マツダは8月8日にガソリンエンジンにおける圧縮着火を世界で初めて実用化した次世代エンジン『SKYACTIV-X』を2019年から導入すると発表。同時に、2030年を見据えた技術開発の長期ビジョン「サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言2030」の構想を明らかにした。
2007年に発表した技術開発の長期ビジョンに基づき、今回新たに策定されたこの技術開発プランは、2050年までに2010年比90%、2030年までに50%削減を視野に入れたCO2削減の取り組みや、安心・安全なクルマと社会の実現により、すべての人が全ての地域で自由に移動できる社会の実現、そして「走る歓び」にあふれたクルマを通じて、人の能力を引き出し、心と体を活性化させる「人馬一体」感のさらなる追究を目指すという、「地球」「社会」「人」の、3つの柱からなる。
そのビジョン実現に向けた大きな軸となる役割を果たすのが、次世代内燃機関の『SKYACTIV-X』となる。
兼ねてからその存在と開発の進行が噂されていたこのエンジンは、マツダが培ってきたディーゼルの燃焼ノウハウを最大限に活用し、ガソリンと空気の混合気をピストンの圧縮によって自己着火させる燃焼技術で、HCCI(予混合圧縮着火)と呼ばれるもの。
混合気を圧縮するガソリンエンジンには14.7の理論空燃比が存在し、圧縮比を高めれば高めるほどノッキングの問題が避けられず、一般的にこれまではディーゼルよりも圧縮比を高められないのが常識だった。
しかし、マツダは例外的に低い圧縮比でディーゼルを着火させるスカイアクティブ技術で培った燃焼コントロール技術でこの問題を解決。ディーゼルの冷間時に燃焼温度を助ける目的で導入されるEGR(排気再循環)や、高圧燃料噴射制御などを用いて、これまでにないエンジンレスポンスの良さと、燃費改善目的で装備したエア供給機能を活用し、現行の『SKYACTIV-G』に比べて全域で10%以上、最大30%におよぶ大幅なトルク向上を実現したという。
また、直噴ガソリンにくらべても使用する燃料が減ることとなり、マツダの呼ぶ“スーパーリーン燃焼”によって、エンジン単体の燃費率はSKYACTIV-Gと比べて最大で20~30%程度改善。2008年時点の同一排気量エンジンに対し35~45%の改善と、現在の『SKYACTIV-D』に並ぶ燃費率を達成している。
さらに、走りの気持ちよさとフィーリングにもこだわるマツダらしく、低燃費率領域が極めて広いエンジン特性によるギア比選定の自由度の大幅拡大により、走りと燃費を高次元で両立した、とも謳われる。
2019年時点で、その最新の『SKYACTIV-X』がどの車種に搭載されてデビューするかは未定だが、マツダ社内では現在もある程度の規模で“ロータリー”の技術開発が継続されていることもあり、レシプロでの採用・搭載を経て、その先には“プラグレス”のロータリーエンジンが、2015年の東京モーターショーに展示された流麗なスポーツカー『RX-VISION』の市販モデルに搭載されて復活、という展開が待っているのかもしれない。