった2015年にはいきなり予選3位に入り、レースでも上位争いを展開したが、この時もピット作業ロスがあって良績を残すことはできなかった。昨季はまさかの不振が続いたこともあり、意外にも可夢偉はまだツインリンクもてぎでのポイントゲットがない。
「あまりレースをした印象がないんですよ。一昨年は予選3位? そうか、そうでしたね。とにかくクルマが良くないことには上にはいけない。ある意味でクルマ次第だと思います。ブレーキが重要なコースですけど、そこもクルマが良くないと攻めていけない」
移籍してからマシンのスピードは確実にアップさせてきている印象の可夢偉。だが「まだ、いろいろと見つけていかないといけない部分もありますし、それを見つけていきたいと思っています。とにかく早く優勝したいですから」。
ツインリンクもてぎでもマシンのベースを速くしつつ、コースやコンディションにも対応していく戦いになる。
「温度への対策は当然考えないといけませんね。どういう(ソフト)タイヤが供給されるのか、そこは楽しみにもしているところです。もてぎのキーとなるコーナーはあの、いやらしい感じで曲がっていく1~2コーナーでしょう」
彼の思考はスタート直後の激しいポジション取りを早くも見据えているようにも感じられた。「とにかく早く優勝したいですから」という言葉も印象的な可夢偉は、ガスリー同様、チームとともにツインリンクもてぎでさらなるインプルーブを果たし、ジャンプアップすることを狙っている。
より一層の上昇を見せてきそうな気配充分のガスリーと可夢偉。真夏のスーパーフォーミュラ第4戦ツインリンクもてぎ決戦は、彼らの一挙手一投足に注目である。